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サンフラワーへようこそ

同じアパートに住む大学生たちのお話
完結][大学生][季節柄][コメディ]



EP.9 秋風舞う頃に(3/3)
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二年前の二人の会話

会話は続かず、そこまでで一度ストップ。
あそこから連れ出せれたのはいいが、特に話したいこともない。
なのでレイからヒナへ話を振られない。
だからヒナからレイへ話を振ってきた。

『あの・・・、約束って?』

『は?』

『だってさっき約束って。』

でもそれはさっきレイからヒナへ話したはずの話題だった。

『俺とお前。今まで話したことあったか?』

『・・・あんまりない。』

『あんまり話してない俺とお前。どうやって約束交わせれたと思う?』

『・・・分からない。』

『さっき俺がお前に話したこと。もう忘れたとか言わないよな?』

『え?えっと・・・、ごめんなさい。苦いの苦手で『そこじゃない。』



二年前の二人の会話 2

そういうわけで改めて。
もう少し詳しく説明をし、やっとこの状況を理解してもらう。

『勝手に連れだしたって言っただろ?だからお前と約束なんて最初からしてない。』

『あ、さっきのそういうことだったんだ。』

『気づくの遅い。遅すぎる。』

『ごめんなさい。もしかしたら僕だけが覚えてなかったのかなって思って。』

どうやらヒナは『してない約束』を不安になっていたようだ。

『お前って意外と変な野郎だな。俺よりいい大学行ってるくせに。』

『そんな風に言われるのキミが初めてだよ。・・・それに学校はあまり関係ないと思う。』



二年前の二人の会話 3

『でも、そっか。ありがとう。助けてくれて。』

レイは近くにあった紙ナプキンを手に取り、

『別に助けたわけじゃないんだけどな。ほら。』

家を出るとき、一緒に持ってきたボールペンで自分の携帯番号を書いてヒナに手渡す。

『勝手に俺を理由にしていいから。嫌なら嫌だってちゃんと断ってくれ。』

『え。でもそれじゃあキミにー・・・。』

『お前も先輩も。いい加減、近所迷惑だってことに気づいてほしいんで。』

『・・・ごめん、なさい。』

そこには困ったことあったら連絡していいという意味も込められていた。
ヒナが自分の課題以外にも他に理由があれば、断れなくても断れるようになれるだろう。



二年前のしてない約束

それからまたある日。
ドンドンドン、ピンポンピンポンと向こうの部屋から煩い音が。
けどなるべく早く対応してくれるようになり、煩い音だけは直ぐ止むようになった。

『・・・課題あるので。』

と。
いつものように一度は断ったけど、また手の平を返してきたので、

『本当にごめんなさい。れ・・・レイと約束、してるので。』

してない約束を理由にして、はっきりと断る。
けど口だけでは危なっかしいので、こっちからも出迎えて手助けを。
その場凌ぎだったが、それを本当にしたら先輩三人は諦めて帰って行った。



二年前の呼び方

そして二人はその日を栄えに、一緒に勉強することが多くなった。

『なんで『ヒナ』?』

『多分、日向だから『ヒナ』だと思う。こっち来て気が付いたらよう呼ばれることが多くなってたあだ名。小鳥の雛みたいでいいよね。』

『郭公に落とされそうなあだ名だな。』

『その言い方ヒドイな。僕もちょっと気に入ってるのに・・・。』

本人はその名が、どうして付いたのか分かっていなかった。
もちろんレイも知らない由来。
彼のあることが原因で付けられた名だということを。

『皆にそう呼ばれてるから呼べって言われても、気が引けるな。』

『いつまでも『お前』じゃ嫌だから。ダメ?』

『・・・ヒナ、でいいのか?』

『うん。』



二年前の居留守

そしてまた別の日。
今日はレイの部屋で勉強していた時、

『!!』

いつもの騒音が、またこっちまで聞こえてきた。
ヒナは『出ないと・・・』と零し、いつものように対応しようとしたから、レイが抱えて阻止する。

『ストップ。行かなくていい。』

『・・・でも。』

『部屋の鍵、ちゃんと閉めてきたんだろ?なら出ることない。』

一人ではなく、二人だったせいか。
今日のは別の感情まで覚える音がしており、掴む腕の力も無意識に強くなる。

『大丈夫だから、このままおとなしくしてろよ。』

『このまま・・・、で?』

いつにも増して続いた音と罵声は、暫くしてからようやく止み、やっと静かになった。

『確かにこれだけ煩いと近所迷惑だった、ね。・・・今までごめんなさい。』

『それは分かってもらえたようで何よりだな。』

『でも、もう大丈夫だからありがとう。腕・・・、そろそろ離して?』

『ん?あぁ、悪い。』



二年前の雨の日

春が過ぎて、夏が過ぎて、秋の長雨が続いた日。
ただの偶然が必然を引き寄せ、それを運命付けたかのようにレイは見てしまう。
一人の女が一人の男にフラれた瞬間を。

『!?』

ザーッと雨が降る中、頬を引っ叩く乾いた音と共に。

『ヒナくん、最低ッッッ!!!』

そう吐き捨てて行ったのは女の方。
残された男は手から離した傘を拾わないまま呆然と遠くを見つめていた。

『おい!大丈夫か!?』

その一人の男というのはヒナのこと。
レイは慌てて駆け寄り、これ以上に彼が濡れてしまわないよう自分の傘下で庇う。

『平気。・・・大丈夫だから。』

『いや、だけど!』

『大丈夫だよ。』

そしてヒナは、そう答えたのでした。

『・・・いつものことだから。』



続きは次回で

「・・・い。・・・んぱい。レイ先輩?」

「!」

ユーキに呼ばれて、昔話から我に返るレイ。
気付けば外が夜になっており、どれだけ長く話し込んでたのか改めて思い知る。

「そろそろ帰りませんか?外、もう真っ暗です。」

「あ・・・、あぁ。悪いな、長く付き合わせて。」

「いえ、大丈夫でした。もうちょっと聞いていたかったですけど、今日も課題があってあまり遅いと、その・・・。」

「本当に悪かったな。長く付き合わせて。」

そして二人は、また揃ってサンフラワーへ帰宅した。

「レイ先輩って本当にヒナ先輩のこと好きなんですね。」

「・・・・・・・・・悪いか?」

「いえ。むしろ羨ましく思えました。」



こちらも次回で

サンフワラーに着くと、

「二人ともお帰りなさい。」

「ただいまですヒナ先輩。レイ先輩も今日はありがとうございました。」

「ん。」

たまたま外に出ていたヒナに出迎えられ、ユーキもレイも自分の部屋へ帰って行く。
その時、

「待って、レイ。」

レイだけを呼び止めたヒナ。

「どうした?なんか用事か?」

「・・・やっぱ、なんでもない。」

明らか様に何かを言いたそう。

「ん。なら、またな。」

「あ・・・、うん。」

でも何も言ってこないから、触れない振らない拾わないレイ。
自身と一緒に、まだまだ耐えさせたのでした。



「サンフラワーへようこそ!」の第九話を
お読みいただきましてありがとうございました。

どちらも次回までお預けです


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