イケメンくんの羽前 篝と、平凡くんの斉藤 崇が三ヶ月という期間限定で付き合うことになった二人。 それから日付は次の日に変わり、朝を迎える。
「おはようございます、タカシ先輩。」
「・・・・・・・・・。」
学校の正門にて昨日と同じところにいたこの男、羽前 篝。 学校に登校したばかりのオレ、斉藤 崇の前にご登場。
「今日は雲ひとつなくていい天気で気持ちいいね。」
「・・・・・・・・・。」
「ね、先輩。先輩もそう思わない?」
「・・・・・・・・・。」
朝っぱらからニコニコ、ニコニコ。奴のそんな上機嫌の顔がオレの気分を逆撫で、ただでさえ寝不足な機嫌をより悪くさせる。 なので、
「朝からうるさい。それ以上やかましくしたら破綻な。」
「え?え!?」
ただそれが気に食わなかったという理由だけで、オレは別れを宣言。
「ちょっと・・・とと。ちょっと待って。え?え?もしかして先輩、朝苦手?」
「・・・・・・・・・。」
「へぇ、知らなかったな〜。俺は朝そこまで弱くないから感覚分かんなかったよ。」
「・・・・・・・・・。」
「朝ご飯だって普通にお茶碗2杯は食べてこないと、お昼までもたないし。」
「・・・・・・・・・。」
そしてこいつもこいつで、人の話を聞いてないようだ。
「だからうるさい。オレ、朝からうるさい奴キライだから破綻な破綻。もう別れてくれ。」
「わっ!?ごめんなさい、ごめんなさい!これ以上はうるさくしないから、まだ許して!」
「もう今のその時点で十分うるさいから!お前こそオレをさっさと諦めろ!」
「やだやだやだ。」
それから昨日からそうだったけど、コイツずっとオレにタメ口なんだよな・・・。 オレのが年上なんだから敬えとは言わないが、年下のくせして軽々しくしてくるのも府に落とせず、なんだか気に入らない。 まず間違いなく、なめ切られていることには違いないだろう。
「オレに気に食わないことあったら別れるって言ったよな?それでいいってお前言ったよな?」
「言った言ってた!言ったけどオレ、まだ先輩と付き合っていたいの〜。もうしないから、なんでもいうこときくから許して!」
「・・・・・・・・・。」
裏で何を企んでいるのか知らないし、知りたくもないし、知らないままで終わりたい。 そんなのに三ヶ月も付き合っていられるほど、こっちだって暇じゃないんだ。 だからこっちからあっちだけではなく、あっちからこっちにも諦めがつくよう。先ずはオレ自身が嫌になるぐらいワガママな男になる。
「じゃあ今日の昼、購買で販売される『超ウルトラなカツサンドスペシャル』買ってこいよ。もちろんお前の金でな。もし買ってこれなかったら永遠にお別れ、さよならだ。」
「へ?」
ちなみに『超ウルトラなカツサンドスペシャル』というのは、オレらの学校の購買でしか売ってない幻のカツサンド。 昼時限定、曜日限定、数量限定で限定尽くしで人気すぎる品物で、これを食べずに卒業していった生徒も数知れずな伝説を誇るカツサンド。 それはさすがにコイツも知ってるようだが、オレが要求した条件に顔を青く染めさす。
「無理無理無理!そんなの無理だって!買ってこれるわけないよ!」
「さっき『なんでもいうこときく』って言ったよな?」
「え、あ・・・。」
「オレと付き合いたいんだろ?ならこれぐらい簡単にやってのけろよ。」
こんな難問を求めさせた上で、コイツがボロッた言葉を武器にして拒否権を生ませない。 どうだ?こんなワガママ、嫌どころの話じゃなくなるだろ?100年の恋も冷める瞬間だろ?
「分かった、分かったよ。タカシ先輩がそこまで言うなら買ってくるよ。」
本当はそれをもう一押ししてオレを諦めさせる理由に使いたかったが、それを公言する前にコイツが渋々とその条件を呑んだ。
「今日の昼休み、中庭で待っててね。」
「お、おう。」
果たして今日の昼休みにコイツは『超ウルトラなカツサンドスペシャル』を買ってこれるのか。 成功するか失敗するか、篝チャレンジスタート!・・・なんて言って、ちょっと場を盛り上げてみたり。
|