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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.54 夏休み海旅行のお話(前編)(3/3)
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ラウンジにて

そうしてホテルに帰って行ったアリカは、海でボロクソに噂されまくっていた影響か。思わずくしゃみひとつ。

(この感じ、またアイツらか。)

そんな彼が今いる場所は、ホテル内からでも海を見渡すことができるラウンジに。
そこで待ち合わせていたようで。

「お待たせしましたアリカさん。遅くなってしまってごめんなさい。」

部屋で着替えたエヴァが彼の元へと再びやって来る。

「・・・シャワー浴びてたからだろ?」

「え?あ、はい。汗と潮風で体がベタベタしていて気持ち悪かったので、つい。」

「ついじゃねえよ、ついじゃ。部屋で着替えるっつってから、ここで何分待たされたと思って。」

「10分?」

「30分!ったく、腕時計してるのに、どんな時間感覚してんだよ。」

が、待ってる時間が長かった。長すぎたせいで不機嫌なのは変わらず。
むしろ待たされたせいで余計にブスッとしていた。



アイドルとして

「まあこっちも時間指定してなかったから別にいいけどさ。・・・俺も浴びてこればよかった。」

「なら全然これからでも、アリカさんも行ってきていいですよ。戻ってくるまで、俺もここでアリカさんのこと待っていますから。」

けど、それはそれ。これはこれ?

(あれ?でも今の状況をよくよく考えたら、俺よりもコイツの方がアイドルしてね?)

相手と自分の状態を。
見比べて比較して、ぽくぽくぽくちーんと考えた結果。

「・・・・・・15分。」

「はい?」

「いや、10分。やっぱ5分で戻ってくるから、ちょっとだけ待ってろ!」

「え?え!?そんなに急がなくて大丈夫ですよ。アリカさんもゆっくりいってきて下さい。」

間違ってるのは自分。
こんな状態でいつまでもいる自分。
アイドルとしての意識や自覚が足りない証拠?
そう考え抜いて考え直して、いくらなんでもそれだけは誰よりも負けるわけにはいかないと、改めさせられるアリカだった。



告げた通りの時間

それから5分後。で戻ってこれるわけがなかったので10分後。でも戻ってこれるわけがないので15分後。
エヴァが待つラウンジへ、アリカが最初に伝えた時間通りに、マッハに急いで戻ってきた。

「待たせて・・・ゼエゼエ。悪かったな・・・ゼエゼエ。」

「いえ。そんなに言われるほど俺、待たされてないです。絶対に俺よりもアリカさんが俺を待ってた時間のが長かったですし。」

そしておかえりなさい言われて深く吐いた一息。
いきなり乱れたペースを取り戻すかのように、自分を落ち着かせて席に着く。

「それより。せっかくラウンジにいることだし、何か頼むか?何なら奢るけど。」

「え。いや、いらないです。こういうとこのって飲み物1つだけでもお高いですし。」

「気にすんな。飲み物のひとつやふたつぐらい、てっさんに払わされた額と比べたら可愛いもんだから。」

そしてそしてずっとここで待たせてもらっていた席料として。
ラウンジにいるホテルスタッフの人を呼んで、ドリンクを2つ注文する。



時と場合を気を付けて

テーブルに並ぶ2つのドリンク。
1つはアイスティー。
1つはクリームソーダー。
前者はアリカで、後者はエヴァ。

「俺もアイスティーがよかったです・・・。」

「奢るっつってんのにメニュー表の金額見て頼む寸前で怯んで止めかけたからな。罰としてちゃんとお高いやつ選んでやったんだから、ちゃーんと飲めよ?」

しかしそれは本人の意思ではなく、アリカが勝手に選んで無理矢理注文した品物。

「いいか?エヴァ。目上の人に奢る言われたらそこは『いいえ』じゃなくて『ご馳走さまです』だからな。その遠慮が相手の好意を否定し、恥かかせて仇や失礼に至るケースもあるから。そこんとこしっかり覚えとけ。」

「・・・・・・はい。」

縦社会における暗黙のルールを解らせる為にも、先ずはそのクリームソーダーでお勉強させたのだった。



緑と白と赤

緑色の鮮やかなメロンソーダーに浮かぶ白のアイスクリームと添えられた赤いサクランボ。
ホテルのラウンジと景色の青い海のおかげもあり、普通のクリームソーダーが、とてもお洒落で値段相応な飲み物に見えてくる。

「美味いか?」

「はい。久しぶりに飲みましたけど美味しいです。ありがとうございますアリカさん。」

「そうそう、それであってるから。遠慮と謙虚の違い、気を付けろよ。」

だから最初は慎重に飲んだエヴァだったが、飲み進めていくうちに表情が朗らかに。緊張も解けていく。
それを見て、アリカもようやく一息。
飲み物ひとつ奢るだけで大変だったせいで、やっとホッとする。

「♪」

「・・・・・・。」

けどそんな彼を見続けていたら、隣の芝生が青く思えてきたのか。

「・・・俺もそっちにすればよかった。」

クリームソーダーの魅力に思わず惹かれてしまう。



間接チャンス到来?!

なので、

「よかったら、アリカさん。ちょっと食べます?」

エヴァからアリカへ。
唐突な展開はいつだって突然に。
そういうつもりで言ったわけではないのに、そういう流れになって困惑するアリカ。

「・・・・・・。」

「あ。こっちら辺、まだ口につけてないので大丈夫ですよ。」

アイスは確かに無事の部分あるけれど、それを掬ったロングスプーンには口つけていたでしょ?と。
エヴァがそれに気付いてるようで気付いてない。
だからこそ挑戦することに至れず、サクランボに手を伸ばして逃亡を謀る。

「・・・なら、こっち貰うわ。」

「あ!サクランボ・・・。それは楽しみにとっておいたのに。」

「いつまでもとっておく方が悪い。てか、意外とエヴァもそっちタイプだったんだな。」

せっかくのチャンスを自ら脱す。



ずっと覗き見してました

しかしそれは見送ったはずの2人を追って、気付かれないよう影で覗いていた朝陽にも見られてしまっていた。
そこで何を思い何に納得したのか。

「なるほど、ね♪」

そんな彼から不穏を過る一言が。

「どうかしましたか?アリカさん。」

「な、なんか今すげえ悪寒が・・・。」

「風邪ですか?」

「あ。いや、きっとまたイブかユウのどっちかが噂してるだけだと思うから。」

そしてそれだけがゾクゾクッとアリカに伝わる。
この旅行中で朝陽は何を企んだのか。
2人に気付かれないうちに、彼は楽しそうな顔をして、そっと皆がいる海へと帰って行ったのだった。



『CRO×QUAR』第54話を
読んでいただきありがとうございます

他の子はともかく
エーチの海パンだけは絶対にスク水
これだけは譲れない作者でごめんなさい


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