翌朝。外は気持ちの良いくらい晴天だ。今日が楽しみすぎてドキドキしたせいか寝つきは悪かったけど、何とか時間通りに起きて支度することが出来た。
アジトの入り口でデイダラを待っているだけなのに、嬉しすぎてにやける口元を隠し切れないでいた。でもデイダラのことは避けなければならないから、この喜びを隠して冷たく接しなければならないのは辛いところだけど。けど、近くにいられるだけでどれほど幸せなことか。
深呼吸をして気持ちを落ち着かせていると、足音が聴こえてきて音は段々と近づいてきた。この足音は間違いなくデイダラだ。足音まで把握済みかよ、という突っ込みは受け付けよう。

「…よ、もう準備終わってたのか。うん」

久々に交わす会話。デイダラはいつになく優しい態度で声をかけてくれた。すっごく飛び付きたい衝動に駆られたけど必死で堪えた。

「まぁね。早く行くわよ」

横目でデイダラの姿を確認し、私は早めに歩き出した。少し遅れてデイダラも私に続いて歩き出したのがわかった。少しの距離がまた寂しいけど、仕方ない。任務地までデイダラも声を掛けてくることなく、互いに無言で歩き続けたのだった。









与えられた任務は一日で終えるような内容ではなく、数日はかかる見通しだった。近くに民宿も見当たらず今日は野宿する羽目になってしまった。こういう時に限って肌寒い日で、デイダラが焚火を起こしてくれて火の側で二人、無言で座っていた。それでも寒さは残り、無意識に両腕を摩った。

「寒いのか、うん?」

「…少し、だけね」

「…だったらこれ羽織っておけ」

デイダラは自らの外套を脱衣し、私に掛けてくれた。そんなことをしてはデイダラが寒いじゃない、と驚いて見上げるとデイダラは何故か嬉しそうに笑った。

「やっとオイラを見たな、うん」

「え…?」

「最近オイラのこと避けてちっとも見てくれなくなったろ、うん」

「そんなことは…」

ある。私は確実にデイダラを避けていたのだから。気まずさから再び目を逸らすと、デイダラは私の両頬を両手で挟んで無理矢理目を合わせてきた。突然のことに驚き目を見開く私。両頬を挟む行為は私が以前よくデイダラにしては本気で嫌がられていた行為だったのに、今はその逆で私がデイダラにされているなんて。驚くのも無理はないでしょう?

「なぁ椿、オイラもさみーからあっためてくんねえかな、うん」

「え、」

「お前とくっついてたら、あったけえからよ」

そう言ってデイダラは私のことを抱きしめてきたのだった。今までならそれは到底有り得ないことだった。寧ろくっつかれるのを心底嫌がっていたのはデイダラだったのに…!
まさかのデレに蒸発寸前だ。いやこれはデレというのだろうか。兎にも角にも思い切り抱きしめ返したい。
デイダラから触れてきたのだから、もう我慢しなくてもいいんじゃないだろうか。これ以上避ける必要ないんじゃないだろうか。というかドキドキしすぎて心臓が破裂しそう。

「あったけえな、うん」

「う、うん…」

「椿、一つ聞いてもいいか」

「…なに?」

「椿は、オイラのこと嫌いになっちまったか?」

抱きしめていた腕を緩め、真剣な表情で問いかけるデイダラに私は驚いてしまった。どうしてそんな疑問が浮かんでいるのか、不思議に思ったけどハッとした。今まで苦労してデイダラと距離を置いてきた結果が出たのではないかと。私が離れて疑問に思ったデイダラはそう考えるようになってくれたのではないかと。もしそうなら、イタチの言う通り作戦は上手くいったことになる。
作戦が上手く行ったのなら、もういいよね?デイダラをこれ以上避ける必要はないよね?私はずっと我慢していた気持ちが溢れ、思い切りデイダラを抱きしめた。

「椿…?」

「私ね、……っ、デイダラ、この話はまた後でみたいね」

「そうみてーだな、うん」

敵の気配を瞬時に感じ取りデイダラと離れた。なんていうタイミングだ。せっかく今までの気持ちを伝えられると思ったのに…!そんなことも言ってられないけど、すごく悔しい。
私とデイダラは戦闘態勢に入った。ほぼ同時に私たちに降り掛かる無数のクナイと起爆札を合図に戦闘が始まった。




To be continued




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