どのくらい経っただろうか。結果的にはこちらの勝利となり決着がつき、先程の焚火の場所まで戻ってきた。デイダラは流石と言ったところで無傷だった。一方の私は情けないことに何カ所かに傷を負ってしまった。右大腿部が特に痛み顔をしかめてしまったが、デイダラに気づかれないように傷を布越しに手で圧迫して痛みを紛らわせた。
だがデイダラはそこまで馬鹿じゃない。すぐに私の異変に気がつき駆け寄ってきた。

「椿っ、怪我したのか、うん…」

「大したことないよ。あんな雑魚なのに…情けないね」

「んなこたねえよ。ちょっと見せてみろ、うん?」

優しく私の手に触れ傷から遠ざけるように離された。外套を捲られると傷口からじわりと血が滲み、出血が止まっていなかった。思っていたより傷が深かったようだ。

「まだ止まってねえじゃねーか」

座れ、と促されその通りに腰掛けると、デイダラは手際良く包帯を取り出し止血してくれた。やっぱりデイダラは優しいなぁと、こんな時なのに変に感心して嬉しくなった。
止血し終えると慣れた手つきで包帯を巻いてくれた。太腿って言うのが若干緊張するけど。

「…よし、これで大丈夫だ。ったく、怪我したなら隠す前にちゃんと言えよ、うん」

「ごめんなさい…足手まといになると思って」

「隠されてた方が足手まといだっての。…ま、大したことなくて良かったけどよ、うん」

照れたような表情で、私から目を逸らしながらそう言った。焚火のせいだろうか、ほんのり顔が赤くなっているようにも見えた。

「とりあえず今日は休もうぜ。またいつ敵が襲ってくるかわかったもんじゃねえからな、うん」

ああ、せっかく今までの気持ちを伝えられるチャンスだったのになぁ。でも今日はデイダラの言う通り、またいつ襲われるかわかったもんじゃない。休めるうちに休まないといけない。デイダラとは明日も一緒にいられるし、この気持ちは明日必ず伝えよう。そう決心して私はデイダラの言葉に頷き、二人で横になった。








翌日になると痛みも大分引いており、任務に支障はなさそうで一安心した。それでも気遣って普段より遅めに歩いてくれるデイダラの優しさに感謝していた。
すると数メートル先に見知った二人の姿を発見した。

「オイオイ、椿ちゃんとデイダラちゃんじゃねーかよ!」

「げっ、何でこんなところにゾンビコンビ!?」

まさかの見知った顔の正体は飛段と角都だった。デイダラも心底面倒そうな表情をしている。角都に至ってはいつものことだが、マスクのせいで表情が全く読めない。それ以上に普段通りテンションの高い飛段が非常にうざい。

「お前らマジでツーマンセル組まされたのな!ったく、何で椿と俺じゃねえんだろうなぁ、なぁ角都!」

「煩い。黙れ飛段。お前ら賞金首を見かけてはいないか」

「んなもん見てねーよ、うん」

「そうか。なら話はない。行くぞ飛段」

「はぁー?まだ探し回んのかよぉ。せっかく椿に会えたんだし少しくらい休んで行こうぜ?」

聞くまでなく賞金首狩りの任務中であることが会話だけで理解出来た。角都の様子からしてなかなか見つからないのか、苛立っているように見える。

「戯言を抜かすな。ただでさえ賞金首が見つからないで余計な時間がかかっているっていうのに…」

「だーかーら!休憩したらひょっこり出てくるかもしんねえだろ!?俺は椿も一緒じゃねーなら動かない!それがダメなら休ませろ!」

角都の眉間の皺が深くなっていき、苛立ちが増しているのは誰がみても明らかなのに飛段は全く気にする様子もない。寧ろ楽しんでいるようにも見える。私だってこんなに喚かれたらイライラしかしない。角都はよくコンビ組んでるな、と感心する。
飛段もこうなったら頑なに動かないことはわかっているのだろう。角都は呆れたようにため息を吐き数歩歩いたところで黙って座り込んだ。

「っしゃ、椿!一緒に休もうぜェ!」

さりげなく腰に手を回され、引っ叩いてやろうかと思ったら私より先にデイダラが引っ叩いた。

「おい!いい加減椿から離れろ!ベタベタしすぎなんだよ、うん!」

「はァ!?てめえのモンじゃねーだろうが!」

私の心はデイダラの物なんだけど…飛段も私がデイダラに心底惚れていることなんてとっくに知ってるはずなんだけど、今日はいつになく喚く。正直うざい以外の言葉が見つからない。ここでデイダラにハグしたら飛段は益々喚いて煩いだろう。私は角都に助けを求めるかのように側へ腰掛けた。
そんな私に驚いたのは飛段だけじゃなく、デイダラもだったようだ。

「おい椿!何で角都の旦那のところに行くんだよ、うん!」

「そうだぜ!一番つまんねえだろ角都の側にいてもよォ!」

「あーもうっ、うるさい!少しは静かにしてよ!」

あまりの騒がしさに怒鳴ると一瞬静まり返った。隣で角都が鼻で笑ったのが聞こえた。

「飛段、そんなに騒ぐなら休憩は終わりにしてさっさと行くぞ」

「ちょ、それはねえぜ角都!」

慌てたように私の隣へ腰掛ける飛段。…を、突き飛ばすデイダラ。また喧嘩し始めてこれ以上怒鳴っても無意味だ、と呆れた。
それにしてもデイダラがこんなに私のことで怒っているのを初めてみた。普段だったら「うるせーのがいなくなって清々するぜ」なーんて言うのに。一体どうしちゃったんだろう?
不思議に思うも、私は首を傾げることしか出来なかった。



To be continued



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