だけど福原は、そんなこと構いなし。
「そうだね。事実だね。ここの噂も浬との関係も、事実だから否定出来ないね。しちゃいけないね。」
「その一部は違うだろ。俺はアンタと付き合ってないし、そのせいで凄く迷惑してんだ、こっちは!」
「事実だよー、事実。浬と付き合えたらいいなって思ってるのは、本当のことだよ。」
構いなしに、朝と一緒のことを告げて来た。
「言ったでしょ?ボク、浬のことが好きだって。」
「な・・・っ。」
「浬は気づいてすらいないだろうけど、これでもボクはずっと。浬が入学してきた頃から、浬を見ていたんだよ。どうしたら浬と知り合えるかなって、色々と考えて。生徒会に入ったのも、ほぼ浬が理由だよ。学園長のお孫さんだから奉仕活動していたら会えるのかなって思って。で、いざフタを開けたら当の本人、興味すらなくて・・・。」
ずっと俺だけを見ていた、と。 その話を聞く限りでは、彼が抱いているのは純粋な想い。 ・・・だが、そんな言葉に騙されてはいけない。
「そんな台詞、よく語れますね?人をレイ◯しておきながら。」
「またそれ言う・・・。」
「アンタが好きな事実だからな。」
どんなに純粋を語っても、それはもう手遅れ。 どんなに純粋を語っても、彼は既にそれを歪かせたのだ。 一度、歪かせたモノを純粋に返そうたって、そんな簡単に出来たら虫のいい話。
「事実だから否定しないけど、でもそれは仕方なかったことだから。」
「仕方ない!?は!?アンタ、本気でそれ言ってんのか!?」
「そうでもしないと浬の気持ち、動かせられないって思って。」
でも彼に語るその言葉に偽りはなかった。
「だって浬、神崎先生のこと。未だに好きでしょ?」
「!?」
「ここ最近は距離を置いていて、神崎先生と何があったのか流石に分からないけど。彼を見る目だけは変わらないままなんだから。」
それはずっと見てきたからこそ。 真っ直ぐ見てくるその目で、俺の奥に眠らせたはずの気持ちを、見抜かれてしまったのだろうか。 あんな形で「さよなら」されたのに、まだ心が神崎先生のことを忘れられずにいることのを。
「俺は・・・。神崎先生のことは、もう・・・。」
「無理に隠さなくたっていいよ。そっちのが本当は辛いでしょ?」
「・・・・・・っ。」
俺の好きは、成就することなんてないのは初めから分かってたこと。 あの人を脅して縛って、傷付けることしか出来なかった。 ヒドイことばかりしか出来なかった。 それを今更後悔したって、仕方ないことなのに・・・。
「浬は、愛する苦しみを知っちゃったわけ、か。」
そう言いながら福原は、そんな俺を抱き締めてきた。
「慰めならやめてください。俺に慰めなど必要ありません。」
「え?じゃあ神崎先生にフラれてー・・・お疲れ様?どんまい!でいい?」
「同情も要りません・・・っ。」
「えー?ダメ?傷心中の浬に付け込もうとしてたんだけど、ボク。」
「それは思ってても言うな。」
彼の言動は、良い意味でも悪い意味でも、素直だ。 偽ってばかりの俺とは違う。
「言っとくけど、ボクが浬に付け込むのは、慰めでも同情でもないからね。」
「だったら何だって言うんだ?」
「口説きたいからだよ、浬を。何度でも言ったげるよ?ボクは浬が好きだって。」
「・・・・・・っ!」
「浬は愛する苦しみを知ったわけなんだから、次は愛される幸せを知るべきだよ。」
そんな俺を許すように。受け止めてくれるかのように。 その腕は温かくて優しくて、俺には勿体ないぐらいだった。
「神崎先生とはもう終わったんでしょ?ならボクと付き合ってよ。今すぐに答えくれとは言わないからさ。」
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