そこでオレは泣いていた。 悲しい?悔しい?どうしてこんな思いをしなくちゃいけないのか意味も分からなかった。 そんなオレをたくさんの人が囲って笑っていた。中には友達だった人。いや、友達だと思ってた人もいた。 そんなオレが可笑しくて、そこにいた人たちはオレ以外みんなみんな高い声で大きく笑っていた。 その思い出の断片がオレ、斉藤 崇の夢の中で蘇る。
「・・・・・・!」
それが夢であったことに気付いたのは、ハッと目が覚めたとき。 それは夢だったはずなのに頭の中で、その中の映像が生々しく残っていた。 気持ち悪い。早く忘れたい。消えてほしいこんな思い出。淀んでいくこの気持ちから一刻も早く解放されたい。 そんな思いで起き上がった途端、その弾みで枕元に置いていた携帯電話が小指にぶつかり、ランプが点滅していたことに気付く。 汗もヒドイからさっさとシャワーを浴びたいのに、オレは何をしてるんだろう。
『おやすみなさい タカシ先輩』
なんとなくで手を伸ばして見てみると、そこにはアイツ、羽前 篝。篝からのメッセージが受信されていた。 連絡先を交換してから、いつもに変わりつつあるやり取り。 いつもあっちから送られて、いつもあっちで終わる。必要以上に送られて来たら真っ先に拒否リストいきだったが意外とそうでもなく、普通に送りたい時に送られてくる感じ。
「・・・・・・。」
そしてオレも都合のいい生き物のようで、この時ばかりはそのメッセージに少し、ちょっと、ほんのわずか?だけでも助けられた。そんな気がした。
それから少し寝てあっという間に朝になって、今日も学校に登校。
「おはよっ、タカシ先輩!」
幸か不幸か。その途中でアイツ、篝に見つかりポンと背中を叩かれる。 今の今まで登下校中の通学路で会うことなかったのに、なんで今日に限って・・・。
「嬉しいな嬉しいなっ。こんなところで先輩に会うなんて。」
「・・・・・・。」
「すっごい偶然!もはや運命すら感じるね!」
「・・・・・・。」
全力でお断りだ。そんな偶然も運命も。 明日から通学路を一本変えて時間も変えよう。 そんな文句を心に秘めながら、朝からうるさくて鬱陶しい篝を睨む。 そして奴のニコニコ顔が、今日も気に食わなかったので、
「うるさい。それ以上、喧しかったらー・・・。」
と。ただそれが気に食わないだけで毎度のように、毎度の台詞で此方から別れを告げようとした。 が、
「はいはい、分かってるよ。これ以上うるさくしないし、そこまでうるさくしてないでしょ?先輩こそ、いつも同じこと言ってて飽きない?」
途中で遮られてしまう。 「だったら少しは覚えろっ」と強く言いたいところが、朝からこれ以上機嫌を悪くしたくないので止めた。 そしてそしてオレも篝も向かう先は嫌でも同じ場所。 結局、このまま一緒に学校まで隣を歩かれる羽目に合う。
「そうだ。先輩ちょっといい?」
その途中も篝は話しっぱなし。 それは本人からしたらうるさくしてないのかもしれないが、オレからしたら十分それはうるさかった。 しかもそれが篝にも慣れてしまったのか。 オレがうるさいって言っても、そこまでしてないでしょって返されてしまうことが多くなった。 そんな中、
「先輩とネカフェ行った時に読んでた雑誌。昨日コンビニで続きが立ち読み出来て、すっごく興味深かったから先輩にやってみたいんだけどいい?」
「は?」
彼はコンビニで立ち読んだ雑誌で、何かしら得た情報をオレで試そうとする。 もちろん、答えはノー一択。 なのにその答えを待つどころか、こっちがまだ何も返事してない内に実行。
「なでなで、なでなで。」
「・・・・・・・・・・・・。」
なんと篝は人の頭に手を触れて、そのまま撫でてきたのだ。
「なでなで、なでなで。」
「嫌味か!?この野郎ッ!!」
「あれ!?効いてない?おっかしいな〜?」
そんな奴の行為。 篝に身長負けてることをひっそり気にしてたのに!その思いごと逆撫でられた挙げ句、年下に頭撫でられて怒りが生まれないわけがない。 いきなりで驚いたのもあったが、ほとんど怒りに任せて頭にいた奴の手を払い除けた。
「でも先輩、割と疎いところあるからな。もっとダイレクトにいくべき?けどそれはちょっといくらなんでも恥ずかしいなぁ。」
「何がしたいんだ?お前は!」
「だけど何事も始めが肝心だって言うしね。・・・よしっ。」
立ち読んだ雑誌で何を得てきたのか知らないが、その情報を頼りに自分の中で何かを解決させてまた行動に移そうとする。 だがそんな意気込み、やられる前にお断り!しようとしたが、
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