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サンフラワーへようこそ

同じアパートに住む大学生たちのお話
完結][大学生][季節柄][コメディ]



EP.8 一夜の度胸試し(4/4)
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受話器の向こうから

「!!」

ユーヤの発言を、どう受け取ったのか。
今度はレイから挑発してきた。

『ユーヤにそんな度胸があるのなら、やってみろ。』

「いいの?止めなくて。オレ、本気だよ。」

助けの手が出せなければ、助けの声も届かない場所にいるのに、そんな強気なこと言ってる場合?

「・・・よかった。許可もらえて。」

二人の通話は、そこで終了。
ヒナの携帯電話をその場に放置させた手はお酒を瓶ごと持ち、再びヒナの上に戻るユーヤ。



一つの想い

「レイが同じこと、オレもヤっていいんだって。普通、止めないかな?ヒナがこんな目に遭ってるのに。」

そしてそのお酒を。
水で割ることなく、そのまま直で飲む。

「あひゃひゃ。これ本当、アルコールきっつ。こんなのあまり薄めずに飲ませちゃってたんだ。」

全てはお酒のせいにして。
全ては酔いのせいにして。

「許されることじゃないのは、はじめから分かってる。だけど言わせてね。」

思いのままに操られ、寝てるヒナに自分の唇を重ねようとした。

「・・・ごめんね、ヒナ。」

その時ー、



月の光

あんなに荒れてた外が、風だけを残し、大降りだった雨が止んでいく。
すると月の光が部屋に差し込み、ユーヤの強行も止まった。

「・・・オレ、悪い子なんだよ。昔も今も、そしてこの瞬間も。」

ヒナの顔に落ちた一滴の滴が反射して、光り輝く。

「ヒナにもレイにもヒドイことして。それを絶好だなんて企んでた悪い子なんだよ。」

いきなりどうしたことだろう。
笑い上戸の彼に何が起きたのか。

「今日だって、それなりに覚悟してたんだよ。・・・なのに。」

気づいた頃には、いっぱいの涙が頬を濡らしていた。

「全然いい子なんかじゃないのに・・・、あんなこと言うから。オレ、躊躇っちゃったじゃん・・・ッ!」

慣れてないお酒をたくさん飲んで、この時ばかりは酔いすぎてしまったようだ。
結局、何も奪えなくて。
結局、そんな度胸がなくて・・・。
幸せを願う彼には何も出来ずに、たくさんたくさん涙で頬を濡らしたのでした。



そして電気が復旧したのは、それから一時間後だった。





再び戻る住人二人

「ただいま戻りました!」

「ただいま。」

あれから数日経って、サンフラワーに戻ってきたユーキとレイ。
どこかで鉢合わせたのか。二人とも一緒に揃ってヒナに出迎えられる。

「レイもユーキもお帰りなさい。二人一緒だったんだ。」

「ん、ちょっとタイミング遅かったら危なかったけどな。ユーキ、どっかの教師に補導されかけてたし。」

「うわあああ!レイ先輩、それ言わない約束ーっ!」

そして、

「ユーキもレイもおっか〜♪大変だったね、ユーキ。中学生に間違えられて。」

「ボク、中学生じゃないです!大学生なのに〜・・・。」

ヒナの隣で一緒にいたユーヤにも。



ユーヤとレイ

「あ。白色の恋人と生なキャラメル、ご希望通り買ってきましたよ。皆さん一緒に食べませんか?」

「じゃあお言葉に甘えてご馳走になろうかな。お茶淹れるね。」

ユーキとヒナが先に101号室へ向かって行ったが、ユーヤとレイは目を合わせたまま。
帰ってきたときから逸らさないでいた。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

けど、先に動いたのはユーヤ。

「・・・安心していいよ。あの日の夜、何もしてないから。」

「・・・・・・。」

「オレもあの夜、すっごく酔っちゃっててさ。ふと我に返ったとき、ビックリしちゃったんだよね。レイに何を言ったか、あんまり覚えてないんだけど。」

「・・・・・・。」

「・・・ごめんなさい。ヒナにもレイにもヒドイことして。」

その間もレイは、ずっとずっと黙ったままでいた。



ユーヤとレイ 2

けど、

「ユーヤ!レイ先輩!どうしたんですか?二人もヒナ先輩の部屋で一緒に食べませんか?」

「うん、食べる―!今行くから待っててー!」

ユーキの響く声に呼ばれて、ユーヤがヒナの部屋に向かおうとした途端。
そのだんまりだった口を、ようやく開かす。

「・・・酔ってて覚えてなかったとしても、俺は忘れねぇから。」

「・・・!」

「ヒナ泣かしたら、俺が黙ってねぇから覚えとけよ。」

そして二人揃ってヒナの部屋へ向かい、ユーキのお土産を四人で食したのでした。

「・・・うん。」



「サンフラワーへようこそ!」の第八話を
お読みいただきましてありがとうございました。


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