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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.1 はじまりの話(2/3)
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挫折理由 2

「そうじゃなくても今の子の世代。俺がガキだった頃と比べると違いすぎるというか。なんだかやりにくい環境になったというか・・・。」

憧れた夢と、辛辣の現実。
それに耐えられなくなったから辞めることにしたんだ。
もう少しで夢が実現するその寸前でのリタイア。
カッコ悪くて惨めで情けないお話。
けど本当の話に嘘をついたってしょうがない。

「志摩・・・。」

そしてこれは慰めてほしくて言ったわけでもない。

「今もガキのくせに何で全てを悟ったような言い方してるの?志摩くん。」

「うっせぇよ・・・っ。」

けど、ここぞとばかりに真顔で罵ってきた兄貴にはアッパレだった。



なうなう

辛辣な現実と同じではないが、容赦なく冷たい言葉が飛んでくる。

「しかも人がご飯食べているときに、そんな暗い話するんじゃないの。メシがマズくなるでしょ〜?」

「話を振ってきたの確か、兄貴だったよな?」

兄貴にこんな話をしたのが何もかも間違っていたのだろう。
しかも、

「じゃあ志摩くんは今、就活困難なう♪内定危ういなう♪って言ったところ?」

「う゛っ。」

軽い弾みで言葉を武器に変えて、グサグサと人の心に刺してくる。
図星なだけに全て急所を突かれてしまう。



弟の分は兄のもの

あれだけあった料理の数々を綺麗に片づけた兄貴。

「ふーっ、ご馳走様でした♪あー、お腹いっぱい♪♪♪」

弟より身長低いくせに、俺よりも大食っぷりには毎回驚かされる。
そういえばしょっちゅう俺の分のデザートまで食ってたもんな。
ああ。その当時の頃を思い出した途端、ムカつきまでも蘇ってきたわ。

「ってあれ?俺が頼んでたマンゴープリンは?さっきまで確かここにー・・・。」

「ん?あぁ、これ志摩くんのだったんだ。ごめん、もう全部食べちゃった♪」

「なぁぁぁあああ!?このバカ兄貴ーーーッ!!!」

そして再来もする食べ物の恨み。
やっぱり兄貴は最低のままでした。



お詫びの代償

「まあまあ。お詫びにこれからいいところに連れて行ってあげるから怒らないで、志摩くん。」

「いいところって、なんだよ。」

「いいところはいいところ♪普通の人じゃ絶対に入れない場所だから期待してていいよ。」

な、なんだよ、それ。
まさかピンク色の怪しい遊技場に連れて行くわけじゃないだろうな?
流石に兄と二人で、そういうお店に行くのは勘弁願いたい。
でもちょっと期待してしまう単純な下心。
ほろ酔い中は、ちょっとのことでも暴走してしまう。
・・・溜まってるのかな?

「だからその代償だと思って。」

「代償って、勝手に人のもの食べたのは兄貴だよな?」



1+5+4+2のお会計

デザートも(二つとも兄貴が)食べ、一段落食休みをしたところで、そろそろお会計。
食事代は兄貴が奢ると言い、レジまで意気堂々と向かったのだが。

「あ。」

ここで兄貴の口から嫌な言葉が出る。
そして、

「ごめーん、志摩くん。慌てて来たものだからお金下すの忘れてた。代わりに志摩くん払ってー♪」

「なぁぁあああ!?このクソ兄貴ーーーッ!!!」

てへぺろ顔でお金を持ち合わせてなかったことを謝罪。
食事代の合計金額5680円+税は結局、俺が支払うことになるのでした・・・。



いいところ

「まあまあ。今のは後で返すから志摩くん怒らないでー♪」

返すとか返さないとか、まずそういう問題じゃない。
でも、この食事代は必ず返してもらわないと俺が気に食わない。

「ちゃんと返せよ。」

「分かったから。」

「絶対に返せよ。」

「分かったってば。」

けれど、

「それじゃあさっそくいいところに行こっか。」

その一言で最悪だった気分が単純な下心により、少し救われるのだった。



てっちゃん

それから居酒屋を後にし兄貴が向かおうとしている目的地を目指す。
その途中の交差点で信号が青に変わるのを待っていた時のこと。

(ん?)

同じ信号で青信号待ちしていた男子学生が、チラチラと兄貴の顔を覗こうとしていたことに気付く。
そしてその男の子は確信が持てたのか。
兄貴のスーツの裾を掴み、くいくい引っ張りながら、

「やっぱり、てっちゃんだった。」

「ん?あれ?アズ、なんでここに?」

と、兄貴のことをそう呼んだ。

(てっちゃん???)



知り合い?

兄貴のことを突然『てっちゃん』と呼び止めた男子学生。

「友達とカラオケ行ってた帰り。てっちゃんは、まだお仕事中なの?」

「これから事務所に戻るところだよ。仕事自体はもう終わってるんだけどね。」

どうやら二人は知り合いのようで、その子に気づいた兄貴も親しそうに話していた。

「ボクもついてっていい?」

「いいけど、アズも事務所に何か用事?忘れ物した?」

「ううん。てっちゃんについて行きたいだけ。」

「そっかー♪」

彼はいったい、誰なんだろう?



しまちゃん

「・・・てっちゃん、この人だぁれ?」

兄貴と知り合いだった男子学生。
一緒にいた俺と目が合い、また兄貴のスーツの裾をくいくい引っ張りながら尋ねてくる。

「ん?ああ、僕の弟だよ。志摩っていうんだ。」

「てっちゃんの、弟さん。」

「ど、どうも。初めまして。」

なんだろう、この男の子。
おとなしそうな印象なんだけど、ほわほわしてるというか、ぽわぽわしてるというか。
なんだ?この漂うオーラ。

「じゃあ『しまちゃん』だね。」

(ーーーッ!?)

可愛らしい上目遣いで『しまちゃん』と呼ばれただけで、ほろ酔った心が大暴走。
男子学生相手に胸がキュンキュン鳴ったのだった。



ホモ疑惑?

(俺、ホモだったのか!?)

そう思わず自分のことを疑ってしまう。
けど、この子の笑顔で胸がキュンとしたのは事実。
ズキュンとハートを打ち抜かれた気がしたのも事実。
これは納得せざる負えないのか?

「あ、兄貴?この子はいったい???」

とりあえず名前を。この子の名前が知りたい。
だから俺も兄貴に尋ねる。

「アズー・・とと。彼は西野 梓(にしの あずさ)。さっきまで友達と一緒だったからなのかな?いつもより機嫌がいいみたいだね。」

西野 梓くんというのか。
心のメモ帳が瞬時に男子学生の名前、梓の名前を記憶した。



笑顔の忠告

「なになに?志摩くん、アズに惚れた?そんなに気に入っちゃった?アズのこと。」

「ばっ!?ちがっ!?別にそんなんじゃねーし!!」

自分にホモ疑惑が浮上したのは、自分だけの秘密にしておきたい。
少なくとも兄貴なんかに勘付かれてたまるか!
だから必死こいて誤魔化したのだが、その必死さがすでにバレバレ。

「気に入ったのなら別にいいけど、変に手を出さないでね。アズは事務所の大事な商売道具なんだから。」

「え?」

事務所?商売道具?
ちょっと待って、兄貴。
それはいったい何の話だ!?



シャフ度のイメージで

(え?え?え?)

「それじゃあアズも一緒に行こうか。帰りは危ないから僕が責任もってタクシー拾って送るよ。」

「ありがと、てっちゃん。」

「こんな身近にオス喰い狼がいたなんて本当危ないから。」

「誰がオス喰い狼だー!!」

信号がようやく青に変わり、梓の肩を組んでスタスタと先を歩く兄貴。
って、ちょっと待て。ちょっと待て。お兄さぁーん!!
さっきの話は、まだ終わってない!

「待てよ、兄貴!なんだよ、さっきの商売道具って!?」

すると兄貴は後ろに振り向きながら、

「何ってー・・、お仕事。ビジネスの話だよ。」

と、答えるのでした。



胡散臭い兄

「ちょっとまてーーー!!!」

事務所?商売道具?ビジネスの話?
先に進む兄を追いかけ、もっと詳しい話を聞き出そうとした。

「兄貴。まさか如何わしい店に勤めてるわけじゃないだろうな!?」

「まさかー♪ついてこれば分かるよ。」

胡散臭さが漂う兄貴。

「これから向かうところ。さっき言ってたいいところと同じ場所だから。」

「え。」

怪しさ倍増。如何わしさ倍増。
もし本当に兄貴がそのような店で働いていて、恐らく未成年。どう見ても未成年の梓を働かせていたとしたら、俺が責任もって真っ先に通報してやろう。



ほろ酔い効果でオス喰い狼暴走中

でも、もしそれがガチだとしたらー・・。

(・・・。)

チラッと横目で梓を見る。

「?」

すると目を合わせて、ニコッと優しい笑顔を返してくれた。

(か、可愛い・・・。)

もしガチでそのような店に連れられて、梓を指名できるのなら、

(貯めてた諭吉さん数人飛んでも構わないな。)

と、良からぬ下心で妄想を膨らませてしまう俺なのであった。



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