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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.5「私についてきて下さいね」(5/6)
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「おっはよ〜〜〜!浬く〜〜〜〜〜ぅん!!!」

「!?!?!?」

人の腰にダイレクトタックルを、勢いよく噛ましてきた栗毛野郎。
ドーンッときたものだから俺も耐えられなくて、そのままドーンッと下駄箱に激突。
頭と腰。
どちらの痛みのが強いのだろう。
分からないまま俺は撃沈し、その場で崩れてしまう。

「ごめんね、ごめんね浬くん!昨日は本当にごめんね〜!」

「・・・。」

「あれから僕ものすごく反省したんだ。すぐにでもメッセージ送って謝ろうって思ったんだけど、やっぱり直接謝りたくて。」

「・・・・・・。」

タックルしてきた及川は、そのまま人の背に乗っかり。
ギュ〜〜〜ッと人の体に抱きついて必死に謝ってくる。

(こ、腰が!腰が・・・っ!!)

あまりの痛さに抵抗できず。
及川をそのままにさせたまま静かな怒りを心に宿す。
はたから見てる大瀬も憐んでいるというか、同情しているのか。
そんなような表情でこっちを見ていて、小さな声で「気の毒に」と呟く。

「ごめんね。本当にごめんね。」

「あ、いや、うん。もう、気に、して、ない、から。」

(腰を締めるの止めて・・・。腰に手を回すの止めめめめめめ。)

「本当!?許してくれる?」

「許す!許すも何も・・・ッ・・・、あれは俺だって悪かったし。」

抱きついてくる及川を剥がしつつ、ゆっくりと体を起こす。
するとー・・。

「本当!?よかったぁ。じゃあ昨日悪いことしちゃったお詫び。」

「へっ!?」

「え・・・。」

大瀬以外にも周りには女子生徒も男子生徒もいるというのに。
本人以外はそれすら気にしていない。
及川は人の隙をついてお詫びの印に、俺の唇に自分の唇を重ねてきたのだった。

「・・・!?」

何から何までの勢いに、頭が混乱してついていけない俺。

「ん゛ん゛ッ!?」

塞がられた口で言葉になってない悲鳴を上げる。

(し・・・、舌が・・・っ!)

こっちが腰が痛くて抵抗を強く出来ないことをいいことに、エスカレートしていく及川。
無理矢理、唇から舌を絡ませては吸ってきて、湿った音をワザと立たせている。

「んぐ・・・っ・・・ん。」

それを一番近くで見ていた大瀬。
彼の頭にも混乱が起きているのか。
止めに入ることもせず、口で繋がる二人の前で呆然としていた。

「・・・ぁ。」

「へへっ。舌、入れちゃった。」

やっと及川が俺の唇から離れると、まだ二人を繋いでいた透明な糸が瞬く間に落ちて床を汚す。
こんなことを周りにも見られて、顔が赤く染まる俺。
奪われた口を手の甲でおさえ、この気を静めようとした。

「どう?浬くん。これで少しは僕の本気、分かってくれた?」

「なッ!?」

「な〜んてね。冗談、冗談。キスなんて一つや二つ、おじいちゃんの国では挨拶としてもやるんだよ。もちろん男同士でも。だから本気にしちゃイ・ヤ。逆に僕が困っちゃうよ。」

「・・・っ。」

ああ。
人を殺めたくなる気持ちって、こういうときでも生まれるんだな。
●ろしたい。
この栗毛マジで●ろしたい・・・。

「だ、大丈夫か、浬。」

「あ、うん、なんとか。」

及川が離れ解放された俺は腰を庇いながら、ゆっくりと立ち上がる。
そしてパンパンと砂埃を払い、次に口を拭う。

「及川、くん。」

「ん?なぁに?ひょっとして僕にときめいちゃった?」

調子こいてる及川に、すかさず俺は一言。

「1メートルぐらいでいいので、もう俺に近づかないでもらっていいですか。」

「ヘッ!?あれ?仲直りしたはずが、なんかひどくなってる!?」

素の俺が言ったのか。
仮面の俺が言ったのか。
それは自身でさえ分からない。
とにかく、もう及川には近づきたくない。近寄ってほしくない。
そんな気持ちで心が埋め尽くされる。

「わーんっ。そんなこと言わないでよ〜。僕と浬くんの仲じゃない。」

「1メートル以上、近づかないで下さい。」

ピーピー泣き喚いていたけれど、もう知らない。
心は冷たく、そして鬼に。
及川を突き放して、俺は一人先に教室へ向かおうとした。

「ん?」

「どうかしたの?大瀬くん。」

そのとき何かに気づいた大瀬。
けれど彼の視線の先には、誰もいない。
気になった俺は首を傾げている大瀬に尋ねてみる。

「あ、いや。さっきそこに誰かがー・・。」

「え。」

「・・・んなわけないっか。いや、オレの気のせいだ。気にしないでくれ。」

大瀬はいったい何を見たのだろう。
アッサリと自己解決されてしまい、大瀬も先に教室へと向かってしまう。
あんな風に気に掛かるそぶりを見せられたら、気にならないものも気になってくるじゃないか。

(本当になんだったんだろう。)

結局分からず仕舞いのまま、俺も(及川はもちろん置いてきぼりにして)教室へと向かったのだった。



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