そうして時間は流れ、あっという間に昼休みを迎えた。 昼時の中庭は男子もいて女子もいて、同級生もいれば下級生の生徒もおり、ここで色んな生徒が賑やかに過ごしている。
(中庭でって言われたから来たものの、いないな。あいつ。)
けど、そこにアイツの姿はなかった。 現在進行形で『超ウルトラなカツサンドスペシャル』にチャレンジ真っ最中だと思うからいなくて当然? アレの難易度までナメてるのだろうか。まず買ってこれるわけないのに・・・。 アイツもバカだよなー。あんな無理難問な要求、真に受けるなんて。頭のいいクラスにいるくせにバカだよなー。
「・・・・・・・・・。」
で、オレもオレだよな〜。 人をパシることだって初めてで、そんなことをパシっておきながら気が気じゃなくなってるなんて、小者の証拠だ。
(本当、バカだよなー。誰でもいいならオレじゃなくたっていいのに・・・。)
昼休みが始まって中庭に来てから、数分が経過。
「・・・・・・・・・。」
それでもアイツは現れなかった。 さすがにこれ以上は待てない。 来ないアイツを待ってて昼飯食いそびれたなんて、笑い話にも出来ない。 そして来ないイコール買ってこれなかったというわけだ。 朝言った通り、これでアイツとお別れ。期限の三ヶ月を待たずして、それを理由に永遠にさよならが出来る。 オレはそれを望んでやったこと。だから何も後悔はない。
(・・・帰ろう。)
なのにオレの心は、どこかで何かが引っかかってる気がした。 これが何の感情か分からないが、多分ちょっとは期待していたんだろう。
(やっぱり『超ウルトラなカツサンドスペシャル』は食べれなかったか。)
するとその時、
「待って、先輩!」
「・・・!」
「よかった。まだいてくれて・・・。」
ようやくアイツがやってきて、オレの前に姿を見せる。 中庭から去ろうとした時に来たから、それは本当にタッチの差。 あと5分。いや、あと3分ズレていたら完全にすれ違っていたかもしれない。
「遅い。」
「ごめんね先輩。こんなにも遅くなっちゃって。」
そしてソイツはここまで走ってきたのだろう。 乱れて荒れた呼吸を、ふぅっと息を静かに整える。 まあ、そんなことはさて置いといて。奴が無事にここに来たってことは、例のアレを買ってこれたのだろうか。
「で?買えたのか?」
「購買がいつもに増した戦場になってて、すっごく大変だった。自分の為であっても、あんなのもう二度と挑戦したくない。」
訊いた問いにこの反応。もしや篝チャレンジ成功!? 意外とコイツ根性あるのな。むしろ勝負運が強いのか? 食べれないと思っていたモノが食べられる。 伝説級で幻級の『超ウルトラなカツサンドスペシャル』が食べられる! 中庭に来て良かった。待ってて良かった。すれ違わなくて本当に良かった。 そんな調子いいことを心に秘めさす。
「じゃあさっそくそれを寄越ー・・・「それじゃあちょうどいいし。ここでお昼にしよっか。」
「・・・は?」
そしてそれをさっさと受け取りたかったのに、こっちが言い終ってないうちに、向こうが重ねてそう何かを言ってきた。
「だって先輩もお昼まだなんでしょ?俺も何も食べてないから、ほらちょうどいい。だからここでお昼にしようよ。うん、決定。」
「決定って、オレまだ何も言ってないだろ!」
「えーっと場所はどこにしよっか。あっちのベンチにする?あ、やっぱそっちの芝生にしよっか。誰もいなくてゆっくりできそう。」
「人の話を聞けーーー!」
そしてそしてコイツは相変わらずこっちの話を聞かずに、グイグイことを進めていく。 本来なら「ふざけるな!」と言い放って去りたいところだが、すぐ目の前には『超ウルトラなカツサンドスペシャル』があり、それが食べたいが故に下手な手は出せない。 オレだって人間だ。空腹に勝てるわけがない。 なので勝手にグイグイ進められていく。
「でも先輩が来てくれてて良かった。もしかしたら始めっから来ないつもりなんじゃないかって思ってたから。」
「は?お前が来いって言ったんだろ?」
「あ、うん。それはそうなんだけど・・・。ホント、先輩が来てくれてて良かった。」
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