先程目の前に現れた大蛇丸、とやらに再び出会って、村の事や父の事を思い出させられて頭がズキズキと痛んだ。仲間が殺された事なんか、正直どうだって良かった。大蛇丸の言う通り、心のどこかではもしかしたら喜んだのかもしれない。生前の父を思い出す程に、苦痛な事はないだろう。
空中移動しながら、目の前にいるデイダラへ目を向けた。私の内情を気にかけているだろうに、深く聞いて来ない辺り、彼なりに気を遣ってくれていることがわかる。だから彼の側にいる事は、心地良いと感じるのかもしれない。感情のない私なのに、たった数日でデイダラといる時は、微かな感情が露わになりそうになることがあって内心焦っていた。この心情は何なのだろう、と混乱もあった。彼に抱かれる時だってそう。生まれて初めて気持ちが良いと感じた。喉を突き破って自分でもよくわからない声が飛び出るところだったのを、唇を噛みしめて必死で堪えた記憶がある。性行為なんて、ただの男の欲の捌け口だと思っていた。女が快感を感じる事なんて、一切ないと思っていた。ただの苦痛しかない。そんな考えが、デイダラとの性行為によって覆されようとしている。

昨夜、デイダラに抱きしめられて眠った時は嬉しいような、幸福なような、安心するような、そんなわからない心情に戸惑った。デイダラといると、私ではなくなる気がする。それは良い意味なのか、悪い意味なのかはわからないけど、何かが変えられるような気がして恐怖を覚えた。今まで遊女として働かされてきて、こんな気持ちになった事は一度だってなかった。遊女だって、父さえいなければならなくて良かった筈。もうこの世にいない父をいつまで経っても恨み続けるのは、私らしくない。無情でいなければならないというのに。

本当は彼……デイダラには、私の内情を話してもいいのかもしれない。他人を信用出来ない余り、常に一定の壁を作り続けてきた。デイダラなら、話したところで軽蔑したりするような人でない事は、もうわかっている。けど、簡単に人を信用出来るような生き方を、私はしてこなかった。自分の意思もなければ、選択する余地もない。否、正確には持てなかったの方が正しいか。
しかし、暁という組織にいる以上は話しておくべきなのかもしれない。少なくとも、近くに居るデイダラには。

それにしても大蛇丸とやらは、村の事だけでなく私の内情も知り尽くしているような口振りだった。既に村が壊滅した事も知っていたようだし、一体何者なのか。デイダラの様子からして、厄介そうな人物ではありそうだったが。
先程、大蛇丸から父の話をされそうになった時は、咄嗟に制止してしまった。あんな男の言葉で、知って欲しくなかった。デイダラに伝える時は、自分の口で伝えたいという気持ちがあったからだろう。決して、デイダラに知られたくない等という気持ちはなかった。あの制止の仕方では、デイダラにはそう捉えられてしまってもおかしくないけど。大体、そんな気持ちが芽生えた事さえ、自分でも驚きだ。普通なら自分の内情等、絶対に知られたくない事だというのに。デイダラならいい、なんておかしな話だ。

村にいた頃、音隠れの里へ来るよう勧誘された時は、正直どちらでも良かった。私には選択する余地はなかったから。例え着いて行って、結果的に殺されるとしても構わなかった。あれ以上村で遊女として、あの父の下で生かされるくらいなら、殺された方がずっと良いのではないかと思った。都合良く村人に見つかり、大蛇丸が追い払われてからは、先程まで一切接触はなかったけど。

父も村人も殺された今は、もう少し生きていたいと思う。そう願ったからこそ、村を壊滅させた暁の二人組に、大金を払ってまで頼み込んだのだろう。デイダラの側にいるようになってからは、一層強く感じる。もう少し彼の事を知りたいと思ってしまうから、彼自身のことを時々問いかけてしまうのだろう。

自分でも自分自身の事がわからないまま、未だ空中移動を続けるデイダラの背中を、ぼんやりと眺めているのだった。風になびく彼の綺麗な金髪が、混乱を覚える私の心に、安らぎをもたらしてくれているような気がした。



To be continued..





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