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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.29 ご褒美遊園地の話(後編)(4/5)
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限りなくダメに近い観覧車

っというわけで、アリカの発言により動物ふれあい広場から観覧車へ移動した二人。
順番もあっという間に自分らの番となり、向かい合わせに乗せた二人のゴンドラは、ゆっくりと高く上がって外はいい景色。

「エヴァさーん、ダメだったならダメだって言えよー。」

「・・・ごめんなさい。」

「なんでちゃんと言わなかった?」

なのに一切眺めないどこか、車内の一点を見つめたまま視界を動かさないエヴァ。顔色の雲行きが怪しくなり、さっきまでの幸せだった表情は完全に過去のモノとなった。

「俺のせいでアリカさん、ほとんど乗れていなかったので。なので観覧車ぐらいはと思って・・・。」

「だーかーらー、そういう気づかい要らないって前から言ってるだろ。」

「・・・ご、ごめんなさい。」

観覧車乗りたいって言った時も順番を待っていた間も、エヴァから「いいえ」も「NO」も出なかった。
だからこれなら大丈夫。二人が乗れる唯一のアトラクションが結局ダメで、流石のアリカも怒ってしまう。
もちろん観覧車がダメだったことではなく、それを言わずに黙っていたことに対して強く叱った。

「あ、でも観覧車は他と比べたら、まだマシな方ですよ。今日は風も少ないですし。」

「けど限りなくダメに近いならダメだろ?」

「だ、大丈夫ですよ・・・?今日はホント風も少ないので。」



アリカとエヴァの観覧車

空を目指すように高く上がるゴンドラ。
もう地上から二人がいるとこまで見ることは出来ないだろう。

(ここなら、いいか・・・。)

それを確信したアリカは溜めた息を一つ吐き、

「ほら。もうちょっとそっちいけるか。」

「!」

向かい合わせを止めて、エヴァの隣に。

「え、ちょ!?どうしてアリカさんまでこちらに!?ゴンドラが傾いたりしたらー・・・。「傾かせるほど体重ねぇから!どんだけ俺が重いって思ってんだ!」

「あああぁぁぁ・・・。ごめんなさい、ごめんなさい。そんなつもりで言ったわけではなくて。」

そんな移した行動が、あらぬ方向へ。
エヴァを余計に怯えさせて、余計に謝らせてしまう。
そういうつもりで動いたわけじゃなかったのに・・・。



アリカとエヴァの観覧車 2

邪魔が入らないせっかくの今を、隣同士に座って過ごす二人。
ゴンドラは、まだまだ頂上を目指している。

「もしかしてでもなく、エヴァって高所恐怖症?」

「いえ、そういうわけではなく。ただ単に遊園地の乗り物が苦手なだけで。」

「そういやさっきも同じこと言ってたな。何かあったのか?遊園地が苦手になるって、そうはないから。」

そんな中で尋ねたエヴァが遊園地ダメになった理由。
それは彼が一番最初に訪れた遊園地に原因があった。

「大した話じゃないですよ。中学の修学旅行で初めて行った遊園地の乗り物が錆びていて、あり得ない方向から壊れそうな音はするし変な所で止まるし風で揺らされるしで、凄く怖い思いをして。それ以来、遊園地がからっきしダメになってしまっただけのお話です。」

「訊いておいてなんだが、随分と大変な修学旅行だったんだな。」

なんと言うか、どんまいとしか言えない不運な思い出。
けどその時の思い出が、エヴァにとってトラウマとなってしまっていた。



アリカとエヴァの観覧車 3

「まあ、それはその時の話だろ。」

エヴァを構うアリカ。
年齢も事務所も彼のが上の為か、先輩風を吹かす。

「ここの遊園地は錆びてるとか、そんなこと全然なかったわけだし。こんなに一望できる高さから眺められるって滅多にないんだから、景色でも見て楽しもうぜ。」

「そうですね。」

少しでも機嫌を宥めるように。
少しでもこの今を悪い方向にしないように。

「わ、すごい。本当にいい景色ですね。」

「だろ?車内一点ばっかり見てたら勿体無いだろ。」

おかげで二人の空気はいい感じな雰囲気を漂わす。



止まった観覧車

けど、そんないい感じも一瞬の束の間。
ようやく頂上を過ぎて下降し始めた頃。

「ん・・・?」

キュルキュルキュルと妙な音がしたと思えばガコンッと大きな音を立てて、ゴンドラ内で流れていたBGMまでうんともすんとも聞こえなくなってしまう。

「え?」

ゆっくりゆっくりだったけど、さっきまで動いていた観覧車。
しかし今はゆっくりな速度がさらにゆっくり。いや、ゆっくりすぎ。いやいや、これはゆっくりとかではなく止まってないか?
高さが変わらない景色。
空調も止まっているのか暑くなっていく車内。
信じがたい現実を受け入れなくてはならない現状。

「は?ちょっと待った!ウソだろ、これ止まったのか!?」

アリカにとって、それは初めての体験。
焦って驚き、外の様子をもっとよく見ようと、ガタッと勢いよく立ち上がった。
そんな時、だった。



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