里抜けして数年、とある日急に暁へ勧誘されたことが一つの始まりだった。
もちろん最初はごねた。相当ごねたんだけどリーダーには到底敵わなくて。そしてその隣にとんでもない美女がいて私の目がハートになってしまったというのが勧誘を受け入れた理由の一つ。とんでもなくバカな理由だと言うのは自分が一番よくわかっているから気にしないでほしい。後にその美女は小南という名前だと言うことを知り、唯一の女メンバーという事もあってか一番の親しい仲間となっていく。

次に私が目をハートにしたのはアジトへ案内されて見つけた金色の長髪男、まだ若いのか(後に私と同じ年ということが判明する)発言や行動に幼さが残っているけど、私はそこが彼のいいところでもあると思う。それでも目上の立場の者にはそれなりの敬意を払っているし、ちゃんとした人なんだと思う。反対に目下の者には手厳しい一面もあるけれど。

ズバリ言おう。私は彼、デイダラに一目惚れしたんだってこと。今は暁に入ってまた数年経過したけど、好きな気持ちは薄れることなく深まる一方。
一目惚れしてからは早かった。アジトにいる時は無意識でも目線は常にデイダラ。今何してるんだろう?あ、冷蔵庫から食べ物を取り出した…まさか粘土?あの人粘土も食べるんだっけ?あぁ違った卵焼きだった。とか一つ一つの行動を予測してはよく外してる。そんな行動を見ているだけでもまた愛おしく感じる。
ふふっと微笑むとデイダラから向けられる不審の目。そんなことを気にしていたらデイダラに恋なんて続けられない。

「椿…またオイラのこと見てただろ、うん」

「え?見てないよ?」

「嘘つけ!バレバレなんだよ、てめえの視線なんて!せめてもう少しバレないようにしてくれ、うん!」

この通り、デイダラにはすぐバレてしまう。何なら初めてバレた時にデイダラを見ていた理由を問われて「好きだからに決まってるじゃない」とあっさり告白したんだけど、未だデイダラには本気にされない。何なら「ふざけるな!」と怒られた。ふざけてなんていないし、本気なんだけどなぁ。

「別にいいじゃない、いつものことなんだから」

「あのな、ずっと見られているオイラの気持ちが椿にわかんのか?うん」

「全然?だってそんなに見られたことないもん」

「ムカつく…うん」

話にならないとすっかり剥れたデイダラがまたかわいいとしか思えない私は重症だろうか。小南に共感を得ようとデイダラの話をよくするんだけど、はいはいと流すようにしか聞かれたことがない。まるで興味がないらしい。まぁ興味があったらそれはそれで困るんだけど。
私はその場から立ち上がりデイダラの側まで行くと、ぱちんっとデイダラの両頬を両手で挟んだ。というよりパワーが有り余って叩いたようにもなったが、まぁ気にしない。

「うん!!?」

「デイダラ、そんな剥れても無駄よ。もうっ、どんな顔しててもかわいいんだから!」

「わ、わかったから!離せ!痛えなぁ、うん!」

むにむにとデイダラの頬を弄り回していると、心底嫌そうに眉間に皺を寄せていた。そんな顔をしたって愛おしさが増す一方だから無駄なんだけどね。絶対にやめてあげない。
一種の愛情表現だと言わんばかりに弄り回して、やっと満足した私はデイダラを解放してあげた。心なしか両頬が赤く染まっているデイダラ(照れているわけじゃなく私が弄りまくったせいだろう)が可愛くて堪らない。

「いってえなぁ!どれだけオイラのほっぺを弄りゃ気が済むんだ、うん!」

「そんなの何日あったって満足するわけないじゃない」

私の言葉に冷ややかな視線を向けるデイダラ。あの顔は心の底からドン引きしている顔だ。そんなこと気にもならないけど。

「だって、デイダラのことが大好きなんだから!ずっとずっと触れていたい決まってるでしょ?」

「はっ、無駄な片思いだな。せいぜい敵わない片思いを一生してろ、うん」

あー、いてえな、とぶつくさ独り言を呟き頬を摩りながらデイダラは背を向け行ってしまった。
デイダラがこんな風に冷たいのはいつものことだし、慣れっこだから気にならない。寧ろほっぺ摩るデイダラがかわいすぎて悶えそう。あの人、どうしてあんなに母性本能を擽ることをしてくるの?堪らないんだけど。

一人でにやにや抑えきれない笑みを浮かべていると、いつからいたのやら近くにいたイタチと目が合ってしまった。イタチは私と違ってクールそのもの。正直に言うと、こんな顔を見られてめちゃくちゃ気まずい。何でイタチなんだって心の中で叫んだけど時すでに遅し。
イタチが冷ややかな視線を向けていたが、一瞬だけ微笑んだ。あの、クールなイタチが。我が目を疑ったけど間違いじゃなかった。
すぐに表情を戻したイタチが一歩近づいてきて、私に話しかけた。

「椿、またデイダラに振られたのか」

「…またって言わないでよ。っていうか、振られてない!」

「よくああも懲りないものだな。毎日あんなことをして振られては心が折れそうなものだが…にやけているところを見ると気にもしてないようだな」

「ふ、振られてなんかないもん…!デイダラは構われて喜んでるはず…だよ」

「…デイダラは、本当に好きな相手には優しいと思うが?」

ぐっ、と言葉が詰まった。イタチの的確な意見に何も言えなかったのだ。そんなこと本当はわかっていた。デイダラは尊敬している相手や好きな相手にはあんなに冷めた態度を取らないと。私のことは好きでも何でもなく、寧ろ迷惑がっているんだろうってことも。
それでも私はああいうアピールしか出来ない。まともに好きだと伝えても伝わらない。つい構いすぎてしまう。それが返って逆効果だとしてもやめられない。

「だって、ああでもしないとデイダラと関わる機会が全然なくなっちゃうから…」

嫌われるよりも何よりも、関われなくなることの方がずっと怖かった。嫌われてもいいから、デイダラと関わりを持ち続けたい。デイダラのことが大好きだから。
唇を噛みしめ俯くと、頭の上に温かい感触。イタチの手が私の頭を撫でているのがわかって驚いてしまった。だって、あのクールなイタチが私の頭を撫でているだなんて!
驚いて顔を上げると、表情は変えないまま私を見つめているイタチ。

「椿、デイダラと両思いになりたいのなら…一つアドバイスをしてやろうか」

え、と驚き、ついポカンと口を開けてしまった。イタチは私の頭から手を離すと、薄ら微笑みゆっくりと話し出したのだった。





To be continued




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