それから、やっとの思いで夕方を迎えた放課後。
「浬くんは、このあと今日も自習室?」
「うん・・・。あそこは私語厳禁だから、この状況でも勉強ぐらいは静かにやらせてもらいたいから。」
「そっか。勉強頑張ってね、浬くん。また夜にでも連絡入れるねー。」
教室で及川と別れた後、授業の遅れを取り戻すため、俺は1人で自習室へと向かう。 しかしその途中、
「福原会長ー。」
「なにー?」
廊下で福原が、女子生徒たちと何かを話している姿を見かける。 どうやらこっちにも俺と同じように真相を求めに来たていたようだ。
「会長って錦くんと付き合ってるの?」
が、奴はこともあろうか。
「んー、だといいね。」
とか。
「そうなれたらいいんだけどねー。」
とか。 そういう答えで返すから、女子生徒たちもキャーキャー喜んで、そこから新たな波を発せさせていた。 どおりで否定してもしても止まないはず・・・。 これには流石に俺も表情に真っ黒な影が出来るほど不機嫌に。 だからそんな彼らを黙って見過ごせず、元凶の元へ向かう。
「福原さん、ちょっと・・・。」
「わぁ。浬だー、浬。ここで会うなんて偶然、いや運命だねー。」
すると福原も俺に気づくと喜びながら近づいてきて、グイッと肩に腕を回してくる。 そして奴と並ばされると、噂の2人のツーショットを前にして、さらに盛り上がる女子生徒たち。・・・に、俺の怒りもそろそろ限界。拳の1つや2つ、元凶にお見舞いしようとしたが、
「アンタいい加減ー・・・。「コラコラ、浬。みんなが見てる前だよー。」
ボソッと耳元で、いたいとこをつかれて無念。
「優等生である浬が、まさかみんなが見てる前で誰かを殴るなんて真似、しないよね?」
「・・・・・・・・・。」
それどころか俺も俺で火に油を注いだ模様。 回された肩は掴まれたまま。
「それじゃあボク、頑張って浬を口説いてくるから応援よろしくねーっ!」
優等生の名を人質にされ抵抗が無に、この場からグイグイどこかへと連れて行かれてしまう。 キャーキャー見送られる女子の目が届かなくなる場所まで。
しかしそうなってくると辿り着く場所は、ただひとつ。 他の役員も出払ってる頃だからっと、生徒会室へ。 福原と完全2人きりになった途端、掴まれてる腕をブンッと振り解いてまで、俺は奴から離れた。
「いい加減にしろよアンタ!」
「わー!2人になった途端、すっごいフラレよう。勢いすぎてボク悲しいよー。」
「黙れ。」
「優等生の仮面を被ってない浬は、お口がホントぶっきらぼうだね。そういうところ・・・、ボクのドツボだよ。」
「いいから黙れ。ちょっとは黙ってくれって、頼むから。」
生徒会室は、ただでさえロクでもない噂が今も現在進行形で流れているんだ。 噂の2人と噂の場所が重なり、それを第3者なんかに見られていたら、それこそ油に火どころかガソリンに着火させる騒ぎになる。 それに昨日の今日で、ここにはもう訪れたくなかった場所。
「そんなにボクを黙らせたいのなら、浬の口でボクの口にチューして塞ぐといいよー。」
「誰がそんな真似するか。」
「えー、昨日したじゃない?ボクとここで、それ以上のことまで。」
「黙れ。レイ◯魔。」
「うわ・・・、ヒドイ言われよう!」
「事実だろうが。」
だから俺の機嫌も余計に悪くなる一方。
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