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サンフラワーへようこそ

同じアパートに住む大学生たちのお話
完結][大学生][季節柄][コメディ]



EP.9 秋風舞う頃に(1/3)
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既成事実の後遺症

後期の講習が始まり、服装も長袖にチャンジして、金木犀の甘い香りが漂う10月。

「じゃあ二年の先輩とデキてるっていう話、本当じゃなかったんだ。」

「ただの噂話を信じないでよ。その人にも迷惑にしかなってないんだよ。」

「え?だって聞いた話じゃ・・・。」

前期があれだけ忙しかった課題や実習の多さが身に慣れてきたのか。
バイトが出来るほどではないが、ほんの少しだけ時間に余裕が持てるようになったユーキ。

「・・・だってその人。他に好きな人、いるんだから。」

友達とお喋りをしながら、ゆっくりと大学から帰って行く。



アパート以外でバッタリと

そしてユーキは寄りたいところがあったため、駅で友達と解散。
信号渡って繁華してる商店街へと向かい、本屋さんで文房具を物色していると、

「あれ?ユーキ?」

聞き覚えありまくってる声に呼ばれ、ハッと我に返る。

「レイ先輩!」

そこには、なんとスーツ姿のレイが。
アパートやその付近以外で鉢合わせるのも珍しく、なんて偶然!

「奇遇だな。こんなところで会うなんて。」

「今、ボクも同じこと思ってました。本当、すごい偶然です。」

ネクタイを少し緩めさせており、そこにいつものラフさを感じさせるが、いったい何をしてたのだろう?

「合同企業説明会の帰り。」

「就職活動、真っ最中だったんですね。」

そんな新鮮なレイを見て、心が落ち着かないユーキはソワソワした気持ちでワクワクと嬉しそうな顔で話し込む。

「院に残るほど金も夢もないしな。」

「レイ先輩は、えらく現実見てるんですね。」

そして立ち話もなんだから。
ユーキもレイも買う物を買い、本屋を後にして最寄りのチェーン店な喫茶店へと寄り道した。



喫茶店にて

「コーヒー屋さんって、コーヒーだけじゃないんですね。」

「は?」

ブレンドにアメリカン、ウィンナーにエスプレッソ。アイスにラテにモカにオレにカプチーノなどなど。
カタカナだらけのメニュー表に、ポカーンと口を開けるユーキ。

「すみません。今までハンバーガー屋ぐらいにしか寄り道したことなくて。こういう喫茶店に入ること自体、初めてでして。」

「そうだったのか。」

なんとなく商品名に見覚えあるような、ないような?どれがどういうコーヒーの飲み物なのか分からずにいたので、

「飲めれそうなものなら、なんでもいいか?」

「はい。出来れば、あまり苦くないのがいいです。」

代わりにレイがユーキの分までチョイスすることに。

「じゃあブレンドとココアで。」

「レイ先輩って意外と意地悪なんですね・・・。」



喫茶店のココアは美味い!

「コーヒー屋なのにココアって。そこまで子供扱いしないで下さいよ。」

「なんでもいいんじゃなかったのか?ココア苦くないぞ。」

お代もレイが持ち済ませた後、そのまま注文した商品が出てくるのを待つ。

「文句あるなら飲んでからにしろ。その後ならいくらでも聞くから。」

そしてホットコーヒーとホットココアの二つの飲み物が乗ったトレーを持ち運び、空いていたカウンター席に肩を並べて座った。

「あ、あれ?家で飲むココアより甘くないのに、美味しい!」

「で?さっきの文句、なんだって?」

「レイ先輩って結構、意地悪なんですね・・・。」



喫茶店にて 2

「ヒナと同じようなこと、ユーキもするんだな。」

「え?」

そんなやり取りに柔らかい表情を見せたレイ。
ヒナとの昔話の思い出話をユーキに聞かせる。

「アイツも苦いのダメだからさ。ココア頼んでやったら文句ありそうな顔してた。」

「そりゃコーヒー屋でココアですから、ねぇ。」

「ユーキのようには言ってこなかったけどな。」

そんなお惚気のような話は、そこでおしまい。
オチというオチが分からないまま終わる。
その最後に砂糖なしミルクなしのコーヒーを口にして、一息ついた。

「あれ?レイ先輩、ブラック平気なんですか?苦くないですか?」

「今日は欲しがってきそうな奴いないしな。入れる必要ないから平気だ。」

「え???」



一門一答

せっかくレイと二人なので、これを機会に知りたいことをちょっと訊いてみよう。

「そういえばレイ先輩って、なんで女性が苦手なんですか?」

っということで。
ユーキからレイへ質問ターイムが始まる。

「苦手じゃなくて、嫌いなだけだ。」

「どうしてですか?」

実は初対面の頃から、ずっとずっと気になっていた話。
今の今まで訊ける機会があったかもしれないが、その機会でも話せれなかったので訊いてみることに。
するとその答えは複雑、

「・・・面倒。」

「へっ?」

ではなく、いたってシンプルだった。

「女は面倒だから嫌い。興味ない。ただそれだけだ。」



一問一答 2

「そうだったんですね。ってことはー・・・。」

そしてお次の質問。
これも初対面の自己紹介で気になっていた話。

「レイ先輩は、やっぱり男の人が好きなんですか?」

「待った。何故そうなった?」

「なんとなく、です。」

女性は面倒だから嫌い。
そこまでハッキリ言われると、やっぱりそういうことに繋げて思えてしまう答え。
だって女性と男性しかいない大まかな世界で、その前者を嫌いだなんて堂々と言うのだから。

「安心しろ。そんな野郎じゃないから。」

「そうなんですか?」

「ま、まぁ・・・な。」



一問一答 3

(レイ先輩、正直だなぁ。)

最後にもう一つ。
これも気になっていた話。
けれどこれは最近知ったお話で、さっきの二つよりも訊きたかった質問。

「じゃあー・・・。」

だからこそ訊くのにも勇気がいた。

「ヒナ先輩のこと、は?」

「!?」

いきおいの流れで持って行けた話。
まさかユーキから問われるとレイも思ってなかったようで、思いっきり咽てしまう。

「ゲホコホ・・・ッ。」

「すみません。そのユーヤに教えてもらっちゃいまして。それで、その、あははははは。」

「そ、そうか、」

お互いに染めた赤い顔。
顔を合わせず、コーヒーカップやマグカップを見つめたまま。

「・・・き、だって。」

けどこの質問にも正直に答えたレイだった。

「好きだって答えれば・・・、満足か?」



訊きたかった訳

「そ、そういうことだったんですね。」

正直に答えを答えられ、ユーキまで恥ずかしくなり、一口二口三口とココアを飲んで冷静を保つ。

「ヒナ先輩、あんなにモテるのに彼女をつくらない主義だって聞いて、ボクちょっとだけ偏見に思っちゃってたんです。」

そしてようやく頭の中に繋がったもう一つの答え。

「実際に凄く優しい人だしカッコイイ人だから、モテる理由。同性だけどよく分かります。でもレイ先輩いるから彼女つくらないんですね。」

でもそれはユーキが導き出したユーキの答え。

「答えていただいてありがとうございました。納得できて良かったです。訊かないままでいたらボク、ヒナ先輩をあまり良くないままでいたかもしれないので。・・・あんなに優しくお世話になっておきながら。」

ユーキは知らないから、そう自分で自分なりに導き出すしかなかった。



一人は知って、一人は知らない話

なのに、

「いや、違う。」

「えっ。」

「それは俺がいるからじゃない。」

レイは、その答えを否定した。

「アイツは俺と会った時から。俺と会う前から、すでにそうなってた。」

それはユーキが知らない話。
それはレイが話だけなら知ってる話。

「勝手にしていい話じゃないが。ユーキにヒナを勘違いされたままは、俺が嫌だから言っておく。」

ユーキにも聞かせたのでした。
ヒナのあの話をー・・・。

「アイツは・・・。」



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