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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.10「分かってたことだから」(2/5)
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そうして大瀬と一緒に、教室から外に出た昼休み。
向かった先は人の目が付きにくい校舎裏。
ここには以前も連れて来られたが、相変わらず静かな場所だった。

「・・・昨日、藍子ちゃんから聞いた。浬に告ったって話。」

「え。」

「オレがお前に言いたいこと、分かるよな?」

「・・・・・・。」

大瀬に呼び出された用も。
これから言われることも。
どちらも察しがつくから、俺はゆっくり頷く。
そこに決着をつけるとしたら、まさに今がその時。

「じゃ、話が早いな。」

グッと強く握り拳を作った大瀬は、向き合うように俺の前に立つ。
そして次の瞬間ー・・・、

「もしオレの彼女を。彼女だった藍子ちゃんと付き合うことになったら。その時は、オレの時以上に彼女を幸せにしてやって下さい。」

その拳を打つけてくることなく、それどころか深々と、俺に頭を下げたのだった。
もちろんそれは予想とは、全然違う展開。

「・・・は?」

何を言ってんだ?コイツ。

「いつかはこうなるって、分かってたことだから、な。絶対に浬だけにはって思ってたんだが、やっぱり敵わなかったな。」

この結末を分かっていたかのように納得して。
素直に敗北を認めるような真似をしやがって。
ずっと自分の彼女絡みのことで敵意を剥き出しにしていた男が、ホント、今さら何を言ってんだ。

「・・・大瀬、くん。話したいことって、それだけ?」

「あ、ああ。・・・要は、付き合うことになるのならオレのことは気にせずに、藍子ちゃんを大事にしろって。それだけ浬に伝えたかっただけだ。」

「そう・・・。」

そんな大瀬を目の前で見て、逆に納得が出来なかった俺。
妙に腹が立って、ここぞとばかりに俺は奴の敵となる。

「で?付き合ってた彼女を、俺に易々と奪われた感想はそれだけ?」

「え?」

「彼女も気の毒だな、こんな男と今まで付き合ってただなんて。」

「・・・浬?お前、何言って?」

「ちょっと優しくしただけで彼女、その気になってさ。何度も何度も手ぇ出すなと言ってきた割には、簡単でびっくりだったよ。」

今までとは違う素振りに、違う声色の俺。
それはいきなりのことで、それを目の前で見た大瀬は拍子を抜かしていた。

「・・・なんだよ、それ。おい!どういうことだよ!!」

けどあっという間に、俺が言ってることを理解。
失ってた怒りの感情を取り戻したのか、顔も口調も険しくなっていく。

「浬・・・、お前。やっぱりそういう奴だったのか!?」

「やっぱりってなんだよ?分かってたことだから、俺を見張ってたんじゃなかったのかよ。」

「いや、だって、お前・・・っ!」

「お前の彼女だったから、ちょっと興味あったけど。別れたって聞いた途端、興醒め。俺と彼女が付き合う?冗談言うなよ。俺に釣り合うわけないだろ、あんな軽そうな女。」

錦 浬という男の印象が、彼の中で変わっていく。
もうそれは信用ガタ落ちレベルどころか、裏切りに近い行為。

「大瀬、今どんな気持ち?こんな野郎に彼女取られて。ムカつくだろ?ムカつくなら殴ってこいよ。ー・・・って言っても、お前じゃ無理か。学園長の孫である俺を殴れる度胸、彼女奪われたお前なんかにあるわけないもんな〜。」

そんな俺を今さら知った大瀬は、顔に悔しさも滲ませる。
奴の性格上、ここまで煽られたら黙っていられないだろう。

「く・・・ッ!」

「ほらほら。かかってこいよ、クソ臣くん。」

だから俺は覚悟した上で、挑発に乗って目掛けてくる大瀬の拳を待った。
あんな弱々しい奴の結末なんて認めない。
それなら嫌われてまで殴られた方が、まだ数倍マシだから。
だけどー・・・。

「ー・・・!」

俺を殴るはずだった奴の拳は、確かに俺に当たった。
当たったけど、胸元にトンっと軽く触れただけ。
そこでピタッと止まってしまった。

「なんだよ、この手。これで。こんなので俺を殴ったつもりか?」

「・・・そうだな。前までのオレなら、きっと。このまま浬を殴っただろうな。」

「は?なら殴れよ。殴ればいいだろ。ちゃんと殴ってこいよ!」

「それは出来ねぇ。出来ねぇよ、今のオレには。」

そしてハッキリと俺を見て、それを言う。

「・・・今の浬は、オレにとっては仲間だから。ダチだから。ダチの浬を一方的に殴るなんて真似、今のオレには出来ねぇよ。」

「なっ!」

「浬から見たらオレは確かにバカだ。バカだけど、そこまでバカじゃない。あんまオレを見くびんなよ。」

殴らせようとしていた俺の企みが、大瀬に筒抜けだったようだ。
あんなに敵意を毎度毎度、抱いていたくせに。
バカのくせに、一丁前にそんなこと言いやがって・・・。
それが余計にムカついた俺は、

「!!」

バチンッと自分の拳を、奴の頬に打つ。

「浬・・・、これは何の真似だ?」

「これで一方的にじゃ、なくなっただろ?」

向こうが殴ってこないのなら、それならこっちから。
そう言わんばかりに。

「・・・バカだな、お前。バカじゃねぇけど、オレ並みにバカだったんだな。」

「いいから。つべこべ言ってないで、さっさとこいよ。」

「いいぜ。そんなに殴られたいなら、殴ってやるよ。その代わり手加減しねえから、あとで泣きをみたって後悔するなよ。」

そんな俺を見て、フッと笑う大瀬。
あとは俺の望み通りに。
向かってくる大瀬の拳が俺を打ち、俺も自分の拳で返して、殴り合う。
その最後は、なんか青春してるみたいな感じになって。



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