いつの間にか消えたきみ(デイダラ)




切 / 悲


あいつが暁に入って来たときから、オイラはずっと好きだったんだ。所謂、一目惚れってやつだ。生きている中で自分がそんな経験するなんて思いもしていなかったんだけどな。
時々任務が一緒になったとか、たまたまアジトで会えたとか、そんな小さなことだけですげえ嬉しくて。その度に、顔に出さないようにするだけで必死だった。椿は暁一鈍いヤツだから、オイラの気持ちなんて微塵も知らないだろう。まぁ、絶対に知られるわけにはいかないんだけど。

そんなある日のことだった。椿が捕えられたという情報を耳にしたのは。

「っ、どういうことだよ!椿が捕えられたって!うん!」

頭に血が昇ってリーダーの胸倉を掴む勢いで問い詰める。リーダーは表情一つ変えることなく「そのままの意味だ」と一言だけ言った。

「っ…、もちろんすぐ助けに行くんだろ!?」
「いや、助けに行くまでもないだろう」

リーダーのまさかの返答にオイラは耳を疑った。冗談だろう、と。だがそれは事実のようで反論する者も他には誰一人としていなかった。

「椿は仲間だろ、このまま放っておくっていうのかよ!うん!」
「デイダラ、少しは落ち着け。椿のことは惜しいが、新しい人材ならもう目星がついている。特に助けに行く理由もない」
「なっ…!?」
「暁の目的はただ一つ。目的の足手まといになるヤツは救う必要もない」
「っ…」

言っていることはわかる。暁にいる以上、仲間第一で行動すべきじゃないこともわかっている。全ては目的の為に行動するべきだと。
…けど、椿がいないなんて。そんなこと考えられるか?無理に決まってるだろ。

「デイダラ、椿はそんなに弱いヤツじゃねえ。帰って来ないと決めつけるのは早いんじゃねえか」

サソリの旦那はそう言ってくれたけど、少しの慰めにもなってくれなかった。
ここで強引にでも助けにいけば、旦那やリーダーに止められるんだろう。罰せられるかもしれない。それを振り切ってでも本当は助けに行きたい。行きたい、けど…

「……そんなこと、わかってる。うん」
「ま、案外もう死んでるかもしんねーしな」

飛段の言葉には怒りを隠しきれず、思い切り睨みつけてやった。

「デイダラ、命に背いて椿を助けに行ったら…どうなるかわかっているな」

リーダーに逆らえない自分が情けなかった。グッと唇を噛みしめた。
今すぐ助けにいくにはリスクがあまりに大きすぎる。それ相応の準備が必要だ。

…椿、待っていてくれ。オイラは必ずお前を助けに行くから。もし助け出すことが出来たら、その時はきっとこの気持ちを伝えてみせるから。

だから、頼むから死ぬんじゃねえぞ。死んだら絶対に許さないからな、うん。



fin





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