ようやく土の国方面へ到着し、目的地を見つけ早々に下降した。懐かしい場所に一瞬里抜け前の事が脳裏を過ったが、さっさと用を済ませる方が先だと、ある場所まで歩みを進めた。

「この場所は里抜けして、オイラが暁に入る前までいた場所だ。……よし、ここだな。ここの土が質の良い粘土を作れるんだ、うん」

別に聞かれてもいないが一通りの説明をしてしまった。椿は反応こそないものの、聞いている様子だった。土にチャクラを流し込み、早急に粘土を作成する。やっぱり土の国の方が良い粘土を調達出来る。そんなオイラを、椿は無言のまま見つめていた。

「デイダラにとって粘土は必要なものなの?」
「えっ……まぁそうだ。オイラの芸術に必要不可欠なものだな、うん」

今まで必要最低限しか会話をして来なかったせいか、急な問いかけに驚いてしまった。粘土を調達するのが不思議だったのだろうか。あ、それともオイラの芸術に興味を示したとか……?それならば芸術について語らない手はない、とオイラの芸術論を教えてやる事にした。

「芸術とは儚く散りゆく一瞬の美を言う。オイラの芸術は流動的だ。形ある時はただの造形物に過ぎないが、それを爆発させる事でその存在を昇華させ初めて本来の作品になる。一瞬の昇華こそがアートであり、芸術だ!うん!」
「私は芸術には興味ない」

バッサリと切り捨てるように返された。これだけ熱く語ってやったのに、椿の心には一切響かないらしい。他の奴らに言われたらブチ切れる所だが、コイツ相手には何故か苛つかなかった。感情がないってわかっているからだろうか。
頭の中で考えていると、椿は「けど、」と続けた。

「信じられる物があるのは良いこと。追求し続けるのはなかなか出来る事ではないから」
「お、おう……褒めてくれてんのか?それは、うん?」
「そのつもりだけど」

好きに受け取ればいい、と椿はそっぽを向いてしまった。まさか照れている?いやそんな筈はない、か。けどオイラの芸術に興味がないとバッサリ切られてしまったとは言え、そう言われるのは嬉しかった。まるで認めてもらえたようで。そんな風に言ってもらえた事は一度もなかった。少し、ほんの少しだけコイツを見る目が変わったような気がした。

一通りの粘土を作成し調達すれば、再び拡大化した造形物に二人で乗って火の国方面へ飛び立った。火の国へ着いてしまえば、目的はただの情報収集だからそう時間はかからないだろうが、そこへ辿り着くまでに数日要する。今日は野宿か、運が良ければ民宿でもあるかもしれないが。けど流石に忍でもない女が野宿なんて嫌だろうか。その事を椿に伝えれば、どちらでも良いと返事が返ってきた。まぁ、わかり切っていた事だが。

「しかし、これだけ粘土が調達出来ればしばらくは困らないな、うん」
「そう」
「そうだ。これだけ上質な粘土は久方ぶりだぞ、うん」

質の良い粘土を手に入れられた事で、オイラは上機嫌だった。無表情のまま返事を返す椿の事も然程気にならないくらいには気分が上がっていた。今夜も性欲を満たせる事だし、こんなに順調で良いのだろうか。

「そういやお前、腹減ってねえか?うん」
「別に空かない」
「朝から食ってねえのにか?」

忍でもないのにそんな耐久性もあるのか。それとも不慣れな環境にそれどころじゃなかったとか?どちらにせよ晩飯くらいは調達しなければならない。上手く民宿が見つかれば必要ないが。

「あ、あの辺りにもしかしたら民宿があるかもしれないな、うん」

上空から見下ろせば、偶然にも民宿らしきものが目に入り、一先ず下降し歩いてみる事にした。








「にしても、都合よく民宿があって良かったな。うん」

ほんの少し歩いた先に手頃な民宿を発見し、スムーズに入る事が出来た。夕暮れ前でまだ少し早い。オイラは腰掛け、突っ立ったままの椿にも座るよう促した。

「飯までまだ時間もあるし……先に風呂でも入ってくるかな。椿はどうする?うん」
「私も行く」
「ああ、どうせなら一緒に入るか?うん」

そんな冗談を投げかけてやれば、椿は表情を崩さぬまま「デイダラが望むなら構わない」とまさかの了承したもんだから、返ってオイラが焦ってしまった。

「ばっ、冗談だ!お前何でもかんでも受け入れるのやめろよ、うん!」
「デイダラの言う事に逆らうつもりはないと言った筈だけど」
「っ、風呂は別々でいいから、さっさと行くぞ、うん」

ほんのり熱を持つ顔面に触れ、熱を冷まそうと頭を振った。何でオイラが焦らなきゃならないんだ。格好悪いし、情けない……。

そそくさと浴場へ向かえば、椿も後に続くように向かっていた。焦るこの気持ちも全て洗い流してしまおうと、深くため息を吐いた。



To be continued..




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -