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CRO×QUAR
夢の続きを歩き出す彼らの物語
[アイドルグループ仲良しコメディ]


登場人物紹介
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Act.35 志摩とアリカの二人のお話(3/5)
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アリカとゲームセンターにて

一先ずこの話題は、彼のために置いていこう。
そんなこんなでようやくゲームセンターの中に入った2人。

「出たの先々週だからな。さすがにまだあるよな・・・。」

プライズコーナーにビデオゲームコーナー、メダルコーナーにプリント倶楽部コーナーなどなど。様々な種類を扱っている中、どこかへ向かう前にアリカから志摩へ。

「志摩さん。悪いんだけど、これ全部小銭してきてくれない?」

「へっ?」

両替のおつかいを頼んできたのだが、手渡された金額に驚き、思わず変な声が出てしまう志摩。

「全部って、え!?これ全部、小銭にするの!?」

「だからそう言ってんじゃん。全部100にすると店の人に迷惑かけるから500と100、7対3でよろしく。」

「えー・・・。せめて半分じゃない?だってすごい量になるよ?」

「いいから何も言わずに行ってきて!諭吉さん1人で足りるかどうか、まだ分からないんだから!」

けど何を言ってもアリカの考えは変わらず。仰せの通りに従い、両替機と向かった。



偉人の言葉は絶対的

(うわぁ・・・。こんな量の500円と100円、店のレジ以外で初めて見る。)

じゃらじゃらと片方の手の平に入りきらないほどの硬貨を持って戻る。

「志摩さん、こっちこっち。見つけたからこっちきて!」

すると誘導されるがまま彼のあとへ連れて行かれ、ビデオゲームでもメダルコーナーでもなく、一心不乱にプライズコーナーのUFOキャッチャーの前にたどり着く。

「ハイエナは出来ねえか。・・・チッ。最初からやってくしかないか。」

そうして両替したての硬貨を次々と情緒なく、チャリンチャリンと連続投下。
たかが500円玉を。たかが100円玉を。
あんなにも豪快かつ贅沢に使う彼を傍から見て、志摩はある偉人の言葉を思い出す。
『UFOキャッチャーは貯金箱である』と。

「あぁ、くそ!全然取れねえ!」

まさに今その通りでいるアリカは、それを知っているのだろうか。
なんでそんなに必死になっているのか分からなかった。



アイドルしてないアリカもアリカ

「お!きたか!?・・・あああ、またダメだった。」

UFOキャッチャーに一喜一憂して無我夢中なアリカ。
その姿は、画面の向こうにいるアイドルとしての彼ではなく、まるでそこら辺にいるただの男の子だった。

(アイドルしてるアリカも、アイドルしてないアリカも1人の男の子であることに違いないんだけどね。)

そんな光景を見れていたのは束の間。

「志摩さん、ちょっと手伝って!位置見るの手伝って!」

「ええ!?」

微笑ましく思えていたのは志摩だけ。
戦場となっていたアリカの戦いに無理矢理参戦させられ、援護を送る羽目となる。

「志摩さん、ここ?ここ!?」

「そう!そこ!」

「あーッッッ!またするって!するって抜け落ちてったーーー!!!」



大きな縫いぐるみをとるのは難しい

「あーもー!ポンコツキャッチャー!!全然取れないじゃん!!!」

このUFOキャッチャーに陳列されているのは、40cmの大きめな可愛らしい羊の縫いぐるみ。
アリカはその縫いぐるみに、どれだけ魅了されたのか。

「アリカ。これはもう諦めて他の狙った方がいいんじゃない?ほら、あっちのとか。こっちよりも取れやすそうだよ。」

「バカヤロウ!諦めたらそこで試合が終了するだろが!俺の戦いはまだこれからだ!」

「全然取れる気配ないのに、何カッコいいこと言ってんの!?」

意地に支配されて辞めるタイミングを完全に失ってしまっている。
始めてから今の今までの間で、いったい何十枚の硬貨を消費したのだろう。
苦戦続きの惨敗。零喜一憂に堕ちた闇の中、一瞬でも見えたその光を信じて彼は戦い続けた。

(それにしてもこの羊、どっかで見たことあるんだよな。・・・どこだっけ?そんなにメジャーなブランドだったかな?)



作者は一喜零憂がいいです

そしてその転機は突然訪れる。
今までポンコツだったUFOキャッチャーが急に仕事を思い出したかのように、1つの縫いぐるみをガッチリキャッチ!
そのままゆっくりゴールへと運び、プレイヤー・アリカを勝者へと導いた。

「キターッ!!!」

やっっっとのことで縫いぐるみの羊をゲットしたアリカ。
憂えあれば喜びあり。薄暗い天気が隅々まで一気に晴れ渡り、雲ひとつない快晴のように彼を満面な笑顔を見せる。

「やっば!なにこれ?はははッ、めちゃくちゃほわほわすぎるだろ!このこのこの!」

その縫いぐるみをぎゅっと抱きしめてはグーでポコポコ殴り、大いに喜ぶアリカを見て、志摩も取れて良かったと心底ホッとした。

(使った合計金額の現実は見ない方が幸せだな。絶対、普通に買った方が安いから。)



志摩の引っ掛け

それにしてもあの羊、アリカにしては可愛すぎじゃないか?
戦っていた間も思っていたが、なんでこの縫いぐるみをあんな必死になってまで欲しがってたんだろう。
彼の趣味・好みを悪く言うつもりはないが、それはどちらかというと男より女性向きな気がする。

(いや、でもな。アリカに限ってそんなこと・・・。けど万が一って言葉もあるしな。)

一瞬でも抱いた疑いが志摩の心で増すばかり。
まさかという嫌な予感に不安を覚えさせられる。
そう。チェリーストーンナンバーワンを誇るアリカ様に限って、事務所の契約を違反するだなんてあり得ないし、あってはいけない話だ。
なので志摩はこの疑いを晴らそうと、問い掛けることにした。が、

「良かったねアリカ。無事にとれて。」

「あぁ!志摩さんも手伝ってくれてありがとな!」

「好きな子にプレゼントしたら喜びそうな羊さんだね。」

「だろ?」

まんまと引っ掛かったアリカの答えは、白くまっさらにすることなく、真っ黒に淀んでいたのだった。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」



否定しないアリカ

恋愛禁止な事務所に所属しておきながら、アリカに好きな人がいると知った志摩。

「ちょっと待ってアリカ。何?アリカって好きな子いるの!?」

「ばっっっか!そんな大きな声で言うな!」

驚きだって当然隠せるわけがない。
こんなスキャンダルものの話題、世間に流れてしまえばチェリーストーンも一貫の終わりだ。

「と、とにかく用はこれで終わりだから。さっさと車に戻ろうぜ志摩さん。」

「待って待って。勝手に話を終わらせないで!」

アリカの答えが流れで言ってしまった偽りであってほしい。
だから志摩は彼の口から『違う』と聞きたくて、否定を求めた。
しかし、

「お願いアリカ!違うなら違うって言って!お願い!」

「・・・・・・っ。」

「アリカ!」

何を言ってもどんなに強く問いただしても、否定を否定するかのように、アリカは首を横に振ることはなかった。



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