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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.26 Birthday of Key (前編)(5/5)
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彼の手のひら

「え・・・っ。」

そう言って、俺に差し出してきた手のひら。
もちろんそれは思わず自分の耳を疑うほど。

「何を、言ってるの?キィちゃん。」

「大丈夫だよ、ちょっとだけだから。皆に内緒で抜け出そうよ。僕としましまちゃんの二人で。」

何に対して大丈夫?
誰に対して大丈夫?
キィちゃんはいったい何を言ってるの?

「大丈夫だってば。僕がいなくても、どうせ誰も困りはしないから。」



嘘か誠か

「・・・な〜んてね♪うそ、うそ。ジョーダン!」

「えぇ!?」

けど彼は、けろっとした口調で直ぐにいつもの彼に戻る。
おかげで張り詰めさせた空気すらも元に戻そうとするから、追いつけないこっちは置いてきぼり。

「僕を放置してご飯ばっかり食べてた罰として、困らせたかっただけだよ。あはははは、しましまちゃんのビックリした顔、すっごく面白かった。」

「だって今の本気で言われたら、誰だってビックリするよ。」

「あ、そうなんだ?じゃあ僕のドッキリ成功だね。」

・・・だったから。

「それじゃあ戻ろっか。しましまちゃん。」

自分のよりも先に下げそうになったその手が、どこか侘しそうに見えた。
だから俺はー・・・。



抜け出す二人

キィちゃんが俺の手を掴む前に、俺の方からキィちゃんの手を掴んだ。

「いいよ、行こうか?キィちゃん。」

「え?」

そしてその手を引いていく。
もちろん向かった先は、あの会場じゃない。
追っ手がこないか慎重に計らいながら、裏口を使ってこのホテルから外へ出た。
キィちゃんをそこから連れて行くために。

「キィちゃん、とりあえずコレを。まだ夜は涼しすぎるから寒いといけないし。」

「・・・うん。」

もちろんこんなことしたら色んな人に怒られるだろう。
けどここまで来てしまったら後は引けない。
誰にも見つからないように自分のスーツの上着を羽織らす。
白のタキシードじゃ夜は目立ちすぎるし、彼を風邪引かせない為にもカモフラージュをさせる。

「足元、気をつけてね。大丈夫?怖くない?」

「うん、大丈夫。ちょっとドキドキしてるけど全然平気だよ。」



夜の公園

そうして辿り着いたのは、近くにあった夜の公園。
あのホテルから全然距離を離してないけれど、もしものことがあった場合、キィちゃんを直ぐに戻れるようにそこをチョイスした。

「夜の公園って不思議だね。静かで人の気がしないから誰もいないように感じる。」

「そうだね。特にここは事務所の隣の公園と違って、大きな公園みたいだから隠れるにはちょうどいいかもね。」

俺はいったい何をしでかしてるんだろう。
お伽話でも王子様を連れ出したら、とんでもないことになるだろう。
そんな思いが俺を後悔させようとするので見ないフリ。
この後に待ってることよりも、今は目の前のことだけを考える。

「はぁー・・・。なんか急にお腹、空いてきちゃった。」

「え!?会場にあった料理食べてないの?」

「あれはお客様用だから僕は食べれないの。だからずっと食べてたしましまちゃんが羨ましかった。僕、朝から何も食べてないのに。」

「だからごめんってば。本当にごめんね。俺ばかり食べちゃってて。でも凄く美味しかったよ。」



夜の公園 2

「しましまちゃんがお腹いっぱいになったのなら、それでいいよ。羨ましかったけど食べたくないから。僕の嫌いな食べ物まで出してたし。」

「大丈夫?会場の料理ー・・・は持ってくるわけには行かないから、何か買ってこようか?」

「いいよいいよ。こんな時間に物を食べちゃいけませんって母様から言いつけられてるから、今日はもう何も食べる気起きないし。」

夜の公園に訪れた俺たちは、何処かで身を潜めて隠れることなく、近くにあった木のベンチに向かう。
もちろんキィちゃんのタキシードを汚させる訳にはいかないから、ベンチの上に自分のハンカチを敷いて、その上に座らせた。

「・・・そっか。」

さっきは迫る時間に焦って話せなかったこと。
今あの場から抜け出したとしてもそれは変わらないのに、何故かさっきよりもゆっくりお話が出来てる。そんな気がした。

「そう言えばエーチたちには会えた?俺は三人を見つけること出来なかったけど、キィちゃんはもちろん会えたよね?」

けどそんな中で、とんでもない事実をキィちゃんの口から耳にした。

「ううん、エッチたちとは会ってないよ。始めから呼んでないから。」

「なんで!?」



三人がいない理由

今日はキィちゃんの誕生日。
それは彼にとって一年で一番大事で大切な日。
365日の中で、たった一日しかない特別な日

「なんでって呼んだら絶対に来ちゃうでしょ。」

「当たり前だよ。だってキィちゃんの誕生日だよ!」

そんな日なのに、エーチたちがいない理由。来てない理由。テスト控えてるから来れなかったわけじゃなかった。
キィちゃんの誕生会に招待されたら、勉強そっちのけにさせてまで絶対に来てた。100%賭けてもいい。
なのにキィちゃんが呼ばなかったから来れなかったと知れば、俺だって黙っていられるわけがない。

「どうして?」

「・・・単純に来てほしくなかったから、だよ。あんな場所になんて。」

でもその理由は、誰も彼を責めれない。
主役が嫌がったのだから、責めれるわけがない。
キィちゃんなりの訳があるようだった。



何事もなかった空白時間

「帰ってきちゃったね。」

そうして俺はキィちゃんを連れてこっそりとさっきの中庭までやって来る。
抜け出してから戻ってくるまでにかかった時間は、50分も満たない程度のちょっとした時間。
これ以上、主役がいないのはマズイから、強制的に帰って来た訳だけど・・・。

「ね?言ったでしょ。ちょっとぐらいなら大丈夫だって。」

その間、何があったのだろう?と会場の誰かに問いたいぐらい、何も状況が変わっていなかった。

「それじゃあ僕、もう戻るね。今日は本当にありがとう。おかげで楽しかったよ。」

「キィちゃん・・・。」

「しましまちゃん、またね?また事務所とかで会おうね。絶対だよ。」

そう言って俺から離れていったキィちゃん。
いなくなってた彼が戻って来たというのに誰1人騒ぐことなく、いなかったことさえも分かってないのか何も変わらないまま。
これは誰のために開かれたパーティーだったの?
俺はその最後で、ずっと漂っていたこの奇妙な違和感にやっと気付いたのでした。



『CRO×QUAR』第26話を
読んでいただきありがとうございます!

5月はキィのバースデー
5月はキィのバースデー!
5月はキィのバースデー!!
・・・っという思いがとても強かったせいで
今年の5月はキィのバースデー以外の
話は入れたくなかったんです
なので計算しながら調整していたのですが
案の定、ミスっていたという(汗)

っというわけで、前編後編に分けた
キィのバースデー回
次回はクロカルメンバーとのお話です


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