「…はぁ、辛い」

今日はリーダーの命で簡単な調査をしていた。珍しく小南とペアで。何なら小南なしでも全然余裕な簡単なものだったんだけど、暁はツーマンセルが基本だ、とリーダーが頑なに譲らなくて小南に一緒に来てもらったのだった。案の定、小南なしで全く問題ない調査だったけど。

イタチと最後に話したのは一週間前。あの日イタチからアドバイスをもらってから、私はデイダラと一切関わらない日々を送っていた。それが辛いといったらない。何もやる気が起こらない。それでも私がイタチのアドバイスへ耳を傾けたのは、少しでもこの恋が実る可能性があるならと思ったからだ。

「椿、どうしたの。元気がないわね」

「そりゃそうだよ……だって、デイダラ不足なの、小南も知ってるでしょ?」

小南は私がデイダラを好きなことも、イタチからのアドバイスのことも全て伝えてある。だから今回のペアが小南で心底良かったと思える。じゃないと空元気で頑張らなければいけなかったから。

「ふふ、知っているわ。本当に椿はデイダラのことが好きなのね」

「もう、決まってるじゃない!そんなわかりきったこと言わないでよぅ…」

「でも、まさかイタチがあなたにアドバイスするなんて思いもしなかったわ。しかもデイダラと両思いになりたいのなら一度距離を置け、だなんて」

そう。イタチからのアドバイスは両思いになりたいのなら一旦距離を置け、というものだった。私から関わる程、デイダラの気持ちは離れていくと。最初はそんなこと絶対に出来ないと拒否したけど考えてみるとイタチの言う通り、私が関わる程デイダラの気持ちは確かに遠のいている自覚はあった。あの反応はかわいくて堪らないんだけど、本気で嫌がっているのも伝わる。
両思いになりたいという目標があるなら、多少の我慢も必要なんじゃないかって。確実に両思いになれるとは限らないけど、嫌われるよりはずっといいんじゃないかなって。

「確かにね…何でアドバイスなんてしてくれたのかな?」

「不器用すぎる椿のこと、これ以上見ていられなかったんじゃないかしら。私だって同じよ」

「え…不器用?私が?」

「…自覚ないのね、やっぱり」

呆れ半分で笑う小南に首を傾げる。不器用って、まさか私が?そんなバカな。
そんなわけでイタチのアドバイスを素直に試してみようと、デイダラと距離を置くようになって一週間が経っていた。アジトにいたらどうしても顔を合わせるから、必死で避けていた気がする。デイダラに声をかけられそうになったこともあったけど、とにかく逃げていた。そんな私を見てデイダラは何か感じているんだろうか。いや、うざいのが寄って来なくて清々しているかもしれない。それはそれで作戦失敗してる気がするけど…どうなのかなぁ。

「でもいつまで距離を置けばいいんだろ?そろそろ限界なんだけど…」

「何を言ってるの。まだ一週間よ?一ヶ月くらい頑張ってみなさい」

「え、一ヶ月!?」

そんなに距離を置いたら両思いどころかデイダラは私のこと忘れ去ったりはしないだろうか。そんな自信しかないんだけど!というより、そんなに距離を置ける自信がそもそもない。
やだやだ、と子どものように喚いていると呆れ半分の小南が視界に入る。

「椿、しっかりしなさい。デイダラと両思いになる為の試練でしょう?こんなところで挫折するつもり?」

「う…」

「わかったら早くアジトへ戻るわよ」

正直今一番アジトへ戻るのが辛い。戻ったところでデイダラに触れることも見ることも出来ないし、それ以上に避けなければならない辛さ。大好きな人を避けなければならない程辛いことはない。
でも、まだたかが一週間。もう少しくらい頑張ってみるべき…だよね。
渋々小南の後へ続きアジトへと足を運んだ。







アジトへ戻り、リーダーへ報告を済ませて私は居間と呼ばれる部屋にいた。食事をしたり自然と皆が集まる部屋だ。この部屋で普段ならデイダラ観察をしていた。それが楽しみの一つでもあったのに、今はデイダラが来たら早々に自室へ戻らなければならないなんて。
深い深いため息を吐いたとほぼ同時に誰かが居間へ入ってきた。確認する迄もなく理解した、イタチだ。

「あ、イタチ…任務だったの?」

「あぁ。…椿は何だ、少しやつれたようだな」

表情一つ崩さずイタチにそんなことを言われた。やつれた自覚はなかったけど、当然といえば当然でしょう。

「当たり前じゃない、デイダラのことを避けているんだから…元気なんか出ないわよ」

イタチは私の話を聞いているんだか聞いていないんだか、無言のまま私の隣へ腰掛けた。
任務終わりなのに全く汚れもしていない姿に、本当に任務をしてきたのか疑問に思うくらいだ。まぁイタチが怪我を負うことは早々ないことだけれど。

「まだたったの一週間だろう。言っておくが、たかが一週間距離を置いたところでデイダラは気にもしていなかったようだが」

「え、嘘でしょ!?」

「俺は嘘は吐かない。つまり短すぎるんだ、一週間なんて任務ですれ違ったらすぐだろう」

「そ、それはそうだけど…!」

「ま、もう少し辛抱するんだな。椿がどうしても耐えられないというのなら…」

イタチはそこまで話すと、急に私の肩を抱き寄せ真正面から見つめてきた。その距離僅か10センチ程。いや、そんなにないかもしれない。…って、急になんで!?
イタチのことは微塵も興味がなかったけど、奴は誰もが認める美男子だ。そんな美男子の顔面を至近距離で見せつけられてはデイダラにしかときめかない流石の私でもドキドキしてしまう。ああ多分今顔が赤くなってる気がする。顔がとっても熱い。大体綺麗すぎるでしょ、顔!

「俺がデイダラの代わりになってやってもいいが、どうする?」

デイダラの、代わり?それってどういうこと?
というかイタチの顔が近すぎて私の思考回路が停止している。このままだと間違ってキスされてしまいそうな、そのくらい近い。物凄く近い。いや待って、少しずつ近づいてきている…!ちょっと、イタチどういうつもり!?何を考えているの?
頭の中が真っ白になっていく。どうしたらいいのか正解がわからないでいた時だった。

ガシャン――

何かを落とした音が聞こえ、驚いて音のした方向を向いたがそこには既に誰もおらず、誰かが落としたであろう忍具が入ったポーチだけが床に落ちていた。

「誰…?」

一体そこにいたのは誰だったんだろう。その正解はわからないままだった。




To be continued




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