だるい。 体が重い。 悪寒が走り、寒気が止まらない。
「錦くんおはよー。」
「おはよー、錦くん。」
「え、あぁ、おはよう。」
(どうしてだろう?)
疑問に思いながら学校に登校。 寝ぼけも覚めたというのに、調子を上げられないまま教室へと向かう。 それに、なんでだろう・・・。
「錦くんきたぁっ!」
「錦くん、おはよー。」
「おはよー、錦くん。」
「おはようございます、錦くん。」
「お、おはよう・・・。」
なんでだろう。 同じクラスメイトの女子生徒が、いつにもましてなんか怖い・・・。 キャーキャー黄色い声を上げて群がられるのは毎度のことなんだけれど。 今日はなんでだろう。 いつもにまして狙われてる感がハンパない。
(今日、何かあったっけ?)
「おはよーっ!浬くーーーーんっっっ!!」
「!」
そんな中、群がる女子の間を割って入ってきた及川。 今教室に着いたばかりか。 カバンを背負ったまま、こっちに飛びついてこようとする。
(・・・・・・。)
そんな栗毛野郎の動きを読み、冷静に対応を。 ササッと華麗に躱したものだから、そのままの勢いで及川は壁にドーンッと激突して撃沈。
「な、なんで避けるの・・・、浬くん・・・。」
「1メートル以上近づかないで下さい。」
女子生徒に「大丈夫?」と心配される及川だったが。 勢いよくぶつかった割には、意外と平気だったらしく。 直ぐに復活して立ち直ってしまう。
「浅かったか。・・・チッ。」
「え?浬くん今、何て言った?浬くんらしくない言葉と舌打ちが聞こえたような???」
「えー。錦くんがそんなこと言うはずないよ。」
「そうだよ及川くん。なんでもないよ。なんでもないから1メートル以上近づかないで下さい。」
近づくなと言っても近寄ってくる栗毛野郎。 群がってる女子生徒たちも、ここに及川が入ってくるのを、すっかり公認しているようだ。 二人の男子を囲んで、きゃあきゃあと話を盛り上げる。
「そういえば一限目のロングホームルーム席替えだったね。」
「席替え?」
「あれ?浬くん覚えてないの?昨日、担任がそう言ってたじゃん。」
「そう、だっけ?」
(席替え・・・か。)
「女の子たちも張り切ってるよね。いろんなおまじないのグッツ付けてるし。誰目当てなのか分からないけれど効果出るといいよね。」
『御呪い』と書いて『おまじない』。 席替えと聞いて周りの女子生徒をよく見ると、普段あまり身に付けてこない物を身に付けている子ばかり。 それを見て朝からいつも以上に狙われている理由を、なんとなくで把握。 おまじないの効果が出ているかどうかは分からないけれど、一つ一つの小さな勢力が一カ所に集まり、とても大きな力と化していたら・・・。 朝から止まらない悪寒も、それが原因になっているのかもしれない。
(だんだん頭も痛くなってきた・・・。)
「よし。僕も浬くんと席が近くなれるよう、おまじないしておこ♪」
「や、やめて。これ以上はやめて・・・。」
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