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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.10「分かってたことだから」(1/5)
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数日前から大瀬の様子がおかしかったのは分かっていた。
でも及川や大瀬本人に尋ねても『放っとけ』の一点張り。
何でかが、全くもって分からなかった。
けどその原因は、奴の彼女の口から教わってしまう。

「別れたの、私たち。他に好きな人が出来たからって・・・、私が邦臣くんに。」

「別れたって、え!?」

「錦くんこと好きだから。邦臣くんとは、これ以上お付き合い出来ないって。」

告白された彼女の想いと共にー・・・。




翌日。
学校に着いた俺は、自分の教室に入るのを躊躇い、目の前にある扉を開けれずにいた。

『答えは言わなくていいの、錦くん。錦くんが聞いてくれた。私、それだけで嬉しいから。』

彼女はそう言って俺の前から去って行った昨日の放課後。
あんなことがあった後の次の日だ。
どんな顔で大瀬と顔を合わせていいのか、何も答えが出てこない。

(おまけに席は、真後ろだしな・・・。)

すると一緒にいた及川が、

「どうしたの?浬くん。ドア開けてくれないと、僕も教室に入れないんだけど。」

そんな俺に首を傾げて前に立ち、ドアをガラッと開けてしまう。

「え、あ・・・!」

その一瞬、思わず竦んだ体。
心の準備が出来てなかったからドギマギしたけど、教室内に大瀬の姿はなかった。
どうやらまだ学校到着してないようだ。

(・・・よかった。)

大瀬が学校に、まだ来てない。
それだけで少しホッと一息。
だけどそれは時間の問題だから、また直ぐにでも穏やかじゃいられなくなるが、ほんの少しだけでも今の心には有り難かった。

「・・・大瀬くん、来ないね?」

「そうだね。バカだから風邪でも引いたんじゃない?」

しかしその後、大瀬の姿は、予鈴が鳴っても現れない。

(・・・・・・何してんだ、あのバカ。)

おかげで安堵したはずの気持ちが、今度はモヤモヤと。
どちらも理由は同じなのに、ただ奴が来ないというだけで左右させられた。
あと5分。いや、あと3分経ったら本鈴が鳴る。その時、

「ー・・・。」

「!」

ガラッと教室の扉が開いて、ようやく大瀬がご到着。
直ぐに本鈴が鳴ったから、誰かと会話をすることなく、そのまま一直線で自分の席に着く。
遅刻ギリッギリだったくせに、焦った色は顔になく、至って平常と変わらない様子。
俺も俺でやっと来た大瀬を見て、胸をまた撫で下ろしたが、それが始まりだった。

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

今日に限ってやたら背中に刺さる真後ろからの視線。
それはもう、どの授業でも。
だけど俺から大瀬を見ようとすると、彼は何でもなかったように、一瞬で直ぐ逸らす。

(なんなんだよ、いったい・・・。)

昨日のこと、もう大瀬の耳に入っているのだろうか。
俺としてはなるべく穏便に済ませたいところだが、向こうからしたらそういうわけにはいかない・・・か。






「はい、今日の授業はここまで。ここの公式、今度のテストで出ますので、しっかり覚えて下さいね。」

校内中に授業終了のチャイムが鳴り響く。
それと共に今行っていた数学の授業も終わり、これから1時間ほどの昼休みに入る。
すると、

「浬。」

「!」

授業が終わった直後、そのまま後ろから大瀬に呼ばれる俺。

「どうしたの?大瀬くん。」

「2人で話したいことがある。・・・ちょっといいか?」

ずっと視線を浴びせられた午前中。
いつか来るだろうと覚悟していた分、それほど驚きはしなかった。

「・・・分かった。」

だから俺は静かに頷き、彼のあとについて行く。
大瀬の呼び出しタイミングは、前回と一緒。
それで教室を出る前に思い出したのか、

「及川。お前はついて来るな。」

こっそり後をついて行こうとしてた及川に気づき、そう先に忠告。

「・・・!」

バレた及川は、いつもみたいに笑って誤魔化すことなく、ピタリと足を止めた。
けど弁解もなければ文句もなく、何も言葉を発さない。
いかにも何かを言いたそうな顔なのに、そのまま俺らを見送る。
そんな及川も気になって、気づかなかったもう一つの視線。

「・・・・・・・・・。」

まだ教室にいた数学担当の神崎先生にも、この背を見られていたことに。



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