当然、結果はご覧の通り。ボロボロ。悲惨すぎて見直しすらしたくない。 それもこれも全部アイツもせいだ。アイツのせいで集中出来なかったから、こんな有り様になったんだ。 そんな自分で生み出した結果を全てアイツのせいにして、その思いが焦りを操って、ここから飛び出すように走って駅へと向かった。
けど予備校から駅は遠かった。 距離はあるし、信号待ちだってあるし、それにオレ自身の体力にだって限界がある。 どんなに急いでいても時間は無情に進み、やっと着いた頃には夕方の4時を迎えていた。
「・・・はぁ、・・・はぁ。」
繁華でもなければ田舎でもなく、建物自体が小さな駅とはいえ交通機関の場所だ。駅前となれば人盛りも多かった。 ここで待ち合わせると言えば出入口付近か駅構内にある待ち合わせ広場。 そこで電車やバスの定期券買ったり、次の電車やバス、タクシーを待つ人の為にベンチが設けられている。 だから真っ直ぐそこに向かった。
「・・・・・・。」
けど、そこにアイツの姿はなかった。
(いない、のか?)
帰ったのか。それとも最初から来てなかったのか。 疑心で揺れる心の天秤。淀んだ色に染まっていく気持ち。 頭の中に宿りだした古傷の苦い思い出。 忘れたい記憶ほど忘れたままでいいのに、思い出した瞬間。その時のことが鮮明に蘇る。 そんな経験をしておきながら、それでも来てしまった自分が愚かで滑稽だった。 オレは何で来てしまったんだろう。
(帰ろう・・・。)
「あれ、タカシ先輩?」
「!?!?!?」
そして自分も帰ろうとしたとき、直ぐ後ろからアイツの声が。 振り向くと、そこにはやっぱりアイツがいた。
「やっぱりタカシ先輩だ。よかった、もう一回こっちに戻ってきて。」
そんな奴の姿を見た途端、揺れていた心も淀んでいた気持ちも全てが晴れていく。 でも、それは一瞬の瞬間だけ。一秒以下。今はオレのことなんてどうでもいい。
「やっぱタイミングって大事だね。覚悟してトイレ行ったらやっぱり先輩が来てたし。危なかったよ、ホント。変な風にすれ違わなくてよかった。」
「タイミングとかそれ以前に人の話ぐらい聞けよ!あの時、オレ何回も何回も行けないって言ってただろうが!!」
「聞いてたよ聞いてた。ちゃんと先輩の話、聞いてたよ。でもいつも先輩、用事ないくせに用事あるふりするから今回もそれなのかなって思って無視してた。」
「ったく。オレが本当に来てなかったらどうしてたんだよ。」
「うん?んー、どうだろう。分かんないや。でも先輩ならってなんとなく思ってたから多分、限界まで待ってたと思うよ。」
オレの日頃の行いを理由にしたそんな奴の言い訳も、どうでもいいわけ。
「で?いつから来てたんだよ。まさか朝から待ってただなんて言わないよな。」
「まっさか〜♪」
「だよな。いくらなんでもそんなことはしないよな。」
「もちろん。高校生が出歩いても補導されなくなる時間からに決まってるじゃない。」
「お前。バカなのかバカじゃないのかハッキリしてくれない?」
おバカじゃないのに、おバカな行動を起こす、このバカをどうにかして下さい。
「だって俺、先輩に場所は言ったけど、時間を言うの忘れてたでしょ?先輩待たせたくなかったし、待たせない方法これしか思い浮かばなくて。」
「だからって、そんな時間から待つか?普通。」
「俺、緊張とか焦ったりするとダメなんだよね。肝心なこと忘れるし、その場凌ぎでテキトー言っちゃう時あるし。」
「そんなのでよく特待クラスいけたな。テストとか緊張したりしただろ?」
「いや。そっち関係は大丈夫だよ。一度も緊張も焦ったこともないから何の心配ないよ。」
「お前。本当にバカなのかバカじゃないのかハッキリしてくれない?」
そしてこんなことは今回限りにしてもらいたい。二度目があるのなら、そんな二度目なんて二度とごめんだ。
|