キィちゃんが俺の手を掴む前に、俺の方からキィちゃんの手を掴んだ。
「いいよ、行こうか?キィちゃん。」
「え?」
そしてその手を引いていく。 もちろん向かった先は、あの会場じゃない。 追っ手がこないか慎重に計らいながら、裏口を使ってこのホテルから外へ出た。 キィちゃんをそこから連れて行くために。
「キィちゃん、とりあえずコレを。まだ夜は涼しすぎるから寒いといけないし。」
「・・・うん。」
もちろんこんなことしたら色んな人に怒られるだろう。 けどここまで来てしまったら後は引けない。 誰にも見つからないように自分のスーツの上着を羽織らす。 白のタキシードじゃ夜は目立ちすぎるし、彼を風邪引かせない為にもカモフラージュをさせる。
「足元、気をつけてね。大丈夫?怖くない?」
「うん、大丈夫。ちょっとドキドキしてるけど全然平気だよ。」
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