青春スタート

1年C組に着いたのは柳くんプレゼンツ私にオススメの部活動の5つ目、ツチノコ探索部の紹介に入ろうとした頃だった。え、何その部活もっと詳しく聞きたかった。さすがマンモス校立海いろいろな部活があるんだなぁ。なんで私にオススメして来たのか分からないけども。

教室には既にちらほらクラスメイトがおり、席に座っていたり、友達の席に集まって雑談をしたりしている。ぱっと見ると黒板には入学式の日にはなかった座席表が貼ってあった。名前順かと思えばそうでもないようでランダムに並んだ苗字から"春名"を探す。えーと……

あ、


「春名の席は教卓の真ん前か……俺の席とは結構離れているな。ちなみに俺のデータによれば担任の一宮先生は迷ったら1番前の生徒をよく当てるらしい。予習は怠らないほうがいいだろう」


まあ、春名の頭脳なら必要ないと思うがな。と謎の一言を残し去って行った柳くん。
柳くんの言う通り私の席はまさかの真ん前。別に授業中やんちゃをする予定もないが流石に真ん前だと気が抜けないなあ。初日からついてない……。柳くんをそのまま目で追っていくと窓際の後ろから2番目の席に着いた。……結構いい席じゃないか羨ましい。


「ねね、春名さん、だっけ?柳と仲良いの?」


とりあえず一限目に必要なものを机に出し、手持ち無沙汰になった私はボーッと黒板やらその上の時計やらを見つめていた。その時、そんな声と同時にトントンと肩をたたかれる。
え?と後ろを振り返ると後ろの席の女の子が柳くんを指差しながらニコッと笑っていた。

突然ごめんねー、と軽く自己紹介してくれた彼女は柳くんと小学校が同じだったらしい。しかもテニスをしているんだとか。春にもかかわらず少し日に焼けた肌はそのためなのかな。ショートカットのよく似合ういかにも活発な少女といった様子だ。みっちゃんと呼んで欲しいと言われたのでありがたくそう呼ばせてもらうことにしたけどこの子コミュ力高いな……


「柳って不思議ちゃんって感じじゃん?まさか初日から誰かと来るなんて思ってなくて。転校前のお友達とかかなーって思ったんだけど、違った?」


ああ、朝教室に入ってからの一連の流れを見てたのか。確かに柳くんの物言いは私を前から知っていたような口ぶりだったしそう勘違いしても仕方ないだろう。


「いや、話したのは今日が初めてだよ」


素直にそういうとあからさまに残念そうな顔をするみっちゃん。まだ少ししか話してないけど、とても表情豊かで面白い子だ。


「なーんだ、柳の転校前のテニス仲間だったら一緒に部活入れると思ったのに……」


へえ、柳くんて転校生だったんだ。あー、なんかそんな話もあった気がする。元々はどこに住んでたんだろう?まあ、それはまた本人にでも聞いたらいいか。それよりも一緒に部活ということは……


「……みっちゃんは、テニス部に入るんだ?」

「もちろん!そのためにここに入ったんだし」


明らかに目がキラキラしはじめた彼女。どうやら立海は女テニも充分強いらしくその歴史を熱く語ってくれ、この際初心者でもいいからと入部を誘われたが丁寧に断っておいた。


「近くの席になったのも何かの縁だし、これから仲良くしてね、葵ちゃん」

「もちろん!」


朝の十数分で2人も友達ができるとは……。2度目の中学生活ひとまず第一難関の友達作りはなんとかなりそうで一安心だ。

それから、みっちゃんと雑談をしていると隣の席男の子が座った。
私と同じく教卓の真ん前なんて貧乏くじを引いた人は一体誰だろうとぱっと顔を向け、驚きと若干の後悔から顔がこわばる。相手も視線を感じたのか不思議そうに私を見ているが私はまだ言葉が出てこない。だって誰が想像できるだろうかまさか隣の席が、


「?ああ。隣の席になった真田弦一郎だ。よろしく頼む」


何度も言うが立海大学付属中学校はマンモス校である。未来の三強2人と1日でお知り合いになれるなんてどんな確率だよ。勘弁してください。
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