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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.26 Birthday of Key (前編)(3/5)
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ホテルの中庭で 2

その時、だった。

「しましまちゃん、さっきから何してんのさ。」

「!」

自分の後ろからキィちゃんの声が。
聞こえた途端にハッとして振り向くと、そこには王子様の姿をしてるキィちゃんがいた。

「え、キィちゃん!?どうしてここに?」

「どうしてじゃないよ。しましまちゃん会場に来てから全然僕のところに来ないで出てったから、気になって追いかけて来たの。」

「え!?み、見てたの?」

「見てたよ、ずっと。しましまちゃんが来るなんて思ってなかったから。」

「そ、そうだったんだ。まだこっちには気付いてないって思ってたから、つい・・・。」

会場には大勢の人があんなにいたのに、それでもキィちゃんは俺の存在に気付いてくれてた模様。

「本当だよ、もう。ずーとずーとずーーーっとご飯食べてるんだもん。しましまちゃんはご飯食べに来ただけなのかなって思っちゃったじゃない。」

「ご、ごめんって。本当にごめんなさい。キィちゃんの邪魔しちゃいけないって思って。」

挙句に出てった自分を追ってきただなんてちょっとビックリ。驚いたけど、でも追って来てくれたおかげでやっとの思いでこうしてキィちゃんとお話しが出来た。



18歳になったら18禁解禁

よかった。キィちゃんと話せるタイミングあって。
俺が作ったわけじゃなくて、キィちゃんに作ってもらった貴重なこの時間。
残りはあと何分?何秒?
すぐそこまでやってきてるタイムリミットに焦らされる気持ち。
だけど絶対に無駄にはしたくなかったから、キィちゃんに言いたかったことを口にする。

「それはそうとキィちゃん、誕生日おめでとう。」

今日だけしか言えない今日だけの為のこの言葉。
キィちゃんからしたら今日は何度も聞いてるから何とも思わないかもしれないけれど、俺からしたら言いたくて伝えたくて仕方がなかったこの台詞。

「ありがとうしましまちゃん。これで僕も晴れて18歳になったよ。」

「そうだね。18歳になったから、始めにまず何したい?」

「うんとね、18禁解禁なったからエッチな本読みたい。」

「だからそれはダメだってキィちゃん。キィちゃんが高校生の間、他は許しても俺が許さないよ。」

「えー!」

けど18歳になってもキィちゃんは、キィちゃんのまま。
王子様の格好しててもキィちゃんのままで、なんだか凄くホッとした。



キィへ送る誕生日プレゼント

「で?」

「で?」

「しましまちゃんプレゼントは?僕に何か買ってきてくれたんじゃないの?」

「え!?」

しかしこれは読めなかった展開。
まさかキィちゃんから誕生日プレゼントをここで催促されるとは思わなくて、つい素で変な声が出てしまう。

「『え!?』って何?もしかして何も買ってないの?それを言うだけの為に来ちゃったの?」

だってさっきまであんなに凄い物を貰ってたんだよキィちゃん。
それと比べたら俺のなんてカス以下なモノ。
王子様なキィちゃんに渡すのが恥ずかしくなってきたから後日別に形で渡して誤魔化そうと思ったのに、それは許して貰えそうにないようだ。

「そんなわけないよ!ちゃんとあるよキィちゃんへのプレゼント!」

「本当!?うわ〜、僕すっごく嬉しい!なになに?どんなのどんなの?見せて見せて!」

「キィちゃん、ごめん。そんなに期待されると返って出しづらい・・・。」



質より値段より思い出作戦

しかも本当にそれが喜んでもらえるのは、これからのジャッジで決まる。

「なんかごめん。そんなモノをプレゼントにしちゃって。」

「・・・何これ?ペンダント?」

「うん。中に写真入れられるロケットのペンダント。」

俺がキィちゃんに誕生日プレゼントとして送ったのはロケットのペンダント。
物より思い出っという意味で、キィちゃんが一番好きな写真をここに入れてほしくて選んだアクセサリー。

「へー、そうなんだ。しましまちゃんにしてはお洒落なモノ選んだね。」

「本当にそんな物でごめん。」

「しましまちゃん何でさっきから謝ってるの?」

「いや、だってそれ安物だから。・・・ごめんなさい。」

「謝らないでよしましまちゃん。僕すっごく嬉しいよ、しましまちゃんがくれたロケットのペンダント。大事に使うね。」

きっと多分、キィちゃんに送られた品物の中で、これが一番安物だと思います。
でも彼はそんなことは一切気にしないで、本当に喜んでくれているようだった。



王子様でもいつものキィちゃん

「けどさっき高級車とか大きなエメラルドのアクセサリー送呈されてたでしょ。見てたけど凄い物貰ったよね。」

「僕も驚いたよ。おかしいよね?僕、運転どころか免許まだ持ってないのに。」

「おかしくなんてないよ。キィちゃん18歳になったんだから普通免許取り行けれるわけだし、これから時間あるときは取りに行ってもいいんじゃないかな。将来のキィちゃんの為を思って送られたモノかもしれないし。」

「将来の僕の為、か・・・。」

思えば彼は今までだって安いものでも普通に喜んでくれていた。
中には坊ちゃんなのに大丈夫だったかなって心配に思ったモノもあったけど、絶対に嫌がる素振りは見せなかった。
キィちゃんにとって高いモノとか安いモノとか、あまり気にしてないのかもしれない。

「キィちゃん、今日は素敵な格好だね。」

「本当!?僕、かっこいい?」

「うん、カッコいいよ。」

いくら王子様の格好していてもキィちゃんはキィちゃん。
南浦家の坊ちゃんとかじゃなくて、いつものキィちゃんが俺の目の前にいてくれる。
それだけで俺は凄くホッと出来て、凄く満足だった。



ピリオドは自らの手で

けどこの時間も、もうおしまいが迫ってるだろう。
キィちゃんにおめでとうって言えた。誕生日プレゼントまで渡せて喜んでもらえた。
それだけで俺は満足。
果たせたかった目的だって果たせたわけだ。

「さて、キィちゃん。そろそろ戻らないと。」

だから本日の主役であるキィちゃんを、あの会場に帰さないと。
ただでさえキィちゃんを抜け出させてしまったわけだ。
主役の彼がいつまでもいないなんて、そんなのいいはずがない。

「えっ、もう?」

「うん。会場まで送るよ。そしたら俺も帰るし。」

「えー!しましまちゃん帰っちゃうなら、もうちょっとお話してようよ。」

「ダメだよキィちゃん。お話しなら明日でも明後日でも、いつだって出来るでしょ?王子様は戻らなきゃダメだよ。」

俺だって本当はもう少し、もうちょっとだけでいいからキィちゃんと話をしたい。
でもそれはただのワガママ。
これ以上のワガママは、ただの迷惑にしかならない。



中庭の噴水

「さあ、戻るよ。キィちゃん。」

そう言って俺はキィちゃんに手を差し伸べる。

「・・・・・・・・・。」

その瞬間、中庭にある大きな噴水から水が勢いよく天に向かって吹き出した。
迫っていたタイムリミットは、これでおしまい。
まるで俺たちにそれを知らせるかのように。
なのに、

「ねえ、しましまちゃん。」

「ん?」

彼は今、どんな気持ちでそれを口にしたのだろう・・・。





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