≪ top ≪ main

CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
はじめから読むページから読むしおりから読む


Act.9 クロカル初合宿の話(中編)(2/3)
]  [目次へ]  [

経験不足の補佐 2

本来ここにいるべきであるプロデューサーの徹夜が、まだ来ていない。
それをエーチに伝え、頭を下げて謝る。

「そっか。てっちゃんまだ来られないんだ・・・。」

「本当にごめん。もっと兄貴としっかり連絡取り合っていたら、ちゃんと皆にも伝えられたかもしれないのに。」

「いいよいいよ。だって今こうしてる間も、てっちゃん、アリカ先輩の仕事で頑張っているんでしょ?大丈夫だよ、オレたち。ちゃんと分かってるし、それぐらいで嘘つきだなんて思わないよ。」

そうエーチは口にしてくれたものの、やはりどこか寂しそうだった。
お留守番を我慢して待ってくれている子供のように。


代わりにはなれない

(気にかかっていた不安を煽ってどうする!)

ここに今、兄貴が不在なのはどうしようもないこと。
経験不足がモノを言う。
兄貴の代わりに、自分がまだなれないこと。

「ごめんな。本当・・・、俺なんかで。」

それはどうしようもないということを。
不安が不安を呼び、不安が不安を生んで失くなっていた自信。


エーチの言葉

「志摩ちゃんダメだよ?『俺なんか』って言葉使っちゃ。」

そんなどうしようもなくなった志摩に、エーチは言葉を送る。

「オレたち、そんなことも思ってないよ。志摩ちゃんもいなかったら、オレたち今ごろ四人だけになってたわけだし・・・。だから今日は志摩ちゃんがいてくれたから嬉しかったし楽しかったよ。稽古はキツかったけど。」

「エーチ・・・。」

「だからダメだよ。『俺なんか』って言葉言わないで。余計に自信なくなっちゃうよ、志摩ちゃん。」

その言葉はあたたかく、この心に響く。
エーチはクロスカルテットのメンバーだけじゃなかった。
こんな役立たずな自分のことも、ちゃんと必要として見てくれていたんだ。


小さな約束

「志摩ちゃん。約束、してくれる?」

「え?」

そして差し出された小指。

「志摩ちゃんにもカッコイイところ見てほしいし、見せられるようになりたいから。」

エーチとの小さな約束。
でもそれはクロスカルテットとしての小さな願掛けの一つだったのかもしれない。

「志摩ちゃんもオレたちと一緒。これからどんなに辛くても、どんなことがあっても一緒にめげずに頑張っていこうね。」


徹夜からの連絡

それから直ぐのこと。
志摩の携帯電話にメールの受信音が鳴り響く。

「ん、兄貴からだ。」

それは待ちに待った徹夜からの連絡。
アリカの仕事がこの時間まで長引き、お酒の付き合いもあったようでやっと今終わったらしい。

「てっちゃんからのメール?」

「うん。早くても明日の朝には来れるってさ。あ、飲酒運転だけはしないよう返信しておかないと。」

一行だけに纏められたぶっきらぼうな文章。

『今日中にそっちに行けられなくてごめん』

どうやら自分は、また要らない心配をしていたようだ。
印象がいつだって最低な兄貴だから、余計な気を回してしまったのだろう。
徹夜だって徹夜なりに、こっちのことを気にかけていたことが分かる一行メールだった。

(・・・にしても兄貴から、こんなメールもらうのも逆に気持ちが悪いな。)


おやすみなさい

「今日はありがとうエーチ。それとごめんな。情けない話まで聞かせてしまって。」

「そんなことないよ。オレも志摩ちゃんと話せてよかったし。」

徹夜からの連絡をもらい、ほどよい時間を迎えていたことに気づく。
エーチもそろそろ眠たくなってきたようで、キリのいいところで自分から解放させた。

「志摩ちゃん。オレも何かあったら志摩ちゃんにも相談するから、オレなんかでよかったらまたお話聞かせてね。」

「・・・エーチ、『オレなんか』って言葉使ったらダメだったんじゃ?」

「え。あ、あれ?」

おやすみなさいと最後に言葉を交わしてー・・。

「あああ!なしなし!今のなし!あ、でも全部なしにしないで!オレなんかの部分だけなしにして!」



]  [目次へ]  [
しおりを挟む



BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -