さっきオレに勉強教えてたからか?いい気になって調子こきすぎただろ。
「『すき』に決まってるだろ。」
「へッ!?!?!?」
だからムカついて、そんな問題を答え通りに正しく読む。 するとコイツはやっぱり人のことをナメていたようで、答えられたオレに対して凄く驚いた様子を見せた。
「なんだよ、その反応。やっぱりオレのことバカにしてたのか。」
「いやいや。そんなことないよ!けど答えるって思ってなかったから。」
「だからそれがオレをバカにしてたってことになるんだろ?」
「いやいや、だからそれはー・・・。ああ、もういいや。それでいいよ。俺、喉渇いたからジュースおかわりしてくるね。」
「やっぱりオレのことバカにしてたんだな・・・。」
否定していたそれも最後には肯定して、いそいそと席から離れていく。 そうでなくてもあの慌てっぷりと焦っぷりを見たら誰だって分かる。それが全てを語っているようだった。 本当、いけ好かない野郎だ。
そうして過ごしたこの時間。 今日の時計は進みが早いのか遅いのか。 あれからやっと一時間が経ってくれた。
「そろそろ充電いいんじゃないか?」
「もうこんな時間だったんだ。あっという間だね。」
それだけしか経ってないけど、それだけ充電できればもう十分だろう。100%いってなくても、ある程度あれば大丈夫だ。
「ほら。さっさとお前の連絡先教えろよ。」
「うん。」
そしてようやくお互いの連絡先が交換され、それぞれの携帯電話に登録された。 これにてオレの目的は終了。これにて一件落着。 もうお家に帰ってお勉強の続きがしたい。が、
「ねえ先輩。タカシ先輩って本当に俺の名前知ってるの?」
「は?」
「だって名前で呼ばれたこと一回もないから。だから本当に俺の名前知ってるのかなって思って。」
交換されたオレの連絡先を眺めながら、ソイツはそう尋ねてきた。
(いきなり何言ってるんだ、この男は。)
確かにオレはコイツのこと一度も名前で呼んだことない。 アイツとかコイツとかソイツとか。そんなのばっかり。 名前で呼ぶ呼ばない以前に、そんなこと気にしてなかったし意識してなかったし、正直どうでもいい。 けどこの男はそうではなかったようだ。 コイツはオレに自分の名前を呼ばせようとしている。
「だから、その知ってるなら名前で呼ばれたくて。知らなかったとしたら、ちゃんとこの場で名乗るし。」
こっちとしては別にどっちでもいいし、どうでもいいわけであって、そんなことに構う必要性はない。 今までだってアイツでもコイツでもソイツでも困らなかったわけだし。 けどそれがイコール嫌だったとか、特別な理由があるわけではない。
「言っただろ?お前の名前、知ってるって。お前の名前は篝、羽前 篝。間違ってないだろ?」
「・・・うん。」
ただ単純に今まで気にしてなかっただけの話。 構う必要性はないけど、どっちでもいいしどうでもいいわけだ。
「あ、もしアレだったら『かがりん』でもいいよ!俺のあだ名それ「そんな呼び方、誰が呼ぶかバーカ。」
今更感とてもパナいけど、別に名前で呼んでもいいと思う。
「んじゃあ帰るぞ、篝。」
「うん!ん?あれ?もう帰るの?ダーツとかやってかないの?」
「受験生に遊んでられる時間あるわけないだろ。明日も予備校だから帰って勉強すんの。」
「へー、受験生って大変だね。高校受験も推薦だったから、そういうのよく分かんないや。」
「お前。本気でバカなのかバカじゃないのかハッキリしてくれない?」
そうしてコイツ・・・、篝と過ごした休日。 行かないって言い切ってた野郎が結局来ちゃって色々振り回された今日。 楽しくなかった?つまらなかった?いや、それよりも疲れたというのが正直な感想だった。 そしてオレがこんなんだから、篝の決定的な企みが掴めず、また日だけを進めさせてしまうのでした。
つづく |