せっかくのイケメンな外見も、その一言で台無し。 どこが性格までイケメンだ?なんてことを堂々と言い張ってんだ!自分で何を言ったか分かってるのか?
「だからー・・・俺と付き合って下さい。」
「うん。絶対に嫌。もっと嫌。」
「あ、あれ?なんでまだ断るの?」
特待クラスにいるんだよな?頭が良いはずなんだよな? そんなので断られない100%の自信は、本当にどこからやってくるんだろう。
「俺と付き合ってよ!300円あげるから!」
「ならオレは200円プラスでやるから、お前こそ諦めろ。」
「じゃあその500円貰うから、俺と付き合って!」
「それはただ単にオレが500円損してるだけだろ!誰がやるか!」
付き合って下さい→嫌。 付き合って下さい→嫌。 付き合って下さい→嫌。 どうアプローチされても断るオレ。 さっきから会話が平行のまま、一向に解決しない。いい加減、それに痺れが切れたのか。
「付き合ってくれるまで、俺はここから退かない!家になんて帰さないから!」
「・・・・・・・・・。」
ここにきて脅迫。 最終的の手段だったのか、何を血迷ったのか。そう脅してまでこの話を決着させようとする。・・・コイツが諦めてくれれば、そこでもう終わってる話なんだけどね。 けどオレは、そんな脅しなどに動じない。 動じるほどの内容じゃないから動じない。
「はいはい、分かった。付き合うー・・・って言っても、どうせ退く気ないんだろ?」
あれだけ断っても、しつこく一点張りだったんだ。 たかがそれだけで素直に退くはずがなく、きっとそれにも裏があるに決まってる。 そんなことが見え見えな脅しに怯む必要なんてー・・・。
「え!?付き合ってくれるの!?わーっ、ありがとう!俺、すっごく嬉しいよ!」
ん・・・?
「あ、家に帰るの邪魔してゴメンね。今すぐ退くね。気を付けて帰ってね。」
え???
「ワーイ、ワーイ。」
「待て待て待て待て。ちょっと待て、オイ!」
何を、どうして、そうなった!? オレが言った言葉を、どう解釈したのか。 それを聞いた途端にすんなりと人の前から退き、一人あっちで大喜び。 そんなオチの話に当然、納得できないオレは青い顔で、奴を引き戻して異議申す。
「ん?なに?あぁ、そっか。俺たち付き合うことになったんだもんね。はい、いつでもどうぞ。」
「だからちょっと待て!誰が付き合う言った!?」
何が両手広げてギューギューウェルカムだ!その腕どっちもへし折るぞ!
「え。だって付き合うって言ってくれたじゃない。だから俺、退いたのに。」
「確かに言ったけど、そうじゃない。そういう意味で言ったわけじゃないから。」
「でも退いたんだから、俺と付き合うしかないよね。」
「!?」
コイツの解釈に抗議したのが間違っていたのか。 一方的に成立させた交渉で、言葉の恐ろしさを武器にしてオレから奪う選択肢。 いやいやいやいや。いやいやいやいや。 それはコイツが勝手に退いて、勝手に違う解釈して、勝手に変なことを言ってるだけ。 オレは何も悪くない。オレは何も悪くない。オレは何も悪くない。
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