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二日後。デイダラとの任務が完了しアジトへ戻ってきた。デイダラと気持ちが通じ合ったなんて、二日経った今でもまだ信じられないけど、道中ずっと手を繋ぐバカップルっぷりに夢じゃないんだと実感させられた。
アジトへ到着しても、デイダラは私の手を離そうとはしない。もちろん私も離すつもりはない。そのまま居間へ入ると、イタチ、小南、リーダー、サソリが揃っていて呆れ顔で注目を浴びた。
「おかえりなさい、椿」
「やれやれ、やっと結ばれたか……焦ったい他ねえぜ」
小南におかえりを告げられたかと思えば、私達の手を見たサソリが呆れたように呟いた。一体どういうことだろう、と首を傾げデイダラと見つめ合った。
「本当だ。まぁ、無事結ばれたならお前らを組ませてやった甲斐があったが」
「それにしてもデイダラが鈍くて呆れたがな。小細工をして正解だったか」
リーダーが私とデイダラを組ませてくれたのは、協力してくれたということ?それにしてもイタチの小細工って……まさか。
「まさかイタチ、あの日キスしようと接近してきたのって……」
「ああ、その場にデイダラが近づいてきたのがわかったからな。鈍いデイダラの為に仕掛けてやったのだが、やはり正解だったようだな」
やっぱりそんな理由が…!私は全く気がつかなかったけど、イタチはデイダラがあの日来た事に気がついていたのか。そこは流石と言うべきだろうけど…。
隣のデイダラの顔を覗き込むと、顔を歪めワナワナと震えていた。ああ、これはまずい。
「てめえイタチ!オイラを試すような真似しやがって、うん!」
「鈍いお前が悪いのだ。逆に感謝してもらいたいところだが?」
「くっそ…!相変わらずムカつく野郎だぜ、うん!」
「ちょっと待って、ここにいるみんなは両思いになるかもって知ってたってこと!?」
私が皆に問いかけると、小南が呆れ半分で微笑んだ。
「両思いになるかも、じゃなくてとっくに両思いだって皆知っていたわよ。鈍いデイダラだけは知らなかったみたいだけどね」
「え、嘘でしょ!?だってあんなにデイダラ冷たかったのに…!」
「第三者から見たらわかるわよ。あなたにからかわれている時のデイダラを見ていたらね」
「え、ええー…?」
「つーかどいつもこいつもオイラを鈍いって言うな、うん!」
「事実なんだから仕方ねえだろ」
鋭いサソリの突っ込みに、益々剥れるデイダラ。つまりは何?みんなグルで私に協力してくれていたということなの…?優しすぎやしないか、うちの犯罪者達は。と盛大に突っ込みたくなった。
「あなたがずっと片思いしているのを皆知っていたから…協力してあげたくなったのよ」
「小南……」
「椿、デイダラは若いから性欲も半端じゃねえだろうが、頑張って相手してやるんだな」
「ちょ、旦那何言ってやがる!うん!?」
さらりと下ネタ発言する辺り、流石は実年齢35歳のおっさんであることが納得出来る。まぁ私はデイダラが性欲強かろうが弱かろうが、問題はない。どんなデイダラでも愛す自信があるからね。
「よし。無事結ばれたのを見届けられた事だ。小南、雨隠れへ用足しに行くぞ」
「わかったわ、ペイン。じゃあ椿、また今度時間のある時にでも話しましょう」
「え、あ…ありがとう、小南、リーダー」
瞬身で消えてしまった二人。もしかしなくても、私とデイダラが帰宅するのを待っていてくれていたのだろうか。何だかんだでこの組織には大切にされてるなぁと改めて痛感した。
「さて、俺も毒薬の調合があるから行くぜ。椿、デイダラとヤった感想待ってるからな」
「旦那ぁぁ!?椿っ、絶対言ったらダメだぞ、うん!」
「あ、当たり前じゃない!」
最後まで下ネタを言ってサソリも去っていった。残りはイタチしかいない。イタチには相談にも乗ってもらったし、デイダラと距離を置くのは辛かったけど結果的にいい方向へ導いてくれたのも、このアドバイスがあったからだ。私は改めてイタチに感謝の言葉を伝えた。
「気にすることはない。それにしても…デイダラに椿は勿体ないとしか思えんが、お前が選んだのだからな、俺は見守るまでだ。ただし、デイダラに何かされたらすぐに言うことだ」
優しく頭を撫でられ、私はイタチの優しさに嬉しく思い笑顔で頷いた。
「ちょ、イタチ!椿に気安く触れてんじゃねえよ、うん!」
「フン、お前だけの椿ではないだろう。椿は俺にとって妹のように可愛い存在だ」
「だからって触れて良いことにはならねえぞ!うん!」
「心の狭い奴はこれだから困る…。とにかく椿、一人で抱え込んだら駄目だからな」
そう告げると、イタチも居間を後にした。本当の兄貴のような優しいイタチに、やはり相談して正解だったと改めて思う。デイダラはプンスカ怒っているけどね。(それがまた愛おしい)
「さーて。邪魔者もいなくなったし、今日はゆっくりしようぜ、うん」
「ふふ、そうだね」
連日の任務疲れを解消する為に、今日一日はデイダラとのんびりすることに決めたのだった。
私の長い片思いは、無事実ることが出来た。絶対に叶うことはないと思っていた、その恋が叶ったのは仲間の協力があったからだ。
私は犯罪者。デイダラも、その仲間も犯罪者だけど、心はある。感情だってある。犯罪者だから恋してはならない決まりだってない。
私は、これからもデイダラを愛し続けるだろう。それと同時に仲間も大切にし続ける。犯罪者であることも今後変わることはないけど
、私は犯罪者である事に一切不満はない。寧ろ、この仲間達に、何よりデイダラと出会わせてくれたことに感謝している。
本当に、ありがとう。これからも、私はデイダラに恋することを続けるよ。
fin