それから神崎先生は俺を乗せて車を走らせる。 どこへ向かっているのか、全くもって分からない。 やたら曲がり道に入られ、通った経路をきちんと覚えることができなかった。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
二人とも何も喋らないから車内はとてもとても静かで。 流れているラジオのBGMが、この場を必死に和ませようとしているみたいだった。
神崎先生の車は20分弱で、どこかのマンションに辿り着く。 エレベーターつ使って上に上がり、一つの部屋に招かれる。 真っ暗な室内。 後ろで鍵を掛けられた音。 そのまま奥の部屋まで連れて行かれる。 まだ何も見えてない状態なのに、やわらかいマットのような何かの上で、少し乱暴に背中押され倒された。
(え・・・・・・?)
自分の上に跨る神崎先生の姿。 シュルシュルとネクタイを緩めて外す音。 スーツの上着を脱ぐ仕種。 シルエットの影と音だけで、そう勘付かさせる。
「んん・・・っ!」
そしてされるがままに、なすがまま。 乱暴に塞がられた口。 無理矢理入ってきた舌が自分の舌と絡み合う。 頭が困惑する中、途切れる吐息。 けれどろくな抵抗をすることなく。 どんなに自分を乱暴に扱われても、この身をもって全てを捧げて受け入れた。
「神崎・・・、先生・・・・・・ッ!!」
だって今俺の上にいるのは神崎先生。 それさえ分かっていれば、怖がる必要なんて何もない。 深く。 激しく。 熱く燃え上がる身体。 狂わされた理性。 そこに優しさなんて要らない。 神崎先生の男の部分を、この身に思い知らせてほしい。 そして、どうかこの一瞬だけでも。
この瞬間だけでも、俺を愛してー・・。
そう頭の片隅で想いながら、意識が途切れさせていった。
あれから何時間の時間が経ったのだろう。 目を覚まし視界に映ったのは見慣れない真っ白な天井。
(ここ、どこ?)
俺は誰かのベッドで、毛布に包まって眠っていたようだ。 真っ暗だった部屋に電気が付いていて明るくなっている。
(・・・!?)
そして今の自分の格好を見て、この部屋でいったい何をしていたのかを一部始終、脳裏に蘇る。 そう文字通り、全てを思い出したのだ。
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