Last love(サソリ)
/切甘
「椿、何をそんなに拗ねてる」
「拗ねてなんかない」
「……どう見たって拗ねてんだろうが」
サソリが九尾の人柱力を捕らえる任務を命じられた。元々サソリのノルマだからいずれ命じられると思ってたけど、思っていたより早かった気がする。直前まで封印術をかけていた私たちは、流石に疲労感が取れずにいた。
そんな状態で九尾を狩れっていうんだもん、リーダーもなかなか鬼畜だよね。
なんとなく嫌な予感がして、モヤモヤが取れなくて、胸騒ぎがして。しゃがみこんで顔を埋めて、つい拗ねたような態度になってしまった。
「ちっ、仕方ねえな」
サソリの周囲が煙で覆われたかと思いきや、次の瞬間には赤髪の美少年…つまり、サソリの本体がそこにいた。
「わざわざ出てきてやったんだ。これでも機嫌直さねえっつーなら、傀儡にするぜ」
「サソリ…」
「椿が何拗ねてんのかは知らねえが、九尾なんざすぐに捕らえてくる。余計な心配してんなよ」
サソリは二、三回私の頭を撫で、照れ隠しなのかふいと顔を逸らした。
「サソリ…お願いがあるの」
「なんだ」
「絶対死なないで。必ず戻ってきて」
真剣な顔をしてサソリに気持ちを伝えた。
サソリは驚いたように目を見開いたけど、それは一瞬だった。すぐに口角を上げて
「バカだな、お前は」
と吐き捨てるように言った。
「俺が死ぬわけねえだろ。なんせ、永遠の身体を持ってるんだからよ」
「そう、だね。でも…胸騒ぎがするから」
「……そんなに心配か」
「当たり前じゃない。だって、サソリは私の「必ず生きて戻る。だから心配すんじゃねえ」
ブラウンの瞳に私を映しながら、サソリは優しいトーンでそう言ってくれた。
たったそれだけなのに、私は酷く安心出来た。ようやく笑顔を浮かべると、サソリは安心したように目を細めた。
「わかったよ、信じて待ってるよ」
また後でね、サソリ。
その言葉を最後に、私は印を組み瞬身でその場を去った。
「また後で、か。……悪いな、椿」
悲しい顔で、サソリが私の去った後を見ていたことなんて、私は知らなかったんだ。
fin