「っ、もう!イタチ、離れてよ!」

物音がした方向へ振り向いても誰もおらず、我に返って急接近してきていたイタチの肩を押し遠ざけた。それなのにイタチは楽しげに微笑み、私は不思議に思い首を傾げる。

「ふっ、冗談だ。少しからかいすぎたな」

「じ、冗談!?」

なんてタチの悪い…!イタチの冗談は非常にわかりづらい事この上ない。普段からおちゃらけてる飛段とかならまだしも。それに心臓に悪いからやめて頂きたい。むすっと口を尖らせると優しく頭を撫でられた。

「ま、もう少し頑張ってみる事だな。お前ならやれるさ」

そう言い残し、イタチは居間を後にした。一人残された私は先程のイタチには驚いたものの、やはりデイダラのことを考えていた。一ヶ月もデイダラに近づけないなんて辛すぎる。早くあの愛おしい姿を目に焼き付けたい…。でもそれが当分出来ないなんて、やっぱり辛い。辛すぎる。かと言ってあれ以上嫌われるのはもっと辛いんだけどね。
沈む気持ちを紛らわせようと、深い深いため息が出た。








あれから数日が経ち、イタチともデイダラともすれ違う日々を送っていた。そんなある日、リーダーに呼び出され珍しいなと不思議に思いつつ、リーダーの元へ向かった。

「リーダー、入るよ」

軽くノックをしリーダーの部屋へ入る。リーダーは言っちゃ悪いが偉そうに椅子に座っていた。無表情のまま、こちらへ視線を向けた。

「早かったな。今日はお前に話があって呼び出させてもらった」

「…で、用件は」

「せっかちだな、まぁいい。近頃の任務だが以前よりたるんでいる印象を受けているのだが自覚はあるか」

「……」

「あるんだな」

リーダーに指摘され無言で目を逸らした。恥ずかしながらに図星で、目を逸らしたことで「はい」と答えたようなものだ。すぐに勘付かれてしまった。リーダーの指摘通り、近頃は相変わらずデイダラのことを考えていて任務なんてどうだっていいや、と自棄になっていたところがあるのは確か。暁の目的やすべきことは二の次になっていた。それは忍としてあるまじき行為。
下手をすると見捨てられるか、はたまた罰を与えられるか。リーダーは掟には厳しい一面がある。話を聞くのが少しだけ怖いと感じながら、私は俯いてしまった。

「お前が悩んでいることは聞いている。だが任務は気を抜かずにしてもらわないと困る」

「ごめんなさい…。って、何で悩んでること知ってるの?」

「そんなことはどうでも良い。ところで、お前に一つ提案がある」

私としては全くどうでも良くないんだけど、リーダーはあっさりと話を進めた。

「提案?」

「今日からしばらく、デイダラとツーマンセルを組んでもらう。これで真剣に任務遂行が出来るか」

「え!?」

まさかリーダーに私の悩みの原因を悟られている…?じゃないとここでデイダラが出てくるのは絶対におかしい。それに今までそんな提案をされたことは一度だってない。けど今デイダラと組んだら距離を置くことは出来なくなる。なるべく避けつつ、それでも横目でデイダラを拝むことくらいは許される…だろうか。正直こんなチャンスは滅多にあることではない。基本暁のツーマンセルが変わることはないのだから。

「でも…いいの?それに何でデイダラ?」

「お前がデイダラを好きなのは知っている。ツーマンセルを組ませればやる気も出てくると思ったまでだ」

「…わかった。デイダラと組ませて。任務は今まで以上にしっかりやるわ」

私の真剣な表情に、リーダーは満足そうに口角を上げた。

「良いだろう。では明日から実行に移す。デイダラには伝えておくからお前は早めに休め」

「ありがとう!リーダー」

明日からデイダラと一緒にいられる。しばらく離れていたせいもあって余計に嬉しかった。喜びが隠し切れず満面の笑みで返事をしてしまった。リーダーは気持ち呆れていたようにも見えたけど、そんなことを気にしている暇はない。明日に備えて準備しないと、とルンルン気分で自室へ戻った。



To be continued





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