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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.4「本当は分かってるんだよね」(6/6)
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折れてしまった傘は、もう使い物にならなかった。
壊れた傘を拾った俺は、そのまま雨に打たれながら帰り道を歩く。

(これじゃあバスに乗れそうにない・・・な。)

『ねぇ、浬くん。キミ、本当は分かってるんだよね。』

全てを見透かされたかのように、及川に言われたあの言葉。

『そんなことしても、どうにもならないこと。本当は分かってるんだよね。』

言われた言葉を頭の中で何度も何度も。
何度でも繰り返す。

本当は、ちゃんと分かっていたから。

分かってたよ。
始めからそんなこと。
分かってたよ。
好きになったあの日から。
分かっていたんだよ。
愛しいあの人を脅しなんかで縛っても、どうにもならないことを。
そんなことしても、俺が一番欲しがっているモノは手に入れられない。
始めから手に入れられないってことぐらい、ちゃんと分かっていたんだ・・・。

「・・・ッ・・・。」

けれど、それが欲しくて。
欲しがっていた自分を止められなかった。
どうしても欲しかったんだ。
好きだと気付いた時から。
好きだと言葉を口にしたあの時から。
もうこの気持ちに、誤魔化はしかきかない。
嘘なんて付けられない。
あの人以外、愛すことが出来ない・・・と。
よりにもよって、あの人を、神崎先生を。
ただ一人の人へと選んでしまったことを。

「浬くん!?」

「!」

いつものバス停でバスにも乗らず、歩いて帰っていると、後方から聞き覚えのある声が俺を呼び止める。
振り向くとそこには一台の車が停まっていて、中から神崎先生が現れた。
そして、こんな時にまで・・・。

「何しているんですか!?こんな雨の中、傘もささないで!」

「・・・神崎、先生?」

神崎先生は、やっぱり優しい人・・・でした。
こんな時にまで雨で濡れてる俺を気遣ってくれる。
持っていた一本しかない傘を俺にさし、自分のことなんて全然構ってなくてスーツを雨で汚していく。
そんな優しい神崎先生が何よりも酷く、この心に痛みの種を植え付けられるのだ。

「こんなに濡れて、風邪でも引いたらっ。」

その味は、とてもとても苦かった。

「・・・・・・。」

苦くて。
苦しくて。
それを飲みほせる術など、俺にはないと思い知らされる。

「浬・・・くん?」

これでは欲しいモノが手に入れられなくて、駄々をこねているだけの子供・・・。
だけどそれが、

「神崎・・・せんせ・・・っ・・・。」

ただ一人を。神崎先生を愛した、俺の本当の素顔だったのかもしれない。




つづく





仮面優等生の歪いた愛欲 第4話を
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