それにオレらは今、現代を生きる現役の人間だ。 電話やメール、チャットにソーシャルネットワーク等の機能だってあるわけだし、今時の高校生には絶対必要不可欠。 ならそのセオリーに従い、便利なモノは便利に使おう。 あんな気持ちになるぐらいなら、それをならなくさせる手段ぐらい手元に置いておきたい。
「番号は?」
「え?」
「だからお前の番号、教えろって言ってんの。」
そんな気がなかった野郎のくせして、オレは手の平を返して奴から連絡先の交換を求める。 向こうからこっちではなく、こっちから向こうへ。 コイツがこの状況で断るっていう選択肢はないだろう。
「・・・ここ、で?」
でも何かマズイことがあるのか? その返答の微妙さは明らかにイエスではない。
「嫌なら嫌で別にいいんだけどね。」
「嫌なんて一言も言ってないでしょ!嬉しいよ、嬉しい。だけど先輩から言われるって思ってなかったからビックリしたの。ドッキリとかじゃないよね?やってないよね?そんなこと。」
けど、そこにはコイツなりの事情があったようだ。 持っていた自分の携帯電話を取り出して、その訳を話してくれた。
「俺のケータイ。電池、切らしちゃって・・・。」
携帯電話の電源を何回立ち上げようとしても反応が無。 うんともすんとも鳴ることなく、完全にバッテリーが0%に達してしまっている。
「なんでこのタイミングで切らしちゃうんだろう。こんなことならゲームしながら暇なんて潰さなければよかった。」
(・・・あんな時間からこんな時間までここにいりゃ、そうなっても無理ないよな。)
なんて運の悪い奴だ。 そんなことオレは知ったこっちゃないが、このままではコイツの連絡先が分からないまま。 知らないままでも困りはしないが、知らないままでは不便だと知った今。 コイツじゃなくて、オレが不便なので案を出す。
「お前、時間は?まだ平気?」
「いちお?」
「なら決まりだな。行くぞ。」
「何が?え、どこへ?」
「ケータイが充電できる場所。それぐらいなら付き合ってやれるから。」
それは今日たった今、突発的に決めたこれからの予定。
「え、どこ?それ。カラオケ?充電器持ってないけど大丈夫かな?借りれられるとこ?」
オレはこれからどこへ行こうとしているのか。 具体的なことは何一つコイツに伝えず、不思議な表情にさせたまま連れて、駅から目的地まで徒歩で目指した。
そうして歩いて歩いて、ようやく到着した目的地。 そこは映画館でもなければカラオケでもなくゲームセンターでもないけど、娯楽的なアミューズメント。 その名も、
「ネット、カフェ・・・?」
インターネットカフェ。 お茶やジュースを飲みながらパソコンでゲームが出来たり調べ物が出来たり、漫画や雑誌、新聞紙まで好きなだけ読めたり、ビリヤードでもダーツでも遊べるそんな場所。
「わぁーっ!すごいね、ここ!漫画いっぱい!これ、みんな読んじゃっていいの?」
「なに、お前。ネカフェ初めて?」
「うん。カラオケとかならあるけど、こういうところは初めてだよ。」
「ほら、あっちに充電スポットあるからケータイ挿して来いよ。受付済ませておくから。」
「あ、有料なんだ・・・。お金取られちゃうのは癪だけど仕方ないか。盗まれそうで怖いんだけど大丈夫かな?ちゃんとロック出来たかな?」
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