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サンフラワーへようこそ

同じアパートに住む大学生たちのお話
完結][大学生][季節柄][コメディ]



EP.9 秋風舞う頃に(2/3)
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二年前の初めまして

それはユーキもユーヤもサンフラワーに越してくる前の話。
ヒナもレイも引っ越してきたばかり。
その頃のサンフラワーには、その二人以外にも住人が三人いた。
全員が全員、違う大学や専門学校に通っており珍しい話ではないが、なんだか新鮮な環境。
けどレイは自分から他人と積極的に関わるタイプじゃないから、挨拶に回ったのも越してきてから少し経った後。
ある日、年上の先輩に集められた時、その先輩が代わりに紹介した。

『コイツは103のレイ。ヒナと同い年の奴だ。ほら、お前ら挨拶しろ。』

『よろしく。』

『・・・101の日向です。よろしくお願いします。』

ヒナとレイが初めて会ったのも、この時だった。

『オレたちこれからコンパなんだ♪ヒナいると女子のレベルも上がるからさ、レイも来いよ。運良ければお前も童貞から卒業、おさらば出来るぞ。』

『いえ。俺、女には興味ないんで、そういうの結構です。』

『『『・・・え゛。』』』



二年前の二人の話

その時の挨拶のせいで、レイはあまり他の住人と関わらなかった。
お互いに良い印象ではなかったのだろう。
おかげで静かに課題に専念出来て、それはそれで不満がなく、むしろ満足感があった。

(・・・・・・。)

外から聞こえてくる騒音を除いて。

『オイ!ヒナ、出てこいッ!!』

ドアを強く叩く音と呼び鈴を連続で鳴らす音が、こっちまで煩く響き、せっかくの集中も途切れてしまう。

『お〜、やっぱりいたいた。』

あっちもあっちで、そのまま出ないわけにはいかなかったのだろう。

(無理矢理、出させておいて何言ってんだか・・・。)

『週末またコンパやるんだ〜。お前も来いよ。わざわざ枠あけてやったんだからさ。あ、でも費用はもちワリカンな。』

『・・・課題、あるので。』

『聞いたぞ〜、お前。また女フったんだってな。』

『最低だよな、コイツ。ヤッたらポイッてか?』

『いいよな〜。モテる男は選びたい放題の遊びたい放題で。』



二年前の二人の話 2

手のひら返しの声が、ひどく耳障りだった。

『・・・分かりました。』

『おー!さっすがヒナ!モテる男は違うね!』

『オレたち本当、お前と知り合えてよかったわ。』

(断り切ればいいのに、何やってんだが。)

でも日に日に聞いているうちに、それは断れないんだと理解していく。
だから夏を迎えたある日、また向こうの部屋から聞こえてきたので、

『すみません。これから俺、そいつと出かける約束してるんで。』

『え。』

『ほら、行くぞ。』

先輩三人を差し置いて、そこからヒナを無理矢理にでも連れ出した。
もちろんそれはレイが勝手に作った交わしてもない約束。

『・・・・・・。』

この手に引かれるまま、大人しく後をついてきてくれたのが幸いだった。



二年前の二人の話 3

とは言え、いきなりのことだったので場所が特に思い浮かばず、アパートより少し離れた喫茶店で暫し時間を潰すことに。

『何飲む?』

『なんでもいい。』

『・・・アイスコーヒー二つで。』

そしてカウンター席にて男二人、肩を並べて座る。

『ほら。お前の分。』

『・・・あの、お金。』

『いらん。こっちが勝手に連れだしたわけだから気にすんな。』

『・・・ありがとう。』



二年前のアイスコーヒー

カウンターのテーブルに並ぶ二つのアイスコーヒー。
一人は何も入れないで、そのまま。
もう一人はガムシロとミルクポーションを一つずつ入れても、まだ合わなかったようで。

『・・・・・・。』

さらにミルクをワンプラス。そしてガムシロを入れようか入れないか少し悩んで結局ワンプラス。
同じアイスコーヒーなのに、まったく別の飲み物へと変化していく。

『何してんだ?』

一部始終見ていたレイは引きながら、訊かなくても分かった答えを敢えて尋ねる。

『だって苦い、から。』

『コーヒーだからな。』

『うん。・・・コーヒー苦い。』

『苦いのダメだったのなら始めに言えよ。それ、なんでもよくないだろ?』

『・・・ごめんなさい。』

そしてやっと飲めれるように調節できたので、ちょっとだけホッとした表情をしたヒナだった。



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