「そのとき気付いたんだ。俺、みょうじのことが…」

「ちょ、ちょっと待って。」


私は、恋愛経験はほとんどないが、それこそ本を読んで来て無駄に知識はある。ここで話の続きが読めないほど鈍感さんでは無い。


「私は、丸井くんが思っているような人間では無いと思います。」


"脈あり以外の何物でも無いじゃない"という友人の言葉が蘇る。それでも、私にもはっきりしておきたいことがある。


「確かに、2年生のときは本当に本の虫でした。でも、3年生なって、図書委員長になって、柳くんと仲良くなって、カウンター席からテニス部を見るようになって。そしたら、いつの間にかファンになってたんです」


話しているうちにだんだん俯いてしまう。


「…知ってましたか?ここのカウンター席、テニスコートが丸見えなんです。以前、丸井くん、ファンの人が苦手って言ってたけど、私も変わりません。偶然この席を見つけたから、コートまで行かなくて済んだんです。丸井くんが図書室に来たときは嬉しかったし、一緒に帰るなんて夢みたいだった。他のファンの子と一緒なのに」


そこまで言ったら、もう言葉が続かなかった。自分が何を言いたいのかも分からなくなってきた。心なしか視界が滲んでいる気がする。丸井くんはどんな反応するんだろうか、顔をあげられない。


「………もしかして、それで俺が幻滅するかもって思ってる?」

「…ぇ?」


思わず顔を上げると丸井くんは少し怒ったよう表情をしていた。


「あのときの言葉、そんな意味で言ったわけじゃないんだ。もし、それで傷付けたならわるい。

ーでもさ、それだけの理由で人を嫌いになるほど俺は単純じゃねぇよ」


そう言うと、丸井くんは表情を和らげた。それは笑顔だけど泣きそうでもあった。


「それに俺、人を見る目はあるんだ。だからさ、お前がそれを否定するなよ」


その言葉を聞いて、今まで耐えていた涙がこぼれる。友人も言っていた通り、考えすぎだったのだ。本人に聞いてみればこんな簡単なことだったのに。私なんかが考えるよりもずっと大きな人だった。

そう考えると余計に視界が霞む。泣いちゃだめだ。泣いちゃだめだとそう意識するたびに溢れようとする涙はもう、どうすることも出来ない。


「じゃあ……。私、丸井くんのこと、」


好きって言ってもいいの?
(……なんで、先に言うんだよぃ。)
(と少し拗ねたように言って、丸井くんは私の涙を拭ってくれた。)






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あとがき
少女Aの観察日記、全10話完結いたしました。いかがだったでしょうか。
この作品は確かに恋だった様より、ファンからの恋10題をお借りして作りました。お題初だったのでオチを作るのが難しくて難しくて…。また、初完結作品なので、オチの付け方がいいのか悪いのか…という状況です。基本少女A目線だったのですが、私の中ではこの子がこう動いてこうなって…という裏設定が多く生まれてしまって……。B=ブン太、 C=キューピッド=他のキャラで別視点のアルファベットシリーズいけるじゃんと勝手にテンション上がってますがどうなるかは分かりません。でも、結構楽しんで書けた作品なので良かったです。

今後の参考にしたいので出来れば感想等頂けると嬉しいです!

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
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