バス・ハプニング(デイダラ)*
「ふんふーん♪」
長期任務がようやく終わり、アジトに着いてすぐに向かうのはお風呂場。ようやくゆっくりお風呂に入れる喜びを隠しきれず、つい鼻歌を歌ってしまう。
前に小南からもらった入浴剤、もったいなくて使えなかったんだけど今日は特別疲れているし使ってみよう。そう心に決めて湯船に投入した。
薔薇の香りが浴室に充満し、それだけで疲れが飛ぶような気さえした。
「いい香り…流石小南ね」
さて、さっさと身体を洗って湯に浸かろう。そう思いシャワーに手をかけ、早々に湯を浴びた。
*
シャワーを浴び終え、湯に入ろうと思っている時だった。脱衣所から物音がした。…気のせい、だろうか。きちんと入浴中の札をかけてきたし、誰かが入浴中であることはわかっているはず。
もしかしたら鬼鮫が掃除でもしているのかもしれないし、気にしなくてもいっか。
念願のお風呂に入り、気持ち良さから幸せでいっぱいになる。
「やっぱり任務後のお風呂は最高…!小南様様だわ」
薔薇の香りが一層お風呂を幸せにさせてくれる。幸せに浸っていた時だった。急に浴室のドアが勢いよく開き、私は驚きに目を見開く。
「……え!?」
「あれ、椿じゃねえか。風呂入ってたんだな、うん」
お風呂場に入ってきたのは、まさかのデイダラだった。普段結ってる髪の毛を下ろして、腰にタオル一枚巻いた無防備な姿で。
ヤツは驚く素振りを見せるどころか、平然と入ってきて扉を閉めた。…え、待って、何で閉めた!?焦った私は慌てて身体を隠し反論する。
「ちょ、デイダラ!?何で入ってくるのよ!?」
「何でって…風呂に入るからに決まってんだろ。つーか良い香りだな、疲れも吹っ飛ぶぜ、うん」
平然とした態度は変わらぬまま、デイダラはシャワーを浴び始めた。言っておくけど、私はデイダラとつきあったりしている訳では断じてない。寧ろそこまで仲良しな訳でもない。
目のやり場に困って咄嗟にデイダラから顔をそらす。
どうしてデイダラは平然としているの…!?まさか、私女だと思われてないとか!?そんなバカな!
一人で百面相になっていると、デイダラが鼻で笑ったのがわかってキッと睨みつける。
「椿、おもしれー顔してんなぁ、うん」
「誰のせいでこんな…!」
ふと目にしてしまったデイダラの身体。裸なんて見たことなかったけど(興味もないけど!)思っていた以上に筋肉がついていて、がっしりした姿に思わず見惚れてしまう。
普段は女の子みたいな見た目の癖に、やっぱり男なんだ、と改めさせられる。
「そんなに見られてっと洗いづれーな、うん」
「はっ、そうじゃない!ちょっと出て行ってよ!どう見たって私が先に入ってるでしょ!?」
「仕方ないだろ、オイラだって任務後で汚れてたんだ。さっさと身体流さねえとサソリの旦那にも汚いだの貶されるし…」
あっという間に一通り洗い終わったデイダラが、近づいてくる。待って、まさか湯船に入ろうとしてる!?
「ちょ、待って私上がるから…!」
「あ?何でだよ、少し詰めてくれりゃ入れるからいろよ、うん」
そういう問題じゃない!待ってよ、まさかデイダラって本気で私のこと女だと認識してないわけ!?
でもここで上がったとしても身体を見られることに変わりはなく、困っていると容赦なくデイダラが湯船に入ってきた。
「あー…あったけー気持ちいいな、うん」
このアジトの風呂は普通に狭く、一人で入っても足を伸ばすのがやっとの大きさなのだ。そんな大きさの風呂に二人で入っている…それも男のデイダラと。
密着どころの話じゃない。私はデイダラに背中を向けて小さくなっているけど、デイダラは遠慮なく足を伸ばすもんだからデイダラの足の間に私がいる状態。もうパニックでしかない。とにかく身体を隠すので必死な私。
「ちょ、デイダラ…!どう考えたって狭いでしょ!何で入ってくるわけ!?」
「そんな怒んなよ、仲間だろ。…つーか椿、」
デイダラの視線がやや下に向かう。
「お前、案外胸あんだな、うん」
なんてセクハラ発言をされ、容赦なくその頭をぶっ叩いてやった。
「いってええ!!!何すんだ!うん!」
「それはこっちの台詞でしょ!何変態オヤジ発言してんのよ!」
「仕方ねえだろ、椿の胸なんて見たことなかったんだし…」
誰が見せるか!また叩いてやろうかとデイダラの顔を睨んで驚いた。
デイダラは私の身体から目を離さない。うなじから水が滴った瞬間、腕を引っ張られ気がつけば抱きしめられていた。
「きゃっ!ちょ、何!?」
「椿、そんな色っぽい顔も出来んのな…」
え、色っぽい?私ただ怒ってたんですけど…?そんなことより抱きしめられているこの状況。どうしたらいいの…!?
頭の中でパニックになっていると、デイダラの手がやんわり私の胸を包み込んで触れた。
「やっ…ちょ、どこ触って…!!」
「思ったより柔らけえのな、うん」
デイダラの手の舌で乳輪をぬるりと舐め回され、快楽で身体が震える。思わず声が溢れそうになったが、何とか堪えた。
そのまま反対の手でお尻に触れては同じように舌で舐め回される。流石に限界で甘い声が浴室に響いた。
「かわいい声出るじゃねえか…うん」
心なしかデイダラの呼吸が荒くなっていくのがわかる。それとほぼ同時に太腿に当たる固いモノ。それが何かなんて見なくてもわかってしまうわけで。
「ちょっと…!」
「椿も感じてンだろ…?一緒に気持ちいいことしようぜ、うん」
私に覆い被さるように手をつくと、そのまま荒々しく口づけをされる。あっという間に舌を絡ませてきて声が抑えられず、籠った声が浴室へ響き渡る。両脚を開かされ、撫でるように蕾に触れられびくりと身体が反応する。
「あっ…ちょ、そこはダメ…っ!」
「ダメ?旨そうにオイラの指咥えちまったけどなぁ、うん?」
拒むことなくデイダラの指を受け入れてしまい、動かされる度に声が溢れる。
もう、止まらない…!堪らずデイダラにしがみつくと、満足そうにデイダラが笑ったのがわかった。
「そうそう、素直になればいいんだよ」
指を増やされ動きが激しさを増していく。脚がガクガクと震え、電流のように快楽が身体中に流れていく。頭の中が真っ白になり私は限界に達した。
荒い呼吸を整える間もなく、蕾に当たる固く熱い熱。抵抗することも出来ずあっという間に私の中へ入り込んできた。
「あぁ…ッ!」
「くっ…熱いな、椿の中…っ」
私を優しく抱きしめ、耳をペロリと舐められては再び身体が強い快感に襲われる。すぐに激しく動き出すデイダラについていくのがやっとで、必死にしがみつき快楽に耐える。お湯がバシャバシャ音を立てるが、そんなことを気にする余裕もない。
「や、ァ…!デイダラァ…!」
「気持ちよすぎンだろ、椿の中…っ!もう止まらねえからな、うん!」
動きは激しさを増すばかり。胸も鷲掴みにされ、浴室には私の甘い声と荒い息遣いが響き渡った。
中に熱いものが流れ込んできたと同時に、私は意識を手放した。
*
「ん…ここは…?」
目が覚めると見慣れぬベッドの上。一体どこだろうと周囲を見回すと、隣にはデイダラがいた。
「やっと目覚めたか。大丈夫かよ、うん?」
床に粘土細工が散らばっており、ここがデイダラの部屋であることがわかった。私はどのくらい眠っていたんだろう?…いや、そうじゃないでしょ!
「デイダラ!一体どういうつもりなの!?」
「何がだよ、うん」
「何がって…!あんなことしておいて、よくもそんな態度でいられるわね!」
そう言った途端、先程の出来事を思い出してしまい私は一気に赤面した。そんな私の顔をみてクックと笑うデイダラ。
「面白いなぁ、椿は。オイラが何であんなことしたかって?決まってんだろ」
グイッと引き寄せられ、私の耳元で
「椿のことが好きだからだよ、うん」
「っ、え…!?」
そんなバカな。だって風呂場に入ってきた時だって、私のことなんてまるで意識した素振りもなかったのに?あんなに平然としていたのに?
「椿が風呂に入ってるってわかってて入ったに決まってんだろ。…まぁ、欲に勝てなくて抱いちまったけどな、うん」
「っ、嘘よ、そんなの…!」
「嘘なわけあるか。オイラは好きでもねえ女にキスなんか出来ねえぞ、うん」
後頭部に手を回し、優しい口づけを落とされた。
そんな行動にまたドキドキときめいてしまう。今まで見たことがなかったデイダラの男らしい一面に、確実に意識している私。自分に嘘はつけない…そう諦め、自分からもデイダラに口づけをした。
fin