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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.9「次は愛される幸せを知るべきだよ」(1/4)
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翌日。
いつもの時間で家を出て、最寄のバス停からバスに乗り、学校を目指す。
今日も車内は主に通勤通学する人がいて大変混雑。
つり革を掴めるだけでもありがたい話。
だけどその時、ガタンッと揺れたバス。
その揺れで俺の腰がビクついて、よろけてしまう身体。

「!」

するとそんな俺を支えるように、俺の腰に後ろから手を回してきた男。

「危ないな〜。浬、大丈夫?」

「・・・・・・・・・。」

振り向くとやっぱり生徒会長の福原がいて、また人の背後をとってニコニコとした顔でご登場。

「そんなに腰しんどい?って、それもそうか。昨日の浬、すごかったもんね。」

「・・・・・・・・・。」

「ああ。それを思い出すだけで、ボクの股間がエクセレン・・・ごふっ「黙れ。」

しかし正反対な機嫌の俺は、挨拶代わりで奴の腹に肘打ちを。
語るそれを途切らせると共に、腰にいた手を退かす。

「痛たたた・・・。何も本気で肘入れなくても。」

「知るか。あと、俺のこと気安く名で呼ぶな。」

「あらららら?今日は随分とぶっきらぼうなお口だね。『いい子の錦くん』は、どこいっちゃったのかな?」

そしてこんな奴に、年上だろうが生徒会だろうが何だろうが、礼儀なんていらない。
昨日の今日で調子に乗って、俺を名で呼び捨てるのだって気に入らない。
だから優等生としての仮面を被ることなく、本来の俺を曝け出して冷たい目で見る。

「こっちが素。ー・・・なんて言ったらどうする?」

『いい子の錦くん』とは違う口調、違う声色、違う雰囲気でいるから、福原も最初は呆気に取られていたが直ぐに慣れた模様。
そんな俺を見てコクンと頷き、

「そんなの俄然、興味出るに決まってるじゃない。」

「え。」

「その強情なプライドをへし折ったら、浬こそどうなるんだろうね?」

「・・・・・・・・・。」

「泣くのかな?壊れるのかな?想像しただけでゾクゾクしてきたよ、ボク。」

引くことを覚えず、ウェルカムで大歓迎。
性癖の血まで到達させてしまい、俺が狙った効果とは真逆な結果となった。

「・・・ど変態野郎。」

「素直って言ってくれない?ボクは訊かれたことを、ありのままな気持ちで答えたまでだから。」






それから走るバスは、目的地である学校最寄りの駅で俺らを下ろしてくれた。
するとそこには及川が待ち伏せていて、2人揃って出てきた俺と福原を見て意外な表情を見せる。

「おはよー、浬く・・・。って、福原会長とも一緒だったんだ?」

「どーも♪浬の恋人です。」

「うぇ!?福原会長と、もうそこまで仲良しになったの?昨日の今日で!?凄いね、浬くん。」

「何も凄くないよ春希くん。一方的につけられて勝手に言ってるだけだから。」

そんな及川の話を聞いて、逃さなかった福原。

「え?なになに?昨日の今日ってどういうこと?」

すっごい興味津々に食いつく。
及川も及川だ。
また頼んでもないことを続けて言い、余計なお世話を働かす。

「生徒会には今まで興味なかったって言ってた浬くんが、福原会長のことを僕・・・。色んな人に聞き回っていて〜。」

「へぇ、そうだったんだ。・・・へぇ〜、それで昨日。なるほどね〜。」

けどそれをポジティブにプラスで捉えた福原は、昨日のことはさて置かせて、さらに調子を乗せてきた。

「でもそれは嬉しい話だな〜。浬なりに、ボクのこと気興味持ってくれてたってことでしょ?」

「福原会長、本当に嬉しそうですね。」

だから及川以外にも同じ学校の生徒が周りにいるのに構わずして、福原は俺に告げてくる。

「うんっ。だってボク、浬のこと大好きだし。」

「「・・・・・・・・・。」」

周囲にいるたくさんの人を証人にさせてまで。
おかげで時が止まった一瞬。
そしてあっという間に騒つき始めた周り。

「おぉっと、いけない。ボク、生徒会室に行かないといけない用が朝からあったんだった。じゃあね。」

その噂となる種が撒いた当人は、スタコラサッサーと。
言うだけ言って、1人先に去って行った。

「福原会長って、ストレートだね・・・。」

及川もまさかそんな流れになるとは思わず、ポカンとした顔をする。
だけど自分も証人の1人となった対象者。
俺の回答が気になるのか、こっちをチラリと見てきた。

「で?どうするの?浬くん。」

「どうもこうも100%ごめんなさい。お断り、かな。福原さん、軽いジョークのつもりで言ってたのかもしれないし。」

「えー、そうなの?割と浬くんと福原会長お似合いだと思ったのにー。」

「春希くん、冗談でもそれ言わないで。俺、あの人と会ってからロクな目にしか遭ってないから・・・。」

「そ、そうなんだ・・・。浬くんも大変だね。」

しかし俺は、そんなことよりも。ここから広がっていく噂の波がどこまでいくのか気がかりで、それどころではない。
奴からの告白など、どうでもいいことには変わりなく、祖父の耳にまで入らないことを祈った。
人の噂も75日。しばらくすれば忘れていくものだ。
けれどその初日となった今日は、教室内でもガヤガヤと話題の種が既に花を咲かせていた。

「錦くんって福原会長と付き合ってるの?」

その真相を今か今かと知りたい女子を始めとした生徒が、次々と俺の元へやってきて聞き出そうとする。
中には『錦 浬に彼女できない理由は、そういうことだから』と認識する男も現れ、しっちゃかめっちゃ状態に。

「なるほど。既成事実って、こういう風に作られていくんだね。2人のおかげで、1つ勉強になったよ。」

及川もフォローに回り手伝ってくれたけれど、キリがない。
『違う』を言い続けるだけでも一苦労。

「浬×春希は、もうダメ?需要ない?旬過ぎちゃった?」

「春希くん、それも違うでしょ。」

75日もかかる人の噂。
それは2ヶ月以上の日数で、その長さに改めて絶句を覚えた。
言い出しっぺは本当、なんてことしてくれたのでしょう。


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