あれよ、あれよとたどり着いたのはストリートテニスのコート。早速ラケットを取り出しコートに駆け出す弟ズ。
なんでこうなったんだろう。備え付けられたベンチに座り考える。なんか、前にもこんなこのあった気がする。
「…何か、悪いな。無理矢理連れてきたみたいになっちまって」
隣に座りそう言った丸井くん。そう思うなら途中で止めて欲しかったな。ていうか、きっかけは丸井くんの一言なんだけど。
「ううん。まさかよく聞くお兄さんが丸井くんだとは思わなかったけど」
「…あいつら、変なこと言ってねえよな。」
「大丈夫だよ。あ、そうだ。丸井くん、シンデレラでお姉さん役するんだって?」
「げ、十分変なことだろぃ…。まあ、テニス部でな。」
(あ、けっこう会話出来てる。良かった)
と思っていると、丸井くんの様子がなんかおかしい。何かを言おうと迷ってるような感じだ。
「……どうかした?」
「あの、さ。お前、最近図書室いないよな」
「え、あぁ。係りの人がちゃんと来るようになったから」
「そっか…。じゃあ、仁王とは?」
「……え?」
なんでそこで仁王くん?
「みょうじ、この前家庭科で作ったやつ仁王にあげてただろぃ?」
いつの間に仲良くなったんだよ…。と俯いて話す丸井くんの表情は私には分からない。ていうか、見られてたんだ。
「あれは、仁王くんがくれって言ってきて…。早くクラスに戻りたかったから」
「仲良いんじゃねえの?…名前呼びだったし」
「名前呼びは私も謎で…。だいたい、話したのだって2、3回くらいだし」
「そう、なんだ。なんだよ。仁王が気が合うとか言ってたからさ」
「まさか!気が合うどころか、仁王くんよく分からないから少し苦手。」
そっか。違うならいいや!と笑う丸井くん。
(……何、それ)
「兄ちゃーん!テニス教えてよ!」
「おう!あ、みょうじもやろうぜ!」
「え、でも私運動苦手で…」
「そんくらい大丈夫だって!ほら、行こうぜ」
そう言って、丸井くんは私の腕をとってテニスコートへ走った。
こんな貴方は誰も知らない。(まるで、仁王くんに嫉妬してたみたいな…。なんて、自意識過剰)
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