この青色、きみにはどう見えてる(デイダラ)


 
デイダラ死後 / 切


真っ青な綺麗な空を見ると、どうしてもデイダラのことを思い出す。彼の瞳の色は綺麗な水色で、いつも青空のようだと思っていた。
綺麗な瞳と同じくらい、綺麗な心を持っていたと思う。一途にアートを追い求めて、貶されたり邪魔されるのを何より嫌う。創作活動中に声掛けたら、よく怒られたっけ。色々な表情を持っているデイダラがどこか幼くて、でもいざと言う時は頼りになって目が離せなかった。

空といえばデイダラは夏、花火が好きだと言っていた。あれこそ一瞬の美だ、アートだ、と。彼が亡くなる最後の夏、一緒に花火を見たことがあった。別に見る約束をして見たんじゃない。偶然任務帰りに歩いていたら花火が上がって、言葉もなくただただ眺めていた。デイダラがアートと謳うのも理解が出来るくらい、感動したのを覚えている。花火も見ていたけど、私はデイダラの横顔の方が長く見ていたかもしれない。儚げな表情を浮かべて、あなたは花火を見ながら何を考えているの?その答えは結局わからないままだった。

「椿、オイラ空になりてえな、うん」

ある日、青空を見ながらそんなことを言い出した事があった。どういうことかと聞き返すと、

「空は綺麗だろ?芸術的だ。オイラも死んだら芸術になりてーんだ。儚く散って空になりてえって思うんだ、うん」
「……それって、最後は自爆するってこと?」
「まぁそうなるか。けど情けなく生き続けるくらいなら、一瞬で散っちまった方が芸術的だと思わないか?うん」
「うーん……自爆する心理が私には理解出来ないけど。だって、デイダラには長生きしてほしいよ」

私の言葉に少しばかり驚いたように目を見開くデイダラ。長生きして、なんて彼の芸術論に反するんだろうけどこれが私の本心だった。一日でも長くデイダラと一緒にいたい。儚く空に散ってしまったら、二度と会えないじゃないか。

「ははっ、椿はガキだなぁ、うん。長く生きることにオイラは興味ねえよ。芸術家として最後に美しく散ることこそアートだ。例えそれが、明日だとしてもな」
「……、だめ。まだ死なないで。芸術になるのは、早すぎるでしょ?」
「わかってる、冗談だ。オイラはまだまだアートを追求しなきゃならねえし、そんなすぐには死なないから安心しろよ。うん」

やっぱりガキだな、椿は。そうくしゃりと頭を撫でられる。すぐには死なない、その言葉だけでも酷く安心させられた。デイダラは強いから、ちょっとやそっとの事で死ぬ事はないだろう。それこそ、自爆でもしない限り。私はデイダラという芸術をずっと眺めていたい。だからいなくならないでほしい。本当はずっとそう願ってたよ。


「すぐには死なないって、言ってたくせに」

あの会話から一週間後のことだった。デイダラが死んだと報告を受けたのは。やはり最後は自爆。最後まで芸術家として、彼は望み通り空へ儚く散ったのだ。生前サソリにも早死にするタイプだと言われていたけど、まさか本当に的中するとは。流石はサソリだと思う。
彼は自ら望んで自爆したのか、自爆せざるを得ない状況だったのか、それさえもわからない。自爆したという事は身体も残っていない訳で、デイダラは本当に空へ散ってしまったのだと青空を眺めて痛感する。念願の芸術になれて、デイダラはどう思っているだろう。この青色の空を見て、やっぱり貴方は芸術だと口にするのだろうか。空へ散ってしまったデイダラに聞く事は、もう二度と出来ないけどね。

「空から、見守っていてね」

私の大好きな芸術家。



fin




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