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仮面優等生の歪いた愛欲

この瞬間だけでも、俺を愛して・・・。
完結][既婚者教師×仮面優等生(主人公)][略奪愛]


EP.4「本当は分かってるんだよね」(5/6)
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「待って!浬くん!!」

「・・・ッ・・・。」

教室から飛び出した俺。
呼び止める及川を振り切ってまで、どこかへと走り出す。

「どわっ!?」

「!」

前をろくに見ないで廊下を曲がった途端。
そこにはジャージ姿の大瀬がいて、ドンッと軽くぶつかる。

「あー、ビックリした。なんだ錦か。どうし。」

「・・・ごめん。」

「は?え?あ?錦!?」

けれどそんな大瀬にも一言謝り、俺はそのまま走ってどこかに行ってしまった。

「な、なんだ???」

いったい何があったのか。
一瞬だけ見られた俺の表情。
けれどそれだけでは訳が分からず、大瀬はポリポリ頭を掻きながら自分の教室へと向かう。
するとそこには、まだ及川が残っていて、

「あーあ、逃がしちゃった。」

「お前の仕業か。」

彼の残念そうな顔に、大瀬は俺と及川の間で何かがあったのだと、なんとなくで把握した。

「あれ?大瀬いたの?もしかしてずっと教室の外から盗み聞きしてたとか?」

「アホ!部活に行ってたに決まってんだろ。忘れ物したから取りに来ただけだ。そしたらそこで錦とぶつかりかけて・・・。」

「なんだぁ。聞いてたわけじゃないんだ。」

俺がいなくなった教室で話し合う二人。
及川は俺の席の机に座り、そのまま自分のスマホをいじりだす。

「錦と何かあったのか?」

「別に。ご期待に添えられるほどのことは、何もなかったよ。」

そんな及川の様子が気にかかる大瀬。
彼の話を聞きながら、詳しい事情を聞こうとした。

「僕ね、ずっと思ってたんだ。」

「え?」

「叩いてもホコリが出ない人なんて、現実でいるわけないって。だからね少し得た情報で浬くんに、ちょっとちょっかい出してみたんだ。なんとなく前から自分と同じ匂いを感じてたから。」

「同じ匂い?」

「蛇が出るかな〜って思ったんだけど、何も出なかったよ。・・・やっぱり僕と同じだったんだね浬くん。」

けれど及川の口から出る言葉は、遠回しのことばかり。
結局『何かがあった』こと以外は分からない。
だから、もう少しだけ詳しく訊こうとしたのだが、

「どういうことだ???」

「・・・っ、お前は幸せでよかったなって言ってるだけだよ。」

キッと強く睨まれてしまう。
これ以上、及川は話すつもりはないようだ。

「最近やたら錦に懐いてたから、何かしら企んでいたのは見てて分かったけどー・・、ほどほどにしろよ?」

「分かってるよ〜。あとでちゃんと謝るし。」

けれどそれ以外に気になっていたことを一つ。
大瀬は部活に戻る前に、それを及川に尋ねてみた。

「ところで及川って、誰かに教わるほど数学苦手だったか?」

「ん〜。」

すると及川は自分のスマホをいじるのやめて。
大瀬を見てニッコリとした笑顔で、こう答えたのだった。

「浬くんには内緒だよ。」








『ねぇ、浬くん。』

『キミ、本当は分かってるんだよね。』

教室から飛び出した俺は、そのまま学校から下校をしていた。
今日は雨が降ると分かっていたから予め傘を持ってきており、強く降る雨でもなんとか帰れそう。
けれど・・・。

「あ。」

突然吹かれた強い風に傘を持って行かれてしまう。
手から離れた傘。
それがないと雨に濡れてしまうのに・・・。
俺は取り返すことをせず、ただ呆然と見送る。
飛んで行ってしまった傘は、そのまま地面に強く叩き付けられてしまった。



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