電話やメール、チャットにソーシャルネットワーク等の機能を通じて、遠く離れた距離にいても気軽に連絡し合えるようになった今の世の中。 けどそういうのがなかった人たちは、どうやって連絡を取り合っていたのだろう。 その当時のことは知らないし、それを想像してみても全然何も思いつかないから摩訶不思議だ。だからその時代から現代を見たら、連絡手段は数多くあるし人それぞれであって選びたい放題と言っていいに違いない。 そんな時代を生きている今。それはオレ、斉藤 崇もコイツ、羽前 篝も一緒。同じのはず。なのに、
「あ、いたいた。先輩、先輩。タカシ先輩〜ッ!」
今日も明るく元気よくオレの前に登場。 あれからのそれからっというわけで、コイツと付き合うことになってから、別れの切り札として決定的な企みが未だに分からないまま日だけが進んでしまった。 そしていつもコレ。コイツはオレの前に突然現れる以外、他に手段ないのかよ!と思い始めたこの頃だった。
「あれ?先輩どうしたの?ちょっと反応悪い?」
「別に。いつも通りだろ。」
(まあ、交換するしないはまた別の話。訊かれてもするわけないんだけどね。)
そんなことを考えてると、
「あ、そうだ。先輩、明日って空いてる?」
これもまた突然何かを思い出し、何かが始まったかのようにそう尋ねてくる。
「いや、空いてない。」
「明日、学校休みだしせっかくだからデー・・・っと。そう言うと先輩、絶対断るから仕切り直して。明日、学校お休みだしせっかくだから一緒にどこか遊びに行こうよ。」
「だから空いてない。」
「場所どこがいいかな?何か観たい映画とかある?それともカラオケ行く?ゲーセンで遊ぶのもいいね。」
それは向こうからの一方的な誘い。 相変わらず人の話をロクに聞かず、一人で勝手に進めていく。
「とりあえず何処にでも行けられるように待ち合わせは駅にしよっか。商店街も近いし。うん。よし、決定。」
「よし、決定じゃないって。勝手に決めんな。」
「それじゃあ先輩。明日、楽しみにしてるね〜。」
「だから空いてないって言ってんだろ!お前はいい加減、人の話聞けーーー!!!」
仕舞いにはコイツが自分一人で決め、スタコラサッサーと去って行ってしまった。 あーあー・・・、どうすんだ?これ。 っていうかアイツ、本当に自分勝手で何もかも決めていったな。 行けないって何回言っても聞いてなかったし、なんでアイツいつもオレの話聞こうとしないんだろう?オレもオレでアイツの話を右から左へ、左から右へ素通りさせてばかりいるからお互い様と言えばお互い様?
(とにかくオレはちゃんと行けないって言ったんだ。ちゃんと人の話を聞いてないアイツが悪いんだ。だから明日、行かなくてもオレは悪くない。オレは悪くない。オレは悪くない。)
けどこのままちゃんと伝えてないままも気分が悪い。 何かしらアイツに連絡を取れる手段があればいいものの、電話もメールもその他諸々も全滅。全部知らない。全部分からない。 でも同じ学校にいるんだ。クラスも学年も違うけど全ての術が途絶えたわけではないのだ。 だから放課後までに。オレが帰るまでにアイツとすれ違った時、今度こそちゃんと伝えよう。 オレは明日、予備校に行くから行けれないって。
そんな思いを抱えながら一日を過ごした今日。 あれからアイツは現れることがなく、オレの望みどおりにもいかなかった今日。 必死に自分は悪くないと唱えながら自分を宥め慰め落ち着かせて、結局何も伝えられないまま日付は次の日に変わってしまった。
そして今オレは、
「・・・・・・・・・。」
通ってる予備校にて、ここで模擬試験を昼過ぎまで受けていた。
|