暫しの休息後、飛段は満足したようで「元気出たぜー!」と声高らかに叫んだ。さっきから十分煩いし、元気ならあったじゃないか、と突っ込みたかったがそれこそ煩そうだから止めておいた。

「ようやく満足したか。さっさと行くぞ、飛段」

「へいへい、わぁーったよ。じゃあ椿ちゃんにデイダラちゃん、またなー!」

「……あぁ、そうだ。椿」

角都に呼ばれ、珍しいなと首を傾げた。角都は袖口から何かを取り出し、私に手渡した。一見塗り薬のように見える。薬だとしたら一体何の薬なのか。疑問をストレートにぶつけると、表情一つ変えずに角都は答えてくれた。

「お前、怪我をしているだろう。これは以前任務の報酬として受け取ったものだが、使うこともないからお前にやる。効くかは保証せんがな」

怪我をしている素振りなんて一切見せなかったのに、流石は角都。私が怪我を負っていたことに気がついていたようだ。怪我に効くという塗り薬を受け取り、優しいところもあるんだよなぁと感心する。

「なっ、椿、怪我なんかしてたのかよ!?ならさっさと俺に言えっつの!」

「いやお前に言っても無意味だろ、うん」

デイダラの鋭い突っ込みに同感する。飛段に話したところで騒がれるだけだし、デイダラの言う通り無意味でしかない。
角都に感謝し、素直に受け取った。そしてゾンビコンビは私達とは別の方向へ進んでいった。私が黙って薬を見つめていると、デイダラも薬の存在が気になったらしい。

「薬、塗った方がいいんじゃねえか?包帯だって巻き直した方がいいだろうしな、うん」

「そうだね。じゃあ早速「オイラがやってやるよ、うん」

言葉を遮るとデイダラは私から薬を容易に取り上げ、手早く包帯を解き塗布してくれた。少し傷に染みるが、耐えられるレベルだ。
それにしても、あのデイダラがこんな風に手当てしてくれていることの方が驚きでしかない。昨日だって素早く手当てをしてくれたし。今まで一緒に任務をした事がなかったからこういう一面に気がつかなかっただけだったのか。それともデイダラの中で何かが変わったのか。以前だったら冷たく相手にもされなかったんじゃないかと思うんだけど。 

「デイダラ、ありがとう」

「いや、気にすんな。…うん」

再度包帯を丁寧に巻いてくれて、デイダラの優しさに感動しっぱなしだった。するとデイダラの視線を感じ、不思議に思い見つめ返した。

「どうしたの?」

「…あのよ、昨日の話の続きなんだけど」

「……」

「椿は、イタチと付き合ってんのか?うん」

「……、は?」

突然のデイダラの問いかけに驚きの余り、地声が出てしまった。だって私、今までも散々デイダラが好きだって告白してきたのに?(全く相手にされてこなかったけど)何故ここでイタチが出てくるわけ?あくまで嫌いになったのかと聞いてくるまでは理解出来るけど、イタチと?付き合ってるか、だって?
頭の中がはてなマークで埋め尽くされるんじゃないかと思うくらいに、次々と謎が溢れ出す。そこで私は気がついたことがあった。イタチから謎に急接近された日、誰かがいた気配があった。その証拠に物音が聞こえたんだから。もしかして、その正体って……

「デイダラ、もしかして私がイタチと一緒にいたあの日、居間にいた?」

「まぁ……偶然だがな、うん」

やっぱりそうか。だからそんなおかしなことを聞いてくるのも納得出来る。全くイタチめ…余計なことをしてくれちゃって。

「あれは……話すと長くなるんだけど、聞いてくれる?」

「もちろんだ、うん」

私は意を決して全てを語ることにした。デイダラを避けるようになったのは、関係を進展させたかったから。私から関われば関わるほどデイダラの気持ちは離れていくと思ったと言うこと、イタチとあの日接近していたのはからかわれていたということ、その後突き放しているということ、私の気持ちはずっと変わることなくデイダラしか好きじゃないということを、残らず全て伝えた。
デイダラは真剣に私の話を聞いていたけど、最後に告白すると何故か顔を赤らめていた。私が告白するなんて初めてじゃないし、今更照れることはない筈なんだけど。うーん、と不思議に思っているとデイダラは口を開いた。

「オイラも、椿に話があんだけどいいか?うん」

「へ、…うん」

「あの日、イタチと椿が一緒にいる姿を見て、付き合ってんだと思ったんだ。それがすげえムカついたんだ、うん」

ムカついた?イタチと私が付き合ってると勘違いして?益々意味がわからず、それでもデイダラの話に耳を傾けた。

「自分でも何で怒ってんのかわかんなかったんだが……そのお陰で自分の気持ちに気づくことが出来た。ずっと気づかねえで情けないけど、お前に傍にいてほしいって思ってるってこと。今までどんなに冷たくしても必ず傍にいたってのに、急に避けられて正直戸惑ったぞ…うん」

「デイダラ…」

「誰にも渡したくねえんだ、椿のこと。……一回しか言わねえから、よく聞けよ、うん」

そこまで話すと、デイダラは私に近づき優しく抱きしめた。デイダラに抱きしめられているのが本当に現実なのか、一瞬疑ったくらいには驚いている。でも優しい温もりが確かにあって、夢ではないと実感が湧いた。

「椿の事が、好きだ」

私の耳元へ唇を寄せると、囁くように甘い言葉を伝えてくれた。

ずっとデイダラに片思いしていた。私のような犯罪者の恋が実る日が来るなんて、夢にも思わなかった。デイダラに嫌われてでもいいから、傍にいられれば幸せだとずっと思っていた。今までは嬉し涙を流すなんて馬鹿馬鹿しいと思っていたのに、私の目にはじわりと涙が滲んでいた。

「っ、私も…好きだよ、デイダラ。ずっと好きだよ…」

涙の浮かぶ顔を見せたくなくて、デイダラにもっとくっつきたくて抱きしめ返した。デイダラの背中は程よく筋肉がついていて、がっしりとした男の身体に益々ときめく。

「…前に、無駄な片思いなんて言って悪かったな。ちっとも無駄なんかじゃなかったぞ、うん」

「当たり前でしょ…?無駄な片思いなんて、存在しないんだよ」

「ふっ、まさか椿に教えてもらう日が来るとはな」

デイダラは私の涙を拭うように親指で頬をなぞると、ゆっくりと口づけをした。口づけに味なんてするわけないと思っていたけど、不思議と甘い味がした。応えるように私は目を閉じて幸せな時間を堪能したのだった。




To be continued



Modoru Main Susumu
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -