その代償1
「ねぇ、なまえ。浮気したら俺怒るよ?」
いつか、おあいてがそんな事を言っていた。
「何言ってるの?そんな事あるわけないよ」
「ほんとに?俺、怒ると怖いからね!」
かわいい年下の彼氏が大好きで、 いつも本気にしなかった台詞。にこにこしてる優しい彼が怒るところなんて見た事なかったし、きっと拗ねる位なんじゃないかって思ってた。
だから、こんな事になるなんて思わなかったの…
「おあいて…!痛いよ!離して…!」
さっきから無言のまま、夜の風を切り裂くように凄い速さで夜道を進んでいくおあいて。そんな彼に引き摺られる様に腕を取られていた。
彼がここまで怒るには理由がある。
それは、さっき起きた事件。
学生時代からの男友達に私がキスをされてしまった事。
今日は誘われて夕ご飯に彼と二人で行った。おあいてにもきちんと報告してあって、承諾してくれてた。
しかし、その帰り際に突然キスをされてしまったのだ。私はそんなつもりはなかったけれど、友人はずっと私の事が好きで、我慢が出来なかったらしい。
そして運悪く、迎えに来たおあいてにその現場を見られてしまって…
彼は何も言う事無く私の腕を掴むと、すごい力でぐいぐいと引っ張っていった。
電車に乗っても無言のまま。けれど私の手を離すことはなく、窓越しに彼の様子を伺うと斜め下を見つめていた。無表情の彼にとても話しかけられる様な雰囲気ではなく、一切会話はない。
そして、駅から彼のマンションへの道も、まるで警察に連行される犯罪者の様に自由を奪われて居たたまれない状態だった。
言い訳すらさせてもらえなかった。
バタバタと乱暴な足音だけが響くマンションの廊下。
目的地である自身の部屋に辿り着いた彼は足を止めてガチャリと鍵を開けた。
そして、そのまま私を玄関の中に突き飛ばす。
「痛っ…!」
勢いよくフローリングに尻餅をついて、身体に鈍痛が走る。その反動で、パンプスも脱げてしまった。
「なまえ…」
やっと彼が言葉を発した。
それは今の状況にそぐわない、とても静かな口調。不思議に思い見上げると、玄関に立ちはだかるように佇むおあいて。ライトを背に受けて逆光の彼は暗くて重い。
私を見下ろすその瞳は冷たくて、光は存在していなかった。
「ご…めん…なさい…」
思わず溢した謝罪の言葉。
恐怖に耐えきれず鳥肌が一斉に立って、身体がガタガタと震え始める。
「ねぇ、なまえ。言ったよね?
"浮気したら俺怒るよ"って…」
靴を脱いでフローリングに上がり、腰を落として私と視線を合わせるおあいて。
かわいい大きな瞳が私を見つめるけれど、その瞳孔は開きっぱなしで彼の精神状態が正常でないことは一目でわかる。
「あの男とキスしてたでしょ…」
震える手先で私の唇をそっとなぞるおあいて。
「違う…あれは…」
「何が違うんだよ!!」
突如大きな叫び声を上げた彼は、私をそのままフローリングに押し倒した。
「やっ…!痛っ…!」
肩に指が食い込む位に力を込めて、冷たい床に縫い付けようとする。
視界は陰り、真上からは哀しみを宿した瞳で、仰向けになっている私を見つめるおあいて。逃れようとするけど男と女の力の差は歴然としていて敵うはずもない。
「…俺を傷付けてそんなに楽しい?」
「ほんとに…ごめんなさい…
あんな事されるなんて思わなくて…
ただの友達だと思ってた…だからおあいてにも
紹介したんだし…もう二度と会わないから
許して…」
「うるさい!!」
涙を流しながら謝るも、彼氏は一向に許す気配はない。
「どうせ、なまえが誘う様な事したん
でしょ?いっつも俺の事も誘うし…」
詰る様に言葉を並べながら責め立てて顔を近づけてそのまま唇を奪う恋人。
深く深くまで侵入した舌は、私のそれを絡めとり怒りを発散させるかの様に口腔内を激しく舐め尽くした。
「ほら、ちょっとキスするだけでこんな風に目をとろんとさせて男誘って…」
「違う…これはおあいてだから…」
「黙って」
首を左右に振って必死に違うと訴えるけど、彼氏は聞く耳も持たず服に乱暴に手をかける。
「やっ…!止めて…!」
「だ〜め!だってお仕置きだもん。
なまえが俺の事、裏切るから悪いんだよ」
身体を捩って逃れようとしても、虚しく徒労に終わりセーターは脱がされて、下着にされる。剥ぎ取られたコートやスカートが周りに散乱していた。
「ひゃあっ!?冷たっ…!」
ブラジャーをずり上げて、膨らみをいきなり鷲掴みにする。その手は冷たくて、思わず身体を硬直させるが、おあいてはお構い無く荒々しく揉みしだく。
そして、先端に吸い付いて歯を立ててきた。
「痛っ…!」
制止させようと、おあいての頭を離そうとするも彼は無視して舌で捏ねくり回すと腰の中がじわりと熱くなる。
「痛いのは当たり前だよ、なまえ。
だって、俺怒ってるもん…」
そのまま、舌でお腹をなぞり秘部へ到達するおあいて。ショーツは剥ぎ取られて、花弁を暴かれた。
「あぁっ…!おあいて…はぁっ…」
私だけが全てを晒されて、おあいては服を着たまま。しいて言うなら、モッズコートを脱いだくらい。裸で股を大きく開かされているのに、彼はシャツの上にセーターを重ね着してジーパンを履いている。そんなごく普通の格好で秘部を刺激しながら、私の身体に指や舌を這わせる。その状況に羞恥を煽られ、本当に罰を与えられている事を自覚させられた。
「うわっ…なにこれ。どんどん溢れてくるよ。
何いつもより感じてんの?」
「やぁっ…そこダメ…!」
楽しそうに口許をペロリと舐めると、人差し指と中指を蜜壺に突き立てて中を乱暴に引っ掻きながら、親指でその上にある肉芽をぐりぐりと押し潰してくる。肉襞はその刺激にうねり、おあいての指に絡み付いていた。
「あっ…!あぁっ…!ひゃあっ…!!」
「イクの?俺、怒ってるのに?」
刺激が強くなるのに比例して、声が大きくなってしまう。揶揄する彼氏にイイトコロをばかりを擦られて、腰が浮いて水の音が大きくなってきた。フローリングで軋む身体の痛みすら、気持ちよく思えてしまう。背中にぞくぞくと電流が走って、目の前で白く閃光が弾け始めた。
「やっ…!ダメ!!」
水の噴射音と共に身体が一瞬強張り、膣壁はおあいての指を締め付けながら小刻みに痙攣をしていた。
「なまえは淫乱だね。浮気で詰られてるのに
潮まで吹いて…」
霞んだ視界でも彼が口を三日月形に上げ薄ら笑いを浮かべているのが分かる。
いつもの可愛い笑顔とは違って、冷酷で歪んだ口許。私の愛液が滴る指先を舐めとるその姿は、怖くもあり艶めかしくもあった。
「やだぁ…も…許して…」
指を抜かれると、ぐちゃぐちゃに掻き回されてどろどろに溶かされた私の中心がひくひくと震える。身体の力は抜けて、体力も残っていない。
これ以上は止めて欲しいと懇願した。
「ダメ。こんなのお仕置きに入らない。
大好きな彼女が違う男とキスしてるの見て、俺が
どれだけショック受けたと思ってるの?」
けれど、無情にも自身も一糸纏わぬ姿となったおあいてが先端を入口にぐりぐりと激しく擦り付けてくる。
「俺、許さないから…」
泣きながら睨み付ける様なその眼差しはとても強くて…でも、どこか中身のない空っぽな寂しさを感じた。
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