その力は年下のくせして強く、そしていきなりだったから、ほとんどがなすがまま。捕まって強く引かれたオレは、力任せに体ごとドンッと壁に押し当てられー･･･。
「なにす･･･！」
「なにすんだ！？」と痛かった怒りをぶちかまそうとした口に、篝の口が重なってきてその言葉ごと封じられてしまう。
「ん、んーーー！？」
一瞬にして起きた出来事。
理解できたのは、篝にオレの唇を奪われただけ。
しかも足と足の間、股下に入ってきた篝の片足に体を固定されたせいで暴れるどころか動けない。なのに無理に暴れて言葉になってない声をあげたものだから、あっという間に酸素不足になってくるしくなってきて･･･。
「ん！ん！ん！！」
誰かとキスすること自体、今が初めて。
それですらショックが大きいのに今度は呼吸が出来ないパニックにも襲われ、有り余ってた力で篝を叩いてでも退かそうとしたがビクともしない。
このままではまさかのキスで溺れてしまう。
「･･･！･･･！」
そんな恐怖を覚えさせられ、奪われていく抵抗。
叩いていた手が篝の制服を握り、熱くなってくる体にのぼせそうになりながらも意識だけはなんとか保つ。
見る見るうちにオレが弱まっていく様子を見て、ようやく篝が離れたが、
「やっぱり先輩はそうでなくっちゃ。」
必死だったオレのどこが面白かったのか。
軽い口調で、そう耳元から伝えられた。
が、
「ひ･･･ィッ！」
篝の口はそのまま滑り落ちてきて、人の首元でとどまる。
生温かくて柔らかい感触がくすぐったくて、背筋までぞくぞく震えて力が抜けて声色すらも震えてしまう。
「ば･･･っか！やめろ･･･ッ！」
「やだ。」
「やめろってば！」
「やだってば。」
いくらやめろと言っても「やだ」と返されるだけ。
「俺の企み？そんなの先輩とヤりたいからに決まってるでしょ？」
「･･･っ。」
篝の片足に固定させられたところから伝わってくる存在が、どんどん確かなモノになってきて･･･。それからも逃げたかったから少しでも体を離そうとしたが、直ぐにバレてさっきよりもハッキリくっきりと明らかに示される。
「ちょっと逃げないでよ先輩。ワザと当ててんだから♪これでちゃ〜んと分かるでしょ？」
「･･･ぁったから。当てんな！気持ち悪い！」
「やーだ。だって先輩が悪いんだよ？あんなに尽くしてたのに全然俺のこと見てくれてなかったってことでしょ？先輩にずっとそんな目で見られてて俺だってショックだったんだから。」
とまらない篝の強行。
これ以上の展開は色々マズいのに、それすらお構いなし？
「あんまり暴れないでよ。そういうのされちゃうと俺、余計に先輩痛くさせたくなっちゃうよ？」
「痛･･･ッ！？」
「せっかく無理矢理だけはしないように努力してきたのに･･･。でも別にいいよね？先輩に分かってもらうには、それが一番。だよね？」
冗談交えもない篝の本気が、本気でヤバイしマズい！
そんなあまりの恐怖に、さっきから警報レベルでサイレンが鳴り続けてる自身の危険信号が、
「いい加減にしろ！これ以上したら本気でお前と絶交だ！！」
と、オレを叫ばせた。
「･････････。」
衝動的に口走った言葉とはいえ、なんて幼稚な台詞。けど精一杯で叫んだ最後の抵抗。
すると篝の暴走は寸前のところで、ピタッと止まった。
「･･･うん、分かった。絶交は嫌だから、これ以上はやめとくね。でも。」
さっきまでの強行が嘘のように、オレの気持ち以外、色んなモノを元に戻していく。
「俺はまだ先輩と付き合ってたいから。残りの数日ぐらい、周りじゃなくてちゃんと俺を見て。」
「え。」
「じゃないと俺だけが不利になっちゃうでしょ？だから、ちゃんと俺を見て。俺はずっと本気だったんだから。」
篝は本気だったんだ。ずっと本気だったんだ。
なのにオレはずっとそうじゃないって、遊びだって思ってたが違っていた。
だって仕方ないだろ。始めの時に誰だっていいなんて風に言われたら、そう思ったっておかしくない話だろ。
本気だなんて思うわけないし、自業自得だろ。
っと言ってやりたかったが、全ての文句を飲み込んだ。
結局、終わらせられなかった篝との関係。
全てはあの日から始まり今日をきっかけに、ようやくスタートが切れた今。そして期限の三ヶ月に、オレは篝にどう答えるのだろう。
つづく |
