「デイダラ、知っているの?」

オイラのげんなりとした様子を見て、知り合いだと察したらしい。椿が不思議そうに問いかけてきた。

「知ってるっつーか……元暁のメンバーだな、うん」

元暁のメンバーといえば、オイラの知る限りただ一人しかいない。――そう、大蛇丸だ。何故オイラ達をつけているのか全くわからないが、あれは間違いなく大蛇丸だった。大蛇丸で思い出したが、以前サソリの旦那が奴から入手したい資料があると言っていた。今逃げたところで、大蛇丸の事だからどこまでも追いかけて来るだろう。資料をもらうついでにこちらから出向いてやってもいいか、面倒だがなと、深くため息を吐いた。

「……椿、一旦下りるが、いいか?うん」
「構わない……」
「そう時間は取らせないからよ、うん」

渋々と下降し、あっという間に奴の目の前まで着地した。椿には鳥に乗ったままでいるよう声を掛け、オイラだけが飛び降りた。大蛇丸は不敵な笑みを浮かべていた。相変わらず不気味な野郎だと睨みを効かせれば、奴は更に楽しげな様子を見せた。

「デイダラくん、久しぶりじゃない」
「お前が追いかけて来たんだろうが、うん。そんな事より何の用だ」

すると大蛇丸は、鳥の造形物に乗ったままの椿へ目を向けた。

「今日用があるのはあなたじゃなく、そこの小娘よ」
「……は?」

大蛇丸は確かに椿を見て言った。どういう事だ、大蛇丸は椿を知っているというのか。振り返って椿へ目を向けるも、やはり表情は変わらない。しかし、冷酷な目を大蛇丸へ向けていた。

「あなたは……」
「椿、知ってんのか?うん」
「村にいた頃、一度来た事があった。一緒に来るよう言われたけど、断った。あなたは村人に追い払われた筈だけど……」

大蛇丸は人体実験をするのに各里から人を集めていると聞いた事がある。狙うのは主に子どもや孤児だとか。恐らく一人でいた椿に目をつけて連れて行こうとし、失敗に終わったんだろう。
変わらず不敵な笑みを浮かべたまま、大蛇丸は話し出した。本当に不気味で、見ているだけでも不愉快な気持ちにさせられる。

「フフ、その程度で諦める私じゃないわ。それにしても……村人も、あなたの父親も皆殺されてしまったのねぇ、さぞかし喜んだでしょうね」
「……おい、何が言いてえんだ」
「あら、あなたは知らないのかしら。この小娘の父親の事」
「賞金首だったんだろ、うん」
「そうよ。でもただの賞金首じゃないわ。小娘の父親は「デイダラに余計な事を言うな」

いつになく怒りに満ちたような声で、大蛇丸の言葉を遮り制止した。そんな椿に驚き、再び振り返った。椿は大蛇丸を睨みつけていた。コイツが怒りの感情を出すのは初めてだった。感情はないって言ってたが、ちゃんと怒ることも出来るんじゃないか、とこんな時なのに妙に感心してしまった。

「やっぱり自分の事は話していないのね。まぁいいわ、本題に移らせてもらうけど……私と一緒に来なさい。あなたに損はさせないわ」
「何言ってやがる!コイツはもう暁のメンバーだ、勝手な事はさせねーぞ、うん!」

正式に暁のメンバーになったのか不明ではあるが、オイラは既に仲間だという意識を持っていた。だからこそ大蛇丸の発言に怒りを隠せなかった。当然ながら、それに屈する大蛇丸ではない。奴はやはり不敵な笑みを浮かべたままだった。

「こんな小娘、暁にいたって役に立つのかしら。私のアジトに来た方が有効的だと思うけど」
「ンなわけあるか。どうせ実験体にして最後は殺すんだろ、わかってんだからな。うん」
「そんな事はないわ。優秀なら生かしておくし、小娘次第というところね……」
「とにかく断る。それ以上くだらねー事言ってみろ、オイラの芸術で木っ端微塵にしてやるぜ、うん」
「物騒ねぇ……あなたはどうなの?少しは私と一緒に来る気になったんじゃないかしら」

椿に目を向け、問いかける大蛇丸。椿は怪訝な表情ではっきりと言った。「そんな気はない」と。その言葉にオイラは安堵した。もし行くなんて言い出したら、どうしようかと思ったからだ。

「……そう、なら仕方ないわ。暁のメンバーになったのなら、無理矢理連れ出したら後々面倒でしょうしね」
「そうだっつってんだろ。さっさと散りやがれ、うん」

本来なら今すぐにでも大蛇丸を殺したいところだが、忍でもない椿の目の前では極力そういう事はしたくない。今回ばかりは仕方ないから逃してやる事にした。大蛇丸を睨みつけ、吐き捨てるように言い捨てるも、やはり楽しげな様子は変わらない。

「私はいつでも歓迎してあげるから、あなたの気が向いたら音隠れへ来るといいわ。待っているわよ」

最後まで不気味な笑みを浮かべ、大蛇丸は瞬身で消えたのだった。こんな短時間だというのに、酷く疲れた気がする。どうであれ、大蛇丸が椿や村のことを知って狙っていたという事は、アジトに戻ってからリーダーに報告しないといけないな。……ああ、そういや大蛇丸に資料の事を言うのを忘れていたが、まぁいいか。

「……椿、大蛇丸の言ってたことなんか気にするなよ、うん」
「……わかっている」

椿へ目を向けると、どこか落ち込んだような、考え込んでいるような様子にも見えたが、それはほんの一瞬のことだった。すぐに普段の様子に戻った椿を見て、どこか安心した。

「もう少し移動して、今日の寝床を探すぞ。多分、今日は野宿だと思うがな、うん」

鳥の造形物へ飛び乗り、火の国方面へ飛び立った。野宿にしてもいい場所があればいいが、と考えながら。



To be continued..




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