なのに責められて迫られて惑わされる道標。何が正しくて何が誤った選択肢なのかも分からなくなっていく。
「じゃあさ。お試しでもいいから、俺と付き合って？」
「･･･え？」
「三ヶ月でいいから。それでもダメだったら俺、ちゃんと諦めるからさ。」
そんな中で優しい声色で耳の奥まで通ってきた言葉。
『諦める』という単語に、救いの光があるように思えた。
だからオレは、
「･･･三ヶ月、だけな。」
最終的に結局、溜め息交じりで首を縦に振る。
「ホント！？ホントにいいの！？嘘ついてない？」
「嘘にしていいなら嘘にする。」
「ううん、ううん。嘘にしないで。俺と付き合ってくれるんだね！？嬉しいよ、俺！」
「ただし！罰ゲームだったり脅されてたり、変なこと企んでたり気に食わないことしたら即、破綻な。賭けてたりなんかもしてたら、その額全部奪うからな。」
けど、それが誤った選択肢になってしまわないように条件を付けた。
あっちだって一方的だったんだ。こっちだって一方的に決めさせてもらう。
「･･･なんか、あれだけ断ってた割には随分と真剣な条件だね？」
「嫌なら直ぐ破綻。」
「嫌なんて一言も言ってないでしょ。いいよ、それで。俺と付き合ってくれるんだから、それぐらいの条件呑むよ。」
これでこっちの都合で三ヶ月と言わず、今直ぐにでも別れを切り出せる。
嫌がらせする気満々。自分に気に食わないことがあれば直ぐに別れる気満々。
そんなワガママボーイなオレにコイツがどこまで付き合えられるのかも見ものかもしれない。
「ところでー、先輩。先輩の名前って何？」
「今さら聞くんだ。知ってて告ってきたわけじゃないんだ･･･。」
「ごめんなさい。いろいろ、テンパってて。」
「破綻。」
「ああああ、知らなくてごめんなさい！テンパってたから聞きそびれちゃってて本当にごめんなさい！まだ別れる言わないで〜。まだ何も始まってない〜〜。」
こうしてイケメンくんの羽前 篝と平凡くんの斉藤 崇が、三ヶ月という期限付きで付き合うこととなった二人。
「･･･斉藤 崇。」
「俺はね、俺はね。俺の名前はね。」
「知ってるから言わなくていい。」
「え！？俺の名前、知っててくれてたんだ！嬉しいな〜♪」
三ヶ月もつことすら怪しい今だけど、果たしてどうなることやら。
「これからよろしくね、タケシ先輩。」
「崇な、タカシ。人の名前いきなり間違えんな！」
「あ、あれ？」
「破綻。」
「ああああああ。ごめんなさい、ごめんなさい。名前間違えてごめんなさいってば！まだ別れる言わないで〜。始まるのはこれからなんだからー！」
つづく |
