≪ top ≪ main

サンフラワーへようこそ

同じアパートに住む大学生たちのお話
完結][大学生][季節柄][コメディ]



EP.10 恋しくて触れたい温もり(1/4)
]  [目次へ]  [

二年前の喫茶店

二年前の話の続き。

『何飲む?』

『・・・苦くないのなら、なんでもいい。』

『ん。じゃあホットとー・・・、ココアで。』

雨を凌ぐため、最寄りの喫茶店に避難したヒナとレイ。

『ん?どうした?』

『・・・なんでもない。』

今回も前回と同じカウンター席で。
でも飲み物は冷たいのじゃなくて、温かいので冷えた体を温めた。

『あ、ココア美味しい。』

『苦くないだろ?』

『うん。でもコーヒーをメインに扱う喫茶店でココア飲むとは思わなかったな。』

『苦くないなら、なんでもよかったんだろ?』

『・・・うん。レイって結構、意地悪だね。』



二年前の喫茶店 2

ヒナが女性に引っ叩かれたシーンを思い出すレイ。
片方だけ赤く染まった頬が気になり、そっと手の甲でそこに触れる。

『!』

『あ・・・。』

が、その瞬間にビクッと怯えられ、距離を置かれてしまう。

『悪い。気になって、だな。』

『レイが気にすることじゃないよ。いつものことだから。』

正直、触れたくもなかった話題にも触れた。

『さっきの人『誰とも付き合う気がない』ってフっておいてか?』

『・・・聞かれてたんだね。』

この距離以上に離されるかもしれない。
そんな不思議な気持ちに怯えながら。

『何がいつもなんだ?』

『何もかも、だよ。』



二年前の気持ちの行方

『・・・だから僕は、もう終わらせることしか出来ない。』

この気持ちは何?

『ごめんね。こんな最低な野郎だってこと今まで黙ってて。』

この感情は何?

『いや。そんな風には思わないが。ヒナって、やっぱ変だよな。』

聞かされたのは、ヒナの昔話。

『昔、一人の女の子を不幸な目に遭わせた当然の報いだから。』

離れることがあっても、縮まることがないこの感覚は何?



一年前の春

それから冬を越えた春。
上の先輩が卒業と共に退去して、新しい一人の住人が202号室に引っ越してきた。

『オレ、ユーヤっていいます!よろしくお願いします!』

煩いのが消えたと思ったら、また煩いのがやって来る。
けどそいつは年上相手でも人見知ることがなく、あの三人の中で一人年下だった先輩が一番上となり、一日も満たない時間で打ち解けた。

『新しい人?どこにいるの?』

『こっちこっち。外出て来いって外。』

『?』

だから101号室へ挨拶に向かった時、その先輩に企まられたのだ。
今まで断りまくった仕返しとして。

『必殺!千年殺しーーーッ!!!』

『!?!?!?』

ヒナの穴に凄く酷く痛い浣腸を喰らわせた。

『・・・ッ!・・・ッ!・・・ッ!』

『おぉ。某ラーメン忍者の漫画を物真似てみたけど、こんなに綺麗に決まるとは思わなかった。』



一年前のユーヤとヒナ

『ダメ!ヒナは、これからオレの課題見ることになってんの!コンパなんて行ってる時間ないの!』

『結局、お前そっち側につくのかよ・・・。』

『だいたいヒナに頼っちゃダメだよ。そういうの、よくないよ!だから彼女が出来ないんだよ。』

年が変わっても相変わらず一番上になった先輩がヒナを誘いに来たが、ユーヤが止めに入る。

『い〜い?面食い思考は女子も男子も一緒。可愛い子をホイホイするように、カッコイイ子にホイホイしたいんだから、ヒナいないほうが成功率高いって。』

だからそこに『してない約束』がなくても、もう大丈夫になった。
ユーヤのおかげで、それからヒナが誘われることは二度となくなったのだ。
そのたった一回だけで。



一年前のユーヤとヒナ 2

結局ユーヤが一番懐いてたのはヒナだったようだ。

『ってことでヒナ。課題オレの部屋にあるから、またー・・・。』

『嫌。ユーヤの部屋この間、すごく散らかってたから。』

『あ、あれはたまたまだって、たまたま。すごく課題あった日だったし、5分くれれば少しマシになるから。』

『たまたまでも嫌!ちゃんと掃除ぐらいしっかりして!』

あんな初対面だったせいか。
ヒナもいつの間にかユーヤと打ち明けていて、一緒にいることが日に日に多くなり、

『・・・じゃあヒナの部屋で課題やってもいい?今回のは本当に教えてもらいたくて。』

『でもユーヤって僕に教えてもらうほど成績悪かったっけ?』

『教えてよ教えて〜!オレはヒナに教えてもらいたいのー!』

『もう、分かったから。しょうがないな。』

自然に笑顔も増えるようになった。
レイに出来なかったことを、ユーヤは平然と瞬時に安々とやり遂げていく。



一年前の夏祭り

先輩は就職活動で忙しいから除け者にユーヤがさせて、三人で夏祭りへ行くことになった夜。

『ヒナなら絶対似合うと思ってオレが選んだんだー。レイの目から見てどう?似合ってるでしょ?』

『この間、一緒に買い物行ったときユーヤと店員さんに煽てられて、せっかくだからつい買っちゃって・・・。去年この付近でお祭りあったこと知らなかったし。』

『・・・随分と気前のいい客だな。』

浴衣男子一人に私服男子二人。
ユーヤが調子こきまくって、あっちこっち出店に寄りまくってたから、その面倒を見ていたヒナは見るからに大変そうだった。けど笑顔が最後まで絶えなくて・・・。
そんな二人を見るたびに、レイの中で芽生えてた感情が濁んでいく。

『どうしたの?レイ。さっきからずっと黙ったまま。どこか調子悪い?』

『・・・気のせいだろ。』

それはいいことであるはずなのに。



一年前の秋

夏が終わり後期の講習が始まった秋。
ユーヤが実習合宿の関係で少しの間だけサンフラワーから姿を消し、どれだけ彼が煩い奴だったか静かになってから思い知る。

『随分と変わったよなヒナ。』

『そう?・・・と言っても何だかんだユーヤより一つ年が上だからね。しっかりしないとって思って。』

『初めて会ったとき、死んだ目をしてた奴だったのにな。』

こうしてどちらかの部屋で一緒に勉強するのも随分と久しぶり。

『それ言われると反応に困る、ね・・・。去年の僕は嫌なこともちゃんと断ることが出来なくて、本当にダメダメだったから。』

『ユーヤのおかげ、だな。』

『レイのおかげでもあるんだよ。僕が今こうしていられるようになったのも。』

『俺は別に何も・・・。』

そんなヒナだけど、きっと根本は変わってない。
今回も触れはしなかったが、また頬が少し赤く腫れていたことを。
あれからも時々、見かけていたが、レイの目はその度に見逃さなかった。

『本当に、ありがとう。こんな僕と一緒にいてくれて。』



一年前の気持ち

ユーヤがいなくなってから数日が経ったある日の夜。

『ユーヤ、今度の日曜日に帰ってくるみたい。』

レイの部屋にて、また一緒に課題を進めていた時のこと。
そうユーヤの情報をヒナの口から知らされる。

『・・・・・・・・・。』

何故だろう。
ユーヤが帰ってきたら、ヒナはまた彼の面倒に付きっ切ることが予想しなくても分かったからだろうか。

『・・・ヒナ。』

それが嫌だとハッキリと分かり、心を焦らされた衝動と感情により、

『え!?れ、レイ!?え?な、なに?いきなりどうした、の?』

ヒナの気持ちを無視して、そのまま彼を押し倒した。
もう妬んでばっかな、この気持ちに耐えることが出来なくて・・・。

『俺はー・・・。』



]  [目次へ]  [
しおりを挟む


BL♂GARDEN♂BL至上主義♂
2015.05start Copyright ちま Rights Reserved.
×